第6話
「うぅ~私に部長何て荷が重すぎるよぉ~」
「決まったことだ。諦めろ」
「頑張って、長嶋さん」
「……頑張れ」
想いもしなかった重荷に肩を落とす千秋。
彼女たちを含め新入部員は先ほどの部屋を出て吉乃先生の案内のもと別の部屋へ向かっていた。
部屋を出る前に自分が乗りたい艦を申請して出したが、特に被ることもなかったようで全員が認められた。
結果、最初に彼女たちが運用することになったのは戦艦大和、加賀、長門、金剛、霧島の5隻だ。
「ここよ」
入ったその部屋には卵形の大きなカプセルがいくつも並んでいた。
部屋の広さからして100基以上はありそうだ。
「皆、練習は基本的にバーチャルでするから間違って港の方に行かないようにね」
「艦には乗らないんですか?」
「今からあの艦達を動かそうと思ったら半日以上かかるわよ。さ、カプセルの中に入ってバイザーをつけて」
言われたとおり手近なカプセルの中に入ってバイザーを頭につける。
そしてゆっくりとカプセルがとじはじめた。
その圧迫感に少し怖気づく千秋。
その隣のカプセルでは優香がリラックスした状態で目を閉じていた。
「……クリアしなかったら死ぬデスゲームとかにならないよね?」
「アニメじゃないんだから」
ゆっくりと視界が暗くなり、平衡感覚も失っていく。
何も見えない真っ暗な空間を永遠に落ちていくような錯覚に襲われる。
そして気付いたら千秋は鋼鉄の城の上に立っていた。
「ここは……大和の第一艦橋?」
近くにあった窓から下を覗くと巨大な2基の主砲と1基の副砲が見えた。
辺りには潮の香りが漂い、巨艦が海を切り分けて進む波の音がする。
72000tの船体が波に合わせて心地良く揺られている
艦首の旗竿の向こうには天皇陛下の所有物であることを示す菊の御紋が燦然と輝いていることだろう。
「……凄い」
「ほんと、凄いな」
いつの間にか栞菜が横に立っていた。
後ろを振り向くと優香に一子もいる。
人数の穴埋めをするアンドロイドも何体もいた。
「皆、聞こえる?」
いつの間にかつけられていたイヤホンから吉乃先生の声が聞こえてきた。
服装も大日本帝国海軍の礼服を改造したものに変わっている。
他の3人も同じようで違うのは肩章くらいだ。
これは階級によるものだろう。
「それじゃ、今から練習を開始するから、頑張ってね!!」
「えっ!?操作説明とかないんですか!?」
慌てて千秋が尋ねるが既に通信は切れていた。
イヤホンからは他の艦に乗っているはずのこの声も聞こえるので他艦との通信もできるようだ。
流石に試合では使えないのだろうが練習にはピッタリである。
「どうする、部長?」
「とりあえず、皆さん配置に付きましょう。栞菜ちゃんは砲術長、優香ちゃんは航海長、一子ちゃんは副長をお願い。栞菜ちゃんは砲術長だから上の主砲射撃指揮所、一子ちゃんは艦橋の一番下の司令塔が持ち場になります。全艦戦闘配置!!」
「「「了解!!」」」
「この大和に私達以外で乗り込んでいる部員の方は何名いますか?」
「こちら一番主砲塔、砲室の有賀です!!ここにあたし以下4名います!!」
「こちら飛行科乗員室!!こっちには岩本以下5名です!!水偵・水観両方ともいつでも発艦できます!!」
「わかりました!!」
イヤホンからの情報を聞いてすぐに覚える千秋。
後続の戦艦からも配置完了の通信が入ってきたのでこれで全員が持ち場に付いたことになる。
そしてそれに少し遅れて見張り員が金切り声を上げた。
「戦艦5隻発見!!先頭から順にサウスダコタ級、コロラド級2隻、ニューヨーク級2隻と認む!!距離35000!!速力16ktで本艦隊と並走しています!!」
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