第30話
加賀を引き連れて第二艦隊に追いついた戦艦大和。
砲撃を終えた砲身がいったん3度まで角度を戻す。
被弾して射撃できない三番主砲塔以外の6門での砲撃だがそれでも砲撃する度に艦橋を叩くブラスト圧と爆炎は凄い。
砲撃する度に千秋は座席から落ちそうになっていた。
「栞菜ちゃん、霧がはれはじめて敵艦がしっかり見えるから、しっかり頼みますね!!」
「任せとけっ!!砲身が焼切れるまで全弾撃ち尽くしてやる!!」
搭載されている砲弾が次々と発射され、数が減っていく。
後方の加賀からも敵艦隊に向けて怒涛の砲撃が浴びせかけられている。
加賀の艦長を務める渡辺沙樹は祖父から受け継いだ軍刀を握りしめながら叫んでいた。
「沈んだ霧島の分も私達が働くわよ!!撃って撃って撃ちまくって!!敵艦隊を火の海にして!!」
既に夾叉弾を得ているのでこのまま撃ち続ければ日本戦艦の狭い散布界からしてもすぐに命中弾を得られるだろう。
H級は長門と撃ちあっていたので大和と加賀は金剛の援護に入り大和がビスマルク、加賀がティルピッツと交戦してる。
加賀は長門と同様に海軍休日の前に計画された艦だが41cm砲10門と世界の最新鋭艦とも真っ向から交戦できる火力を備えている。
その上で速力、防御力とも高い水準を持っているためその戦闘能力は凄まじい。
「弾着15秒前、………5……4……3……だんちゃ〜く……今!!」
見張り員の除く双眼鏡に水柱が微かに映った。
そしてその間に被弾による閃光も確認して伝声管に食らいつく。
「敵艦に二発命中!!」
これで加賀は敵艦に対し優勢をとったことになる。
敵艦は金剛へ向けていた砲塔をこちらに指向させようとしていた途中なのでまだ砲撃は出来ないでいる。
「次弾装填急いでっ!!」
沙希が軍刀で指示しながら命令する。
しかし、艦橋に砲術長にはいないので誰を指示しているのかはわからない。
砲塔内では砲身の尾栓が開かれて弾薬庫から上がってきた次の砲弾が装填される。
装填作業にはどうしても数十秒の時間がかかるので沙希はその時間がもどかしかった。
「敵艦発砲!!」
砲塔の旋回を終えたティルピッツとビスマルクがとうとう砲撃を開始した。
弾着までの間に加賀はもう一度砲弾を送り出す。
そして艦の全員が被弾に備えた。
「敵砲弾、来ます!!」
被弾する直前の砲弾を瞬間的にとらえた見張り員の叫びと同時に艦に激震が走った。
加賀の舷側に被弾したのだ。
「一発目からあたったか……被害は!?」
「右舷中央部に被弾!!」
加賀の舷側装甲に命中した38cm砲弾は加賀の325mmの装甲によって防がれた。
火災が発生しているが乗員のアンドロイドが鎮火作業にあたっているため副砲弾薬庫などに被害が及ぶことはないだろう。
見ると既にビスマルクが大和の砲撃で沈没寸前、敵一番艦も長門と同様に随分な被害を受けている。
金剛は既に大破こそしているものの沈没はまだしていない。
状況は少しずつこちらに傾きつつあったが、とつぜん加賀がとんでもない揺れに襲われた。
予想だにしない揺れに沙希は席から投げ出される。
身体を守るシールドが無ければ怪我をしていたかもしれない。
「……っ!?何があったの!?」
タイミングからしても敵の砲撃による被弾ではなかった。
こちらが砲撃するタイミングと同時にやって来たその揺れだが、揺れ方からして砲撃によるものでもない。
もっと凄い爆発かなにかだ。
「五番砲塔で爆発事故です!!」
「なっ!!爆発っ!?」
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