第10話
「お疲れ様。どうだった?初めての感想は?」
「「「……疲れました」」」
全員のげっそりとした顔を見て弥生先生は大笑いした。
文字通り腹を抱えての大笑いだ。
大人のかっこよさが台無しである。
「アッハッハッハ!!まあ、そうでしょうね。今日は大まかな結果を伝えたらもう終わりにするから、頑張って。まず、大和に乗り込んでた子たち、前に出て」
言われたとおり、千秋達4人と飛行科の5人、そして砲室組の4人が前に出た。
飛行科の5人のうち、3人は零式水偵組だったので今回出番は全くなく不満そうな顔をしている。
「まず、指揮に関してだけどあれは満点だわ。特に長嶋さんの対応が意外と早くてびっくりしたわね。これからもあの調子で頑張って」
「あ、ありがとうございます……」
褒められたことは嬉しそうな千秋だったが、どうせなら最初に大まかな操作方法ぐらい教えてくれてもよかったのではないだろうかと思った。
そのせいで千秋がすべて説明しなければならず、無駄に時間が割かれてしまったのだから。
「次は航法……といいたいけど今回の情報だけじゃわからないわ、ごめんね。次に砲術だけど、これも指揮と同じく満点よ。あの初弾から夾叉するのがたまたまじゃないと、今後証明してほしいわね」
「「「わかりました!!」」」
「最後は零式水観の子たちだけど、空戦技術を今後もっと磨かないとね。それと、あの敵機のおとし方、面白かったわよ」
「「は、はぁ……」」
狙ってやったわけではない二人は何とも言えない顔をしていた。
その後他の艦の評価も述べられていった。
そのなかでも高評価だったのが戦艦長門で、他の艦ではテンパっていたことにより操舵の指示のタイミングが遅れて回頭点がずれていたにもかかわらず、完璧に操舵の指示を行ったとして航海長役の子が褒められた。
しかし、航海長役の茅原有希が自分の功績ではないとして艦長役の兄部修子を推した。
なんと有希は何もできないでおり、司令塔に飛び込んできた修子が航海士役のアンドロイドから舵輪を奪い取って直接操舵したのだという。
これには全員が賞賛の声を上げた。
全員から拍手を送られた修子が体をくねらせながら顔を染めている。
「じゃ、今日はこれで終わりね。皆の生活用具は既にここへ持ってこさせているからすぐに運び込んで」
「?どういう事ですか?」
また意味の分からないことを言い出した吉乃先生に千秋が質問する。
他の部員たちも先生が何を言っているのかわからないようだった。
確かに段ボールの山が先生の後ろに高く積まれているのは千秋達にもわかる。
だけど、何故自分たちの物をここへ持ってくる必要があるの?と全員の顔に書いてあるようだった。
「あれ?言ってなかったっけ?今日からあなた達には自分たちの乗艦で暮らしてもらうからね」
「「「……………………えっ!?」」」
いきなり告げられたことに誰もが対応できないでいた。
対応の速さを褒められた千秋ですらポケッと突っ立ったままだ。
「艦内は基本的に好きに使っていいし、お風呂も真水で沸かしていいわ。取り敢えず、艦と極力長い時間一緒に過ごして扱い方を体で覚えなさい。これは決定事項だから異論は認めません。いいですね?」
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