第7話
大和艦内は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
この中で戦艦を実際に操作した経験のある物など一人もいないのでしょうがないと言えばしょうがないのだが。
第一艦橋に残っている千秋が次々と指示を飛ばして直していく。
「おい、射撃指揮所って所に入ったけどどうすればいいんだ?」
「その中に九八式方位盤照準装置があるはずです。その指揮官用の座席が空いてるはずだからそこに座って装置を敵艦に向けてください。そうすれば動揺手が敵艦を十字の中央に捕えて旋回手と俯仰手が敵艦の動きを追尾してくれます。射撃のタイミングで引き金は俯仰手か栞菜ちゃんが引くことになりますけど、栞菜ちゃんはそれより全体の動きを指揮してあげて!!第二射以降は修正角の指示もお願いします!!」
「わかった!!」
「部長!!我々はどうすれば!?」
次に質問してきたのは第一主砲塔の幸たちだ。
戦艦の主砲の操作などわかればそれだけで人に自慢できるだろうから知らなくても当然だ。
「幸ちゃんたちはそこに白い針と赤い針がついた旋回受信機と俯仰受信機があるはずだから俯仰受信機は主砲に砲弾が装填されたら赤い針の位置に白い針を合わせて!!旋回受信機は装填前に動かしても大丈夫だから!!赤い針は常時動いてて針が全部合わないと砲撃できないですからね!!零式水上観測機はただちに発艦!!」
「了解!!」
一通り大まかな説明をして少し息をつく千秋。
敵艦はまだ砲撃精度に自身が無いのか少しずつ距離を詰めてきていた。
しかし、こちらはもっと精度の自信が無い。
距離を詰めるべきだと判断した千秋は優香に転舵するように命じる。
「優香ちゃん。最大戦速、取舵10」
「了解。最大戦速、取舵10」
大和型戦艦は舵が効き始めるまでの時間がかなり長い。
何百mか直進した後に急激な回頭開始した。
効き始めるのは遅いが回頭を開始すると一気に回るのも大和型戦艦の特徴だ。
後続の艦も同じタイミングで回頭しようとするが練度の低さゆえに全く違う点で回頭していた。
日本海海戦時の連合艦隊の艦隊運動はそれは見事な物だったと言われているが今の彼女達にはそんなものはかけらも感じられなかった。
結局、同じ点で回頭できたのは長門一隻だけだった。
長門だけは見事な操艦で大和に追従してきている。
「敵艦発砲!!」
「とうとう撃ってきた……」
「どうする?回避運動とる?」
「砲弾の回避は殆ど無理でしょうし、今回避すれば射撃精度はさらに下がります。このまま直進しましょう」
会話をしている二人についに射撃用意よしの報告が入る。
敵艦の砲弾は大和を大きく外れて巨大な水柱を発生させていた。
着弾の衝撃が大和にまで届くが全く微動だにしない。
巨艦の威容をまざまざと見せつけていた。
「撃ち方始めっ!!」
「撃っ!!」
二回のブザーの後に1.46tの砲弾が真っ赤な炎とどす黒い爆炎を従えて72000tの巨体から撃ちだされる。
最初の第一射なので発射されたのは9発ではなく3発だけだ。
撃った3門はすぐに3度まで戻され6門だけが元の位置に残る。
この6門が撃ったら次は最初の3門が撃つ。
夾叉弾を得られるまではずっとこれの繰り返しだ。
着弾するまでの時間がまるで永遠のように感じられる。
「はやく……はやく…………」
「着弾、今っ!!」
時間を計っていた水兵の女の子が時間を知らせる。
そして、サウスダコタの周りに3本の巨大な水柱が上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます