第1話 脅威襲来 ―A―
目覚まし時計が忙しくベルを鳴らす朝。
いつもどおりの日常に目を覚ました俺は、時計の針が指し示す時刻を見て戦慄した。
「7時……53分!?
やべえ!! 遅刻だ!」
布団をはねのけ、ベッドから飛び出す。
なんでだ?
いつもはもっと早く目覚まし時計が鳴るのに……
いや、今はそんなこと考えている時間じゃない!
とにかく早く学校に行かないと。
高校二年生初めての授業日に遅刻とかありえないって!
制服に着替え、騒がしく階段を降りる。
居間では妹が呑気に朝ごはんを食べていた。
アイツ……まだ学校始まらないからって余裕かよ。
「おい!
なんで起こしてくれなかったんだよぉ!」
「あれ、お兄ちゃん今日から学校だっけ?
すっかり忘れてた」
「馬鹿野郎ッ!
今日からだよ!
とにかく朝メシはいらん、間に合わない!」
玄関に直行し、靴を履こうとするがいつものアレをし忘れていることに気づいた。
今は一分一秒を争うが、これだけは譲れない。
玄関から和室に向かい、仏壇の前に座る。
一呼吸置いてから鈴を鳴らし、手を合わせた。
「父さん、母さん、行ってきます。
俺もレイも元気だから、心配すんなよな」
そう呟いた後、今度こそ玄関に向かう。
靴を履いて今日も一日頑張るぞと気合チャージ。
「じゃあ行ってくる!
あとは任せたぞー!!」
家を出て、愛車『ブラスト号』に乗り込んだ。
赤と白に彩られたこの自転車は俺の宝だ、今日も頼むぜ。
「行くぜブラスト号!
お前の速さ……見せてくれ!」
全力でペダルを漕ぎ、自分でも驚く速度で学校へ向かう。
もう俺を止められるのは赤信号だけだ。
「ちょっと、お兄ちゃーん!!
おべんとー忘れてるー!」
「今日は購買で買う!
弁当はレイの昼メシにでもしてくれー!」
「……もう、勝手なんだから」
レイには悪いが、間に合わせるしかないんだ。
新学期が……学校が俺を呼んでいる。
しばらく自転車を漕いで、学校が近くなってきた。
信号に捕まり、早く青にならないかとそわそわしていた時、同じように信号を待っていた女性に話しかけられた。
綺麗な黒髪ロングの、ちょっと大人しそうな娘。
俺と同じ学校の制服を着ていることから、同じ都立活力学院の生徒だとわかる。
「あ、あの……
都立活力学院って、こっちの道であってますか?
今日から通うんですけどまだ道を覚えてなくて……」
今日から通うってことは一年生か転校生か?
でも普通学校までの道って確認するよな……
まぁこの際いいか。
急いでるけど、目指す場所が一緒なら一緒に行こう。
彼女も迷わないし、俺も遅刻の言い訳ができる。
「こっちの道であってますよ。
一緒に行きましょうか?」
「えっ……いいんですか?
じゃ、じゃあ……お言葉に甘えさせてもらいます」
「よし、じゃあ一緒に行きましょう。
俺の名前は頑張ロウです、よろしくおねがいします」
「私は……源アイです。
ロウさん、ありがとうございますね」
自転車を降りて、彼女と共に学校を目指す。
ごくごく普通の春を、俺は謳歌していた。
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