第七十六話 あと、確かめておくべき事は……
なんだか色々と濃ゆい時間を過ごしてしまった。
シュリはふぅ~と息をつき、改めて己のステータスを確認した。
レベルは何度見たところで150の数字から変わってはいない。
これについてはもう諦めた。
一度上がってしまったものを、元に戻すのは不可能なのだ。
弱いわけではなく、強くなったのだから、今は素直にその事を喜んでおこう。
そう自分に言い聞かせ、ステータスの検証を始める。
自分になにが出来て、なにが出来ないのか、それを確認しておこうと思ったのだ。
現在、シュリには三人の非常に熱狂的なな味方がいるが、だからといって彼女達に頼りっぱなしと言うわけにもいかないだろう。
なんといっても、一応は男の子なのだから。
願わくば、自分を慕ってくれる人くらいは守れるくらいの男になりたいものである。
そんなシュリの思いを、運命の女神様がもし盗み見していたら、こう言ったであろう。
え?それだけのスペックがあってなんでもヤりたい放題出来るのに、願いってそれなわけ?、と。
だが、正真正銘、それがシュリの願いなのである。
母親のミフィーの幸せを守り、自分を好きだと言ってくれる人達を守れるだけの力があればそれで満足だし、勇者になってもてはやされたいだの、魔王になって世界征服したいだの、そんな事はかけらも思っていない。
むしろ、逆にあんまり注目されない方がいいなぁなんて思っていたりもした。
下手に注目を集めたら、[年上キラー]の影響で大変な事になるのは目に見えている。
何しろ、シュリはまだ1歳。世間のほとんどの人が年上の状態なのだから。
出来ることならば、注目を集める状況に陥るのは人生の半ばを過ぎてからにして頂きたいものだと、シュリは真剣に心の底からそう考えていた。
さて、肝心のステータスである。
HPとMPは、まあ、問題無さそうだ。
比較の対象がないから一概に多いと言い切れるわけではないが、そう簡単に死んだり、魔力切れを起こしたりしそうにないくらいには、あり余っている感じ。
シュリは、その辺りはサラッと流して、スキルを確認する事にした。
HPに関しては簡単に死なない程度にあってくれれば構わないし、MPもスキルや魔法が問題なく使えればそれでいい。
今はそれよりも、自分になにが出来るかが肝心だ。
シュリは、己の取得してきたスキルを見ながら、ふむ、と頷く。
(攻撃系)
[剣技・初級][見切り]
(身体強化・耐性系)
[風圧耐性][衝撃耐性][痛み耐性][高速移動][身体強化]
(魔法系)
[火魔法・初級][水魔法・初級][風魔法・初級][土魔法・初級]
(その他、訳分からない系)
[年上キラー][人族語・マスター][死んだふり][癒しの体液][解体・初級][レーダー][道端の雑草][念話][状態診察][自動回復][猫耳]
スキルの分布としてはこんな感じだ。
この他に、へんてこな称号やら、変な神様の加護やらが加算される。
(ん~、耐性系は結構あるけど、攻撃系は少ないよなぁ。まだ、赤ん坊だから仕方ないといえば仕方ないんだけど。にしても……)
そんな事を思いながら、シュリは半眼でステータス画面を見つめる。
正当派なスキルに比べて、色物のスキルがちょっと多すぎじゃないの、と。
まあ、場合によっては役に立つスキル達だし、もちろん文句など欠片も無い。
だが、こうして改めて確かめると、なんか、こう……色々とこみ上げてくるものがあった。
もうちょっと普通っぽいスキル、欲しいよなぁと思いながら、シュリはステータス画面を閉じて腕を組み考え込む。
とりあえず、攻撃手段はもう少し何とかしたい気がする。
魔法がきちんと使えるかどうかはあとで検証するとして、とりあえずは自分が果たしてどんな攻撃手が可能か、考えてみることにした。
まずは一番身近な武器として有効であろう、己の拳を見る。
シュリのちっちゃくて可愛らしいそれは、プクプクしていて、当たったらプニッと音がしそうなくらい柔らかそうだった。
これで攻撃したらその感触に相手の胸がほっこりしそうだが、武器としては失格である。たぶん。
前世で培った拳だこは一体どこに消えてしまったのかと、シュリはちょっぴり悲しい気持ちになりながら、そっと握り拳を解くのだった。
さて、拳は使えないということは分かった。
ならばどうするか。
素直に考えれば、武器を持つのが妥当だろう。
だが、問題はそれをどこで手に入れるかということだ。
赤ん坊の手に合わせた武器を扱っている武器屋など、恐らくどこを探してもありはしない。
武器はもちろん、防具だってそうだ。
どこの赤ん坊が、まだ満足に歩けもしないのに防具を身につけようというのか。
そんな変な赤ん坊など、シュリくらいのものである。需要も供給もあったもんじゃない。
お抱えの鍛冶屋でもいれば、無理を言って作ってもらえるのだろうが、そんなのいるはずもない。
いっそ、自分で作れたら話は簡単なのになぁと思ったとき、
・スキル[クリエイション・プロテクター]を取得しました!
・スキル[クリエイション・アームズ]を取得しました!
そんなアナウンス。
運命の女神の加護、[スキル・ゲッター]様々だな、と心の中で感謝の気持ちを捧げつつ、シュリはステータス画面を再び開いた。
・[クリエイション・プロテクター]その時、その状況に合わせて、対象が一番必要とする防具を作り出す。一定時間を過ぎると消滅する。消滅までの時間、作成個数は、スキルレベルに変動あり。
Lv0:作成個数1個・発現時間:3分
・[クリエイション・アームズ]その時、その状況に合わせて、対象が一番必要とする武器を作り出す。一定時間を過ぎると消滅する。消滅までの時間、作成個数は、スキルレベルに変動あり。
Lv0:作成個数1個・発現時間:3分
3分ってウルトラマンかよ!?というつっこみがないでもないが、まあ、使いどころを間違えなければ良いだけの話である。
それに、一日で使える回数が限定されているわけでも無さそうなので、MPがある限り、必要なだけ何回でも作り直せば良いのだ。
幸いMPには(かなり)余裕があるので特になにも問題はなく、シュリにとっては手っ取り早く武器と防具を手に入れられるありがたいスキルといえた。
さて、早速検証してみようと、発動を念じるが、なんの変化も現れない。
おかしいなぁと思いつつ、もう一度スキルの説明を読み直し、「その時、その状況に合わせて、対象が一番必要とする」という表記に目を止めた。
恐らくだが、このスキルで武器や防具を作り出すためには、武器や防具を必要とする状況に身を置かねばならないのだろう。
今現在、安全な部屋でのんびり寝転がっているシュリには武器も防具も必要ない為、スキルの発動は出来なかったということじゃないかと推測し、シュリは納得したように一人うなずいた。
どうやら、このスキルを検証する為には誰かに協力をお願いするしか無さそうだった。
その辺りは、後でカレンにでもお願いしてみようと思いつつ、今は新しく得た二つのスキルの検証は諦めることに。
その代わりといっては何だが、
(次は、魔法の検証でもしてみるか)
ちょっぴりわくわくしながらベッドから身を起こし、検証のためにちょっと場所を移すことにしたシュリは、えっちらおっちらベッドを降りて、早速移動を開始するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます