第3話
入学式を終えると千秋と栞菜が教室に入るともうほぼ全員の生徒がそろっていた。
割り振られた番号を頼りに席を見つけると千秋と栞菜は隣の席だかつ一番後ろの席だった。
席に着くとすぐに隣と前の女の子が話しかけてきた。
前に座っているのは茶髪に茶色い目という典型的な日本人の風貌。
優しげな顔をしたかわいいタイプの千秋とは逆に美人タイプだろう。
もう一人も黒髪に茶色めなので日本人としておかしくないが、他の3人に比べて少し……かなり小柄だ。
「私は野茂優香で、こっちが鈴木一子。これからよろしくおねがいしますね」
「私は長嶋千秋。こちらこそよろしく」
「王栞菜だ。よろしくな」
周りでも近くの生徒同士での会話が始まり教室内が一気に姦しくなる。
千秋達も椅子を持ち寄って井戸端会議のような状態になった。
彼女たちの通う学校の名前は「国立帝山女子高等学校」といい、その名の通り国が運営する女子高だ。
何十年か前に火山活動で出来た三笠島を国が開発・整備して立てた学校で国内の高等学校における最難関として有名である。
学力のみならず部活動にも力を入れており、どのような種目でもトップクラスの成績を誇っている。
「ねえ、皆さんははどんな部活に入るつもりなんですか?」
当然、そんな学校でこの話題が出るのは自然な問題だった。
その質問に対し、千秋は間髪入れずに答える。
「私は絶対にバトル・オブ・バトルシップスをやるよ!!」
「ってことは戦艦部に入るんですか?」
優香が手入れの行き届いた髪をかきあげながら聞いてきた。
戦艦部とはバトル・オブ・バトルシップスという競技を行うクラブの名前なのだが、そのまま名前を使うと少し長すぎるということで戦艦部に略されたのだ。
「うん!!皆もやらない?絶対楽しいよ!!」
物凄い気迫で言ってくる千秋に周りの3人は少し引き気味になっている。
一子辺りはただでさえ低い身長がさらに縮こまっているように見える。
千秋に掴まれている机が限界を迎えて不穏な音を鳴らしていた。
「でも、この学校の戦艦部って活動停止になってるんじゃありませんでしたっけ?」
この帝山女子高等学校の戦艦部は部員が競技にのめり込むあまり学業がおろそかになったりしていたので数年前に活動停止になっていたのだ。
部活動を行うのもいいが学生の本分はあくまで勉強という当時の校長の判断だった。
「問題ないよ。今年から活動再開になったみたいだから」
千秋はこの部活に入るためにこの学校に進学したのでその辺の情報は完璧にリサーチしている。
もし戦艦部が活動を行えないなら別の学校に行っていただろう。
「そうなんだ。じゃあ、私たちも行ってみましょうか?」
「うん、いいよ。栞菜ちゃんはどうするの?」
「いや、私は柔道部に……」
そう言いかけた栞菜の手を千秋が掴んだ。
力には自信があったにもかかわらずそれを上回る千秋の握力に面食らう栞菜。
千秋はその手を放そうとはしない。
「絶対に面白いから!!一回一緒に行ってみよう!!」
「う、うん。わかった……」
あまりの迫力に思わずうなずいてしまった栞菜。
かわいらしい雰囲気をしている普段の姿とはあまりに差がありすぎる千秋だった。
「でも、部活見学は明日からだから今日はいけませんね。あっ、先生が来たみたいです」
教室に先生が入ってきたので慌てて前を向く4人。
その後は自己紹介などありがちな事を坦々とこなすと寮での荷物整理などもあるので早めに解散となった。
自分の量の部屋番号が書かれた紙を確認してエレベーターで寮の上階まで上がる。
広々と造られた廊下を進みながら自分の部屋を見つけるとその部屋の前には見知った顔ぶれの人間が3人いた。
「「「「あっ……」」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます