第15話
グラーフ・ツェッペリンのハーケンクロイツが描かれた甲板上に日の丸を背負った流星が着艦した。
千秋と運転手役を務めた岩本が機体から降りるとすぐに二人の人影が近づいてくる。
ドイツ海軍の制服を改造したものを着た千秋より少し年上の女の子だ。
「プロイセン学院戦艦部部長のリンデだ。今回の練習試合はよろしくお願いする」
「帝山女子高校戦艦部部長の長嶋千秋です。よろしくお願いします」
リンデと名乗ったこの女の子は金髪の似合うつり目の少女で怖いという印象を相手に与える。
続いて後ろの女の子も紹介された。
この女の子は副部長のようだ。
「………………」
リンデがじっと千秋の顔を見つめてくる。
その迫力に千秋が少したじろぐ。
「あ、あの……どうかしたんですか?」
「いや……鬼神の後継者たちにしてはかわいらしいなと思っただけだ。気に障ったなら謝ろう」
「……鬼神、ですか?」
何だ知らなかったのかとリンデが教えてくれた。
先輩たちは作戦などに特に目立ったところはないが、半端ではない練度で敵を圧倒し撃滅して行っていたそうだ。
彼女自身は年代的に当たったことはないそうだが顧問が知っていたらしく、だいぶ怖がっていたようだ。
「ではそろそろ開始時刻だ。お互い艦に戻ろうか」
「そうですね」
再び岩本と一緒に流星に乗り込んで自分たちの艦隊に戻る。
大和の艦橋に上がってみんなと合流した。
まだ試合開始前と言うことで配置には着いていない。
「では、試合前に作戦行動についてもう一度確認しておきましょうか」
4人で海図をぐるっと囲って立つ。
船体が波によって一定の間隔で揺れていた。
「今回はエリア制圧戦でエリア数は二つなので、高速戦艦とそれ以外の艦とで二つの艦隊を編成し行動します」
高速戦艦、すなわち金剛型2隻の第二艦隊と大和、長門、加賀で構成される第一艦隊だ。
この編成になったのは単純に速力の面を考えてのことだろう。
長門は約25kt、金剛型は29~30kt。
同じ艦隊を組むと速力の差が大きすぎて金剛型の持ち味が生かせなくなる。
「戦闘エリアはこの海図に指定されたエリアのみ。私たちは北西の端から、相手は北東の端から動くことになります」
本来の試合なら相手の動き始める点はわからないのだが今回は練習試合なのではっきりしていた。
双方離れた点から始めるので始まった瞬間にかち合うことはない。
「エリア北半分には西にも東にも大きな島が一つずつあってその間にエリア1、南半分には広い海と群島がありそこにエリア2があります。そこで足の速い第二艦隊は遠いエリア2、遅い第一艦隊はエリア1を目指します」
「なんとも単純な作戦だな。だが、これなら間違えることはない」
「天候はこれから大規模な霧が発生するそうです。となると、独戦艦が本領を発揮しますのでこちらが不利です。火力では恐らくこちらが勝りますが、油断せずに行きましょう!!」
「「「了解!!」」」
それぞれの持ち場に分かれる4人。
艦橋に残るのは司令官兼艦長の千秋と航海長の優香だけだ。
「……緊張しますね」
「そうね。でも、部長がそんなんじゃ駄目よ?」
指揮官用の座席に腰を下ろした千秋のすぐ隣に優香が立つ。
試合開始の時刻が刻一刻と迫ってきていた。
そして時計の針が12に重なり試合の開始を告げる。
「試合開始!!」
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