第101話謁見の後
翌朝、皇太子リチャードは謁見の間で国王アーチャンドと対面した。
「よくぞ参られた。リチャード皇子」
アーチャンド国王はにこやかな表情で使節団を迎え入れた。
「王よ!この度は我が皇帝の親書を快く受諾頂き、誠に恐悦至極にございます」
とリチャードはこの場を設けてくれたアーチャンド国王に謝意を述べた。
「いやいや、皇太子自らお越しいただけるとは、こちらこそ謝意を述べねばなりますまい」
会見は終始和やかな雰囲気の元執り行われた。
リチャードから離れた壁際で随行員たちはその様子を眺めていた。勿論イツキ達はその中にいた。
イツキはこの場にいるアルポリ国の重臣たちを見ていた。
その中に先日ケンウッドの森でヴィクター族相手に大敗を喫した二人の将軍、ホベロイとフクジンの姿を認めた。
――そうかぁ……あの二人は更迭されなかったのか……師匠の言う通り、これは厄介かもしれんな――
とイツキは考えていた。
先の戦でこの二人は新型の兵器を持って挑んだが、ダークエルフを主体としたヴィクター族に一蹴されてしまった。そのままこの二人は本国に帰って首を刎ねられるいか、責任を取って更迭させられるかのどちらかだと思われていたが、ア―チャンド国王は二人を許した。
シドが言う通り「経験を糧に更なる軍隊を作る」ために恥を忍んでその任に留まっているようだった。
――これは師匠に報告しておいた方が良いな――
イツキはこれが確認できただけでも今回の随行はその価値があったと思えた。
会見は滞りなく進められ、イツキ達が活躍する場面は最後まで無かった。
会見が終わり、一行は宿舎に戻った。
宿舎に戻るとヘンリーがイツキの部屋を訪れた。
「イツキ、今からちょっと良いかい?」
「良いかいって、今からどこかへ出かけるのか?」
「そうだ。この街のギルドに顔を出すので一緒に来て欲しい」
「ああ、そうかぁ……ここにもギルドがあったんだな」
イツキはこの街のギルドの事を思い出した。
彼がまだ冒険者でった時代に何度かここを利用した事があった。
二人は正装を改めていつものギルド長とキャリアコンサルタントの服装に着替えて、この街のギルドに向かった。
この街のギルドはヘンリーのギルドよりも一回りこじんまりとした建物だった。
ここもモンスターが減ったおかげか人もまばらで閑散としていた。
二人は建物の正面玄関から中へと入った。
何人かの冒険者と思しき人間が酒場にたむろしている姿を目にしたが、まるで活気というものを感じられなかった。
彼らも他に行く当てがなく、ここでこうやって過ごすしかないのだろう。
「なあ、ヘンリー。僕は少し一階のロビーを見て回って良いかな?」
イツキは中に入ると同時にヘンリーに言った。
「うん? ギルド長に会いたくないのか?」
「いや、そういう訳ではないんだけど、なんだかこのギルドが懐かしくってね。ここのギルド長と挨拶をするのは君に任せるよ。堅苦しいのは苦手なんだ」
そう言うとイツキはヘンリーと別れて一階のロビーの受付カウンターに向かった。
ヘンリーはイツキの後姿を暫く目で追っかけていたが、諦めた様に階段を上って行った。
イツキはロービー受付の前に広がる長テーブルを並べたレストランに向かった。
そしてテーブルの端っこで食事をしている男の背後から声を掛けた。
「お前、こんなところで何をしている?」
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