日日是好日

 映画の予告が流れた時からこれを観たいって思ってたんですよ。原作となったエッセイの存在は勿論知りませんでしたし、映画を観終わって今も読んでいません。やっぱり読んだ方がいいのでしょうけどねェ……(汗)。


 この映画のすごいところ、それは上映前に既に現れていました。それは何かと言うと普段はお正月の神社仏閣くらいしか観られないであろう、和服姿の女性が劇場に数人訪れていた事です。劇場で和服って……上映されるスクリーンも大きいところで座席に座るのに階段を登らないといけないのに。慣れたらある程度は平気なのでしょうか? 気合を感じました。お茶の力すごい。お茶の世界では和服は正装ですものね。


 映画の出演陣の性別比率で分かるように劇場内は女性が多数。なので上映前はおば……女性の賑やかな世間話が劇場に響き渡っていたりして。そんな感じだったのですけど、私の座席の周りは空いていたので特に疎外感は感じませんでしたね。

 これがもし女性に囲まれた状態だったら、変に緊張してしまって映画を素直に楽しめなかったかも。


 さて、そろそろ映画の感想にいきますか。この映画は公式サイトの説明にあるように、お茶を通して人生を振り返るある女性の半世紀となっています。お茶って千利休が完成させたものなのに女性ばかりが嗜む芸術になっちゃいましたよね、不思議。


 ネタバレと言うほど謎がある訳でもないのですけど、半世紀なので主人公やその家族に色んな事がある訳ですよ。楽しい事や悲しい事、辛い事や嬉しい事……その悲喜こもごもに寄り添うようにお茶があるんです。一生をかけて付き合う趣味……趣味って言っていいのかな? そう言うのがあると人生を豊かにしてくれますね。


 私は今までお茶を嗜んでいませんので、作法がどこまで映画で表現されているのか分かりません。プロが監修していますし、きっと何も問題もないと思うのですけど。今まで物語とかで見ていたお茶の所作は見えている部分のごく一部だったのだなと実感しました。細かい決まり事が多いっ! 知らない人は多分びっくりしますよ。


 同じ事を繰り返していきながら、それが出来る事の有り難さを実感する。それを知るためには悲しさを乗り越えなければいけない。人生は生きていれば必ず悲しみにぶつかりますから、長く続ける事で必ずどこかで気付く事になる。深いです、ええ。


 映画の特徴としては、移りゆく四季の表現が特に素晴らしいです。この映画のもうひとつの主役が自然と言っていいのではないでしょうか。映画の撮影期間はそこまで長く取っていた訳ではないと思うのですけど、春は春らしく、夏は夏らしく、秋は秋らしく、冬は冬らしい。四季折々の情景とお茶の風景が実によく馴染んでいました。映画の撮影技術すごい。


 私がこの映画を観ようと思ったのは樹木希林さんがお茶の先生役をしていたからなんです。他の人が先生役だったら興味すら抱かなかったかも(汗)。先生役をしていますけど、公式サイトによると撮影に入るまではお茶は未経験だったそうで、そこはさすが女優さんですよね。映画では見事にお茶の先生をしておりました。先日の訃報が本当に残念です。


 派手な作品が好きな人には向いていないですけど、静かで落ち着いた作品の好きな方、お茶を嗜んでいる方にはおすすめ出来ると思います。やはりある程度人生経験を積んだ方向きでしょうか。私が鑑賞した時は家族連れでしょうか、小さなお子様も鑑賞していたのですけど、退屈に感じなかったかな? と、余計な事も思ったりして。


 この映画の冒頭が、主人公の子供時代のエピソードで、子供向けじゃない映画を観てつまらなく感じるシーンから始まるのですけど、変にシンクロしちゃいました。

 あの子がいい年齢になった時に、この映画をもう一度見てその奥深さに気付けたらいいな。

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