ほしぞら
晩ごはんを食べたあと、机をかたづけて布団を敷き、寝床の用意をする。
せまい我が家で、ぼくたち家族はいつもくっつくようにして暮らしていた。
寝床の用意をしたあと、いつもならしばらくはむすめとぬいぐるみ遊びをしたり絵本を読んだりして団らんを過ごすのだが、さいきん、なぜか娘は布団にもぐりこんで、ふさぎ込むようになった。
ぼくと妻は、心配した。
「ときちゃん?布団にもぐって、どうしたの?」
「……」
布団に潜り込んだまま、娘は返事をしない。
「……」
「……」
「……」
返事をしないまま、しばらく時間が経って、みたらそのまま寝ている。
そんな夜が3日ほど続いた。
むすめがふさぎ込むのは、決まって晩ごはん終わりのこの時間帯のみで、朝になるとちゃんと元気に保育園に通うし、夕方になると楽しそうに家に帰ってくる。
保育園に聞いても、特にかわった様子はないという。
晩ごはんが終わって寝る前、必ずこの時間に布団に潜ったままふさぎ込む。
理由がわからず、ぼくたちは大いに心配した。
だが、心当たりがなかったわけではない。
むすめは遊びながらごはんを食べる癖があって、そのことについてぼくはむすめを叱っていた。
だから、そのことについて抗議の意味も兼ねて、すねているのだろうと、思った。
確かに、まだむすめほどの年齢の子なら、ちゃんと食べれなくて当たり前だ。
それはぼくも理解している。
だが、だからといって親が何も口出しや注意しないでいると、むすめはいつまでも食べようとするそぶりを見せない。それはやさしめに伝えても、同じことだった。
だから、食べることをうながすように、少し強めに口頭で伝えた。
別にひどい怒りかたをしたわけでもない。
そんなにすねなくてもいいじゃないか。
もういい。
勝手にすればいい。
そのうち直るだろう。
3日目には、ぼくもそう思うようになって、むやみに心配することをやめた。
「おとうさんの小さいころは、お星さまたくさんみえたの?」
4日目の晩、ごはんを食べ終わってむすめが聞いてきた。
「そうだよ。おとうさんの小さいころはねえ。いなかに住んでたから、星がたくさん見えたよ。
おとうさん、そのなかでも天の川が大好きだった。
天の川を英語でミルキーウェイと呼ぶことを知ったとき、本当に牛乳をこぼしたみたいに見えることに感動したもんだよ」
「ときちゃんもお星さまみえるかなあ?」
「前にも言ったけど、ここは明るいからね。難しいね」
「ときちゃん、暗くしてるのにおほしさまみえないの。おとうさんもきてみて」
そういって、娘は布団にもぐりこんだ。
ぼくは、今週の週末晴れていたら、娘を山のキャンプに連れて行ってあげようと決めた。
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