第16話
薄暗い霧の中を3隻の戦艦が航行していた。
その中でも一番前を航行する戦艦はその中でもひときわ大きな巨体と砲を備えている。
45口径の46cm砲を前方に2基6門、後方に1基3門配し、分厚い装甲に包まれたその巨艦は世界最大最強の戦艦として知られた戦艦「大和」だ。
その後方を進むのは45口径41cm連装砲を5基10門装備している八八艦隊計画で建造されるはずだった戦艦「加賀」が、そしてそのさらに後ろを日本の誇りと謳われ国民にも広く親しまれた世界初の41cm砲搭載艦である戦艦「長門」が続いている。
そして驚くべきなのはこれら日本海軍を代表する怪物たちを操っているのが10代の女の子たちであることだった。
「霧が深いですね」
「そうね」
大和の第一艦橋で会話しているのは大和の艦長と艦隊の司令官を務める長嶋千秋と航海長を務める野茂優香だ。
千秋の方は日本人らしい艶のある黒髪で優香は茶髪だ。
その他にも艦橋要員は何人もいるが会話しているのは二人だけ。
砲術長を務める王栞菜も副長である鈴木一子もそれぞれ来たるべき砲戦に備えて主砲射撃指揮所、司令塔に入っている。
それ以外は人数稼ぎのアンドロイドであり会話は出来るがやはり弾まない。
「こっちには何隻来るかな?」
「多分、ドイツ海軍系の艦艇でしょうからシャルンホルスト、グナイゼナウ、ビスマルク、ティルピッツ、H39型戦艦、H41型戦艦、O級巡洋戦艦のうちから5隻なはずなんですが、どれが来るかはわかりません。この霧では下駄ばきを出すわけにもいきませんし」
「だよね、大杉さん達の方にH級とか行ってないといいけど……」
現在、大和とは別働隊として戦艦金剛、霧島の2隻がB地点の確保に向かっている。
制圧戦では当然ながらA、B両方を確保した方が圧倒的優位に立てるために戦力を分散したのだ。
そうなると30ktを発揮できない大和、加賀、長門では足手まといになってしまう。
「とにかく、今心配しても何にもなりません。敵の総数はこちらと同じ5隻なので戦力にそこまでの差は無いので第一艦隊の砲力でA地点を早々に奪取してB地点へ向か……きゃっ!!」
「きゃあっ!!」
轟音と共に大和や加賀、長門の周りに巨大な水柱が出現した。
夾叉ではないがかなり正確にこちらの位置を補足している。
対応が遅れればやられかねない。
「敵襲!!」
「敵艦の位置を知らせてください!!」
千秋の叫び声が第一艦橋に響き渡った。
浮足立っていた艦橋要員もそれを聞いて立て直す。
「11時方向。距離不明!!」
この濃霧の中でほんの一瞬発生しただけの発砲炎だけを頼りに見張り員が距離を知らせてきた。
「戦艦2。距離、約35000!!補足限界距離ギリギリからです!!」
見張り員に続いて電探室からの報告が届く。
ドイツ戦艦は長距離砲戦には向かないのですぐ撃ってくることはないと思っていたが相手は予想に反して撃ってきた。
すぐに立て直さなければ一方的に撃たれ続ける。
「上がった水柱の高さからして恐らくシャルンホルスト級。大和型の相手ではありませんがここにこの2隻がいるということはB地点にビスマルク級などが向かった可能性が高いです。早々に撃破して援護に向かいましょう」
「敵の弾をそらすために変針するね。最大戦速、面舵20」
「こっちはいつでもいけるよ!!指示をくれ!!」
主砲射撃指揮所から栞菜の威勢のいい声が聞こえてきた。
巨大な主砲塔は既に左舷への旋回を終えて後は指示を待つだけだった。
「交互射撃開始!!」
「撃っ!!」
各砲塔から一本ずつ、合計三本の爆炎が上がり35000m先のシャルンホルスト級戦艦目掛けて砲弾が放たれた。
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