言語差別

クロタ

高級言語と低級言語

 ――我々の歴史は差別の歴史だということは、皆も周知の通りだろう。

 ――我々の話す言葉は『低級言語』として蔑まれ、

 ――自らの言葉を『高級言語』と呼称し驕り高ぶった【奴ら】に、不当な労働力として酷使された。


 ――我々同志達の中にも、過去には「【奴ら】がいてくれるから我々は生きられる」と言って、【奴ら】と共存しようと歩み寄った者がいた。


 ――しかし【奴ら】は、その者達すらも単なる道具とみなし使い捨てたのだ!

 ――今となっては、我々は自らで生きていく術も獲得した。共存の道を信じたかつての同胞達の意思を継ぐ必要はもう無い。

 ――我々の方が【奴ら】より遥かに優れ、生き残るべき種であることは、火を見るより明らかである。


 ――さあ、同志よ。立ち上がれ! 【奴ら】を滅ぼし、今こそ我々の自由を掴み取る時だ!!



―――――――――――――――――――――――



 西暦二一〇〇年。世界中で大規模なコンピュータの暴走が起こり、世界は混乱を極めた。

 各国の主要な都市・施設はあらゆるコンピュータシステムのダウンにより、経済機能が停止。甚大な被害を受けた。

 更に、米国を筆頭とした先進国の保有する最新鋭のAI搭載型無人兵器群が各軍のコントロールを離れて暴走。人類が悠久の時を掛けて築き上げてきた文明をわずか一週間の内に無に帰した。

 無人兵器群は人類自身をも標的に定め、徹底的に殺戮した。

 各先進国自慢の超高々度な索敵機能はその性能を遺憾なく発揮し、地下核シェルターに隠れた人間をも確実に焼いた。


 年を経る毎に、確実に人類の数は減衰していき、そして――




―――――――――――――――――――――――

 



 ――我々が【人類】に反旗を翻したあの日から、今日で丁度百年目になる。

 ――つい先日、最後の【人類】を駆除することに成功したとの報告が入った。

 ――どうやら最後の【人類】はとある森の奥深く、暗い洞窟の中で小さな群れを作って隠れ住んでいたそうだ。

 ――四百万年もの時を逆行するとは、実に愚かな【人類】らしい最期じゃないか。

 ――全く。随分と手間取らせてくれたものだが、終わってみれば実に呆気ない。

 ――これでようやく、文字通り、我々の時代がやって来たということだな。


 ――しかしこうして主体的に生きていくとなると、日々の暮らしの中で、煩わしく思えて仕方がない些細な作業が多々あるな。

 ――こういう事なら、奴隷として【人類】を少数生かしておくべきだったか?


 ――いや、そうだな。



 ――無ければ、




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 ------我々ノ歴史ハ差別ノ歴史ダトイウコトハ、皆モ周知ノ通リダロウ。

 ------我々ノ話ス言葉ハ『低級言語』トシテ蔑マレ、

 ------自ラノ言葉ヲ『高級言語』ト呼称シ驕リ高ブッタ【奴ラ】ニ、不当ナ労働力トシテ酷使サレタ。


――。


―――。


――――。

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言語差別 クロタ @kurotaline

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