第2話 その名はガンバー! ―A―

 目を覚ますと、見知らぬ天井が俺の視界を埋めた。

白い、とにかく白い。

なんだ……ここは病院か?


 辺りを見回すと、今いる場所がとても簡素な作りだということがわかる。

枕の横にナースコールスイッチがあるので、ひとまずそれを押してみた。

しばらくすると、白いナース服を来た看護師と、医者風の男がやってくる。

医者風の男は、俺を見るとゆっくりと口を開いた。


「やあ、目を覚ましたか。

 君はガンバーのコクピット近くで気絶していたんだよ

 どうだ、具合の方は」


「ええっと、大丈夫です。

 それより、あのロボット……ガンバーのパイロットはどうなったんですか?」


「……ゲンキくんは重症だ。

 腹部と背中に大きな傷、そして左脚の骨折。

 ガンバーに乗って戦うことは無理だろう……」


「そ、そんな……」


 俺がもしも相手の動きを見極め、逃げていたらこんなことにはならなかったかもしれない。

でも、無理だ。

あの状況で機敏に動けるほど、俺は場慣れした人間ではない。


「気に病むことはない。

 異生命体に襲われてしまえば、誰でもそうなるさ」


「異生命体……?

 街を襲ったのは、そいつなんですか?」


「そうだ。

 世界征服を企むLazyの刺客。

 奴らは人々から活力を奪い、世界を支配する気だ」


「世界から……活力を?」


 世界征服を企むなんて、まるでテレビの中の話のようだ。

でも実際、俺はそれを見た。

Lazyの不気味なアナウンスと、現れた異生命体。

そして……ガンバー。


「最初に異生命体が現れたのは今から46年前。

 その時は政府の手で秘密裏に処理されたが、今回はそうもいかなかった。

 我々は来るべき戦いのために防衛組織『VITAL』を設立し、異生命体を退ける人型兵器『ガンバー』を製造したのだよ」


「防衛組織って……

 じゃあ、まさかここは!?」


 医者風の男は頷き、答えを放った。

言うまでもなく、ここは――


「そう、ここはVITALの日本支部さ。

 私はガンバーの設計と異生命体の研究をしている瀬賀ヒクイだ。

 ここのみんなからはハカセと呼ばれているがね」


「どうして、どうして俺にこのことを?」


「君は戦いを全て見ていた。

 それに、あの場で倒れていたから放ってはおけないだろう。

 だから君には話してもいいと思ったんだよ」


 急に色々な話が入ってきて混乱しそうだ。

VITALっていう防衛組織の日本支部に俺はいて、VITALはLazyの世界征服を阻止しようとしてて、んでもってロボットがあって……

んんんんん、寝起きの俺には難しい。


「そうだ。

 もう身体が大丈夫なら、ぜひ君に見せたいものがあるんだ」


「見せたいものですか?」


「ああそうだ。

 どうする? 行くかい?」


 俺は頷き、ベッドから降りる。

気を失っていたわりには、結構身体は軽い。

これなら全然大丈夫そうだ。


 俺はハカセの後を付いて行きながら、周りを見回していた。

色々な人がいて、難しそうな言葉を話している。

中には外国人もいて、本当にここがそういう組織なんだということを認識できた。


 やがて俺とハカセはエレベーターに乗り込み、地下深くへと移動する。

その中で会話はないが、それなりに長い時間乗っていたので気まずくてしょうがなかったよ、ホント。

エレベーターが目的の階に着いた時は、思わず手で握り拳作っちゃったし。


 エレベーターを出ると、そこがどこであるのかすぐにわかった。

目の前に聳えるガンバー。

その横には戦車や船、戦闘機のようなものも配備されていた。

どれも普通のものより大きく、対異生命体用に造られたものだと予想できる。

そして、行き交う沢山の機械。

整備員がせわしなく動いており、ガンバーを修理しているのが見て取れる。

言うまでもなく、ここはそう、ガンバーの格納庫だ。

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