第4話
次の日、学校が終わると千秋は3人を掴んで全速力で戦艦部の部室に走って行った。
途中で教師に呼び止められたような気もするが全く気にも留めない。
千秋の華奢な体つきからは考えられないスピードだった。
戦艦部の部室は艦が停泊している港のすぐ近くにあった。
一瞬、停泊している艦艇の方に引き寄せられるが何とか思いとどまって部室前で停止した。
「し、死ぬかと思いました……一子、大丈夫?」
「これだけ引っ張られたら身長伸びたかもしれない……」
「全国中学校柔道大会で優勝してちょっと調子に乗ってたけど上には上がいるというのか……」
旧時代の刑罰のようなものを味わった三人はフラフラになりつつも立ち上がる。
戦艦部の部室として使用される建物は非常に大きく奥行きが600m、横幅も100m程ある。
たいていの学校より遥かに大きいだろう。
しかし、千秋にはこの建物の形状に覚えがあった。
「……五十万トン戦艦?」
五十万トン戦艦とは明治末期に金田秀太郎中佐が提唱した空前絶後の巨大戦艦である。
当然ながらこんなモノ実現できるはずもなく実際に造られることは無かったのだが。
この戦艦部の部室、船体の形状や砲塔のような部屋?の配置からしても五十万トン戦艦と完璧に同じだった。
「あら、新入部員?なら、早く上がってきなさい」
タラップの上から顧問の教師と思わしき女性が声をかけてきた。
帝国海軍の礼服に身を包んだその女性は千秋と同じ黒髪だが背はずっと高く、恐らく栞菜よりも高いだろう。
大人のかっこよさというものを感じさせる女性だった。
とりあえず遅れないようにタラップを駆け上がる4人。
すぐに一つの部屋に案内された。
その部屋にはすでに入部希望者と思わしき生徒が何人もいた。
「あら、長嶋さん」
「あっ、次海ちゃん!!もしかして次海ちゃんもバトル・オブ・バトルシップスをやるの?」
「ええ、友人に誘われまして」
部屋の中を見渡すと色んな生徒がいた。
電卓でしきりに何か計算している者、ヘッドフォンで音楽を聴いている者、何故わからないが軍刀の手入れをしている者等本当に様々な生徒がいる。
中には上級生もいるようだった。
「はい、皆こっち向いて。え~皆さん、この戦艦部への入部希望者ですね。私は吉乃美玲。この戦艦部の顧問をしています。早速で悪いのですが皆さんにはテストを受けてもらいます」
この言葉に部屋中から驚きの声が上がった。
それもそうだろう、部活の入部申請に来たらいきなりテストを受けろと言われたのだから。
しかし、そんなこちを意にも解さず吉乃先生はテストを配布し始めた。
それも冊子で相当な厚みがある物だ。
「これは……全部戦艦に関する問題だね」
千秋がそっと中を覗くとそこには戦艦に関する様々な問題が羅列されていた。
戦艦の歴史から砲弾の弾道計算などの一般人ならまず解けないような問題ばかりだ。
「……一問もわかりません」
「……頭痛くなってきた」
「……解ける気がしない」
栞菜たちは3人とも問題の難しさに舌を巻くが全く違う反応を示したものが一人だけいた。
もう誰かはおわかりだろう。
「うん、これぐらいなら解けるかな」
千秋である。
問題の内容を大まかに確認したが特にわからない問題は無かったようだ。
既に解答用紙に名前を記入して準備万端の状態である。
「では、始めっ!!」
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