第三十六話 愛の奴隷
ミフィーは風呂場へ消え、ミフィーに代わって抱っこをしてくれている女の人の様子がおかしかった。
頬を赤くして、潤んだ瞳でうっとりと見つめられ、シュリは内心首を傾げる。
いつものアレにしても、さすがに即効性がありすぎじゃあないか、と。
だが、自分を抱いてくれている人の表情は、例えるなら好感度100%の愛しい相手を見つめる恋する乙女そのもの。
おかしいなぁと首を傾げていると、
・ジュディスの攻略度が100%に達し、愛の奴隷となりました!
やってきたのはいつものアレ。
ってか、愛の奴隷ってなによ?と思いながら、ステータス画面を開いてみる。
すると、
・恋愛状態[カレン(60%)]
・愛の奴隷[ジュディス(100%)(充足度:0%)(状態異常:発情中)]
と、表示が増えていた。
カレンの好感度の上昇も十分早かったと思ったが、それ以上の即効性に驚きしか感じない。
カレンの好感度も、いつの間にやら微妙に増えているし、自分の体質……というかスキルが末恐ろしい。
だが、恋愛状態というのはいいとして、愛の奴隷と言うのはどういう事なのだろうか?
何だか、カレンと違って充足度とか、状態異常とか今までには無かった表示がある。
そんな事を考えていると、脳裏に詳しい説明が浮かび上がった。
・[愛の奴隷]
もう好きで好きでたまらない状態。
だが、決して相手の不利になるようなことはしない。むしろ、相手の利益になるように動くのを生き甲斐と感じる。
対象以外との性交で性欲を満たす事が出来なくなる。
性欲を満たすと能力上昇。充足度により、上昇値は変動する。
対象の態度により状態異常が引き起こされる事もあり、放置すると命に関わるので注意が必要。
どうやら、愛の奴隷状態の人物とエッチをすれば、充足度が上がり、それによって相手の能力がUPするらしい。
しかも、シュリ以外の人とエッチをしても、満足出来ない身体になってしまったようだ。
不可抗力とは言え、何とも申し訳ないことになってしまった。
しかし、まだ赤ん坊の身で、一体どうしろというのか。
望んでないとは言えご主人様になってしまった以上、責任はとってあげたいが、赤ん坊の身体ではどうしようもない。
ナニももちろん勃つ訳ないし、出るモノも出やしない。
少なくとも、後数年は待って貰わなければならないだろう。
そんな事を思いながら、ジュディスを見上げる。
彼女はすっかり発情した顔をしていた。
そりゃそうだ。彼女は立派な大人の女なのだ。愛しい相手を目の前にしたら、発情の一つや二つするに決まっている。
だが、困った。
発情されても、発散させてあげる手だてがない。
しかし、発情はどうやら状態異常に分類されてしまうらしい。
説明によれば、状態異常を放置すると命に関わるらしいから、何とかしないといけないだろう。
流石にこのまま放置して万が一死なせてしまう事にでもなれば、寝覚めが悪いどころでは済まない。
でも、どうにかしようにも意志疎通もままならないし、困ったなぁと思っていると、再びアレがやってきた。
・スキル[念話]を取得しました!
シュリは再度ステータス画面を確認する。そこにはこんな説明が乗っていた。
・[念話]
隷属状態の相手と思念で会話が出来る。
お互いの結びつきの強さにより、念話可能距離が増える。
隷属状態であれば一度に複数の相手との会話も可。
対象は限定されるが、中々の便利スキルだった。特に、今のシュリには有り難いスキルだ。
ジュディスは[愛の奴隷]だから、隷属状態ということでいいだろう。
ならば、このスキルで意志の疎通が出来るはずだ。
シュリはきりりとした表情でジュディスを見上げた。
「はうう……素敵。キュン死にしそう……」
真っ赤な顔で、ジュディスが呟く。
ちょっと意味不明である。
だが、へこたれずに、シュリはジュディスとの念話を試みた。
『ジュディス?僕の声が聞こえる?』
「へ?」
『僕だよ。シュリだ』
「シュリ君……って、ええ!?なんで話せるの!?」
『正確には話してない。考えてることをジュディスに届けてるんだ。口を使うと、流石にまだ上手に話せないからね』
「ふええ……そ、そうなのね。すごいわ……」
『ジュディスも試してみて。貴方となら、声に出さなくても思いは通じるはずなんだ。さ、僕に話したいことを考えてみて?』
シュリはにこっと笑ってジュディスを促した。
その可愛らしい表情に当てられたように、さらに顔を赤くしたジュディスが、
『えっと、聞こえてる?こんな感じで平気かしら?』
そんな風に声に出さずに話しかけてきた。
『もちろん。よく聞こえてるよ』
『すごい。こんなの初めてだわ』
『そりゃそうだよ。僕だってこうやって話すのはジュディスが初めてだよ。他の人には内緒だよ?2人だけの秘密にしたいんだ』
『ふ、2人だけの秘密……』
その甘美な響きに、ジュディスは鼻息を荒くしている。
うっとりとこちらを見つめてくる様子も、潤んだ瞳も、何だか可愛らしかった。
可愛くて、色っぽい。
そんな彼女の様子を見ながら、シュリは早く発情状態を解いてあげないとと思う。
どれだけの時間で彼女の身体に悪影響が出てくるのかは分からないが、分からない以上、早いに越したことはないだろう。
『よし、やろう!』
決意し、自分を納得させるように心の中で呟く。
『え?何を??』
だが、まだ慣れていないせいで、自分に言い聞かせるだけだったはずの心の声は、ジュディスにもダダ漏れだったようだ。
不思議そうに問い返され、シュリは思わず苦笑を漏らす。
それからそっとジュディスにおねだりをした。出来るだけ可愛らしく、彼女の心に響くように。
『ジュディス。キス、しよう』
『キ、キス!?』
『うん。キス、して?』
甘えたようにねだって、シュリはそっと目を閉じた。
ちょっと女の子っぽくなっちゃったかもと、内心汗をかきながら。
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