第28話
突然、長門上空から鋼鉄の雨が降り注いだ。
ビッグセブンの船体が衝撃で大きく揺れる。
外れこそしたものの、正確にこちらを補足していることは間違いない精度で飛来した砲弾による水柱は敵が長門とほぼ同等の戦艦であることを示していた。
修子が伝声管に向かって声を荒げる。
「見張り員、報告!!」
「左舷八時方向!!敵艦3隻確認!!距離35000!!」
見張り員は一瞬の発砲炎を見逃さずに報告してきた。
「そんな……追いついてくるのが早すぎる!!」
直が司令塔の窓から双眼鏡で覗くがこの高さで35000m先は見えない。
艦橋上部でやっと見えるかどうかギリギリのラインだ。
見渡す限り続くのは薄い霧と海ぐらいのものだ。
「でも実際に来てる!!ということは敵艦隊はこちらの進路を正確に予測してショートカットして来たんだ!!」
敵艦隊の追撃を振り切るために島を躱すようにして蛇行していた長門達。
その針路を敵が正確に予測して最短コースで追ってきたとしか考えられなかった。
試合経験豊富でその結果や敵の行動を試合後にデータを綺麗に分析しているプロイセン学院だからこそ出来る技だと言えるだろう。
「もう針路も大丈夫かな。氷山ももうないし。このまま直進して砲撃戦に移るよ!!」
「なら、修子は艦橋に行かないと!!直進するだけなら普通の航海士でも出来るから!!」
長門は伊勢の様に直進性の悪い艦ではないため直進するなら大した技量は必要ないのだ。
何度も当て舵をする必要はない。
「ごめん、任せた!!」
帽子をかぶりなおして艦橋に上がっていく修子。
艦橋に入ると有希達が敬礼して出迎えた。
「お帰り、修子」
「ただいま、有希」
既に霧もだいぶはれはじめていたので視界はかなり良好になっていた。
艦橋から見える一、二番主砲塔は既に旋回を終えている。
後は命令を待つだけだ。
「目標、敵一番艦!!撃ち方始めっ!!」
「撃っ!!」
その昔、列強海軍を大きく引き離し恐怖のどん底に叩き落としたと言われる41cm砲が左右交互撃ち方で砲撃を始めた。
敵艦も続々と砲弾を送り込んできて凄まじい砲撃戦になる。
敵一番艦は長門と交戦し始めたが、二番艦と三番艦は金剛を狙って撃ってきていた。
弾着の水柱から恐らく一番艦がH級、残る二隻がビスマルク級であることは容易に想像がついた。
「やっぱりさっきと同じ奴らだ……金剛型には荷が重いか……」
「でも、援護する余裕はないよ修子」
H級戦艦は長門が侮れるような戦艦ではない。
設計思想が古いとはいえ積んでいる砲は強力なものなのだから。
「……わかってる」
金剛の周囲には水柱が何本も立つので時折艦影を見失う。
しかし、水柱が上がるということはまだ当たっていないという事だと言い聞かせて修子は砲撃を続けさせた。
最初に命中弾を得たのはやはり練度で勝るプロイセン学院だった。
しかし長門の後部艦橋と三番主砲塔の間に着弾した40.6cm砲弾はカタパルト等を粉砕したがバイタルパート内部には何の被害も発生させることは出来なかった。
発生した火災もあっという間に鎮火された。
「……日本の誇りと謳われた戦艦長門をそう簡単に撃沈できるとは思わないでよね。霧島の仇を討ってやる!!」
修子がにやりと笑いながらそう言った。
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