第2話 その名はガンバー! ―B―

 目の前に聳えるガンバーに、俺は興奮の色を隠せないでいた。

赤いボディが輝き、その雄々しさをさらに引き立てている。


「す、すげえ!!

 これが……ガンバー……!!」


「そうだ。

 整備班が頑張ってくれたおかげで、先の戦闘によるダメージは大方直っている。

 だが、肝心なパイロット候補が見つからなくてな」


 ガンバーのパイロットだったゲンキは、グータランスとの戦いで重症を負った。

もうガンバーに乗り込み戦うことはできないという。

しかし、Lazyの攻撃が終わったわけではないのだ。

またいずれ、異生命体が現れる。

戦うための力があっても、それを操る人間がいなければ敵は倒せない。


 そう思ったとき、突如としてアラームが鳴り響いた。

赤色のランプが忙しなく光り、警告する。


「このアラーム……!

 まさか、Lazyが!?」


『各隊員に連絡。

 都立活力学院付近に、不定形異生命体が出現。

 コードネームは前回と同一種であるグータランス。

 第一種戦闘配置』


 無機質なアナウンスとともに、整備班のひとたちが動き出す。

ガンバー自体は出撃できる状態にあるが、このままでは出撃できない。


「ハカセ!

 どうするんですか……!?」


「くっ……

 ゲンキくんが重症でなければ……!!」


「オレなら……大丈夫だッ!」


 声に驚き振り返ると、そこにはゲンキの姿がった。

松葉杖をつき、怪我もまだ治りきっていない。

立っているのがやっとという様子だ。


「ゲ、ゲンキくん!?

 駄目だ! 今の君にガンバーの操縦は負担が大きすぎる!」


「でもハカセ!!

 オレが戦わなきゃ、誰が戦うんですか!?

 誰がガンバーを動かすんですか!?」


 叫び、こちらにやってくるゲンキ。

その瞳の闘志は消えておらず、炎は猛きほどに燃えている。


「こんな怪我、どうってことない……

 今この瞬間にも、傷つき倒れている人がいるんだ……!

 だからオレはここで諦めるわけにはいかないッ!」


「落ち着くんだゲンキくん!

 今ここで君が無理をして戦えば、君は死んでしまうかもしれない。

 そうしたら、一体誰がLazyを止められる?

 今は……今だけは、耐えてくれ!」


 実際、今のゲンキは戦える状態じゃない。

しかしガンバーを動かす人間がいないのも事実。

一体どうすればいい……?

答えはすでに見えている。

俺にその資格があるなら、きっとそういうことなんだ。


「俺が……俺が乗ります」


「!?

 き、君……今なんと!?」


「俺がゲンキさんの代わりにガンバーに乗ります。

 そして、敵を倒します!」


「冗談では……ないようだね」


 俺はハカセを見つめ、ゆっくりと頷く。

そして次に、ゲンキを見る。

俺の言葉に驚いた様子のゲンキだったが、やがて笑い、俺に親指を立てた。


「なんでだろうな……

 お前なら、オレの代わりにガンバーを乗りこなせるような気がするぜ……

 名前はなんていうんだ?」


「俺の名前は、頑張ロウです。

 絶対に勝ちます……!!」


「そうか……ならばロウッ!

 決して心の炎を消すんじゃないぞ。

 そうすれば、ガンバーはきっと答えてくれる」


 ゲンキの言葉を聞いて、再びガンバーを見る。

その碧の瞳は何を見ているのか。

きっとすぐそばにある、勝利だ。

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