第35話 思い出し涙

哀しい事があったとか、嫌な事があったとか、そう言うわけでもないのだけれど、ある時、突然に頭の中を遥か昔に通り過ぎてきた想い出で、ふと目頭が熱くなる事がある。


ただの情緒不安定なオッサンだと言ってしまえばそれまでなのだけれども、誰しも心に残った出来事や、映画、ドラマ、アニメ、マンガ、小説、ラノベの1シーンというものがあると思う。


 そんな一場面が脳裏にフラッシュバックしてきて、目頭を熱くさせてしまうのである。


 これは不意打ちみたいなものであり、キモイと言われても断続的に現れる思考であるのだから防ぎようが無い。


 ちなみに昨日、仕事中に目頭を熱くさせてくれたのは、「ワンピース」のメリー号との別れの辺りである。


 航海の中で痛んでしまった船はもはや修復のしようがなく、夜中に実体化したメリー号の意志が必死に修復をしていたのだけれども、最期の時が来てしまったシーンである。


 泣ける。


 良く思い出すのは銀河英雄伝説の「魔術師 帰らず」の回である。

 トリプル主人公の一人であるヤン・ウェンリーの最期。


 泣ける


 アニメ「ザ コクピット」シリーズの「音速雷撃隊」も良く思い出す。

 特攻兵器「桜花」の物語。

 出撃前に、戦場まで乗せていってくれる一式陸攻の搭乗員達と共に、戦争がなかった世界を夢想しながら、夜明けと共に出撃していく一連の場面。


 泣ける


 他にも原作となる既存の物語自体にはそんなシーンが無いのに、勝手に物語を作り出して泣けてくる事もある。


 しかも仕事中に。


 いったいどれだけ自分は情緒不安定なんだと不安定なだけに不安になる。


基本的な考え方としては、どうにかなる事は何をしなくてもどうにかなるし、どうにもならない事は何をしたところでどうにかなるわけではないとずいぶん昔から思っているのだけれども、よくよく考えてみれば、もうどうにもならないということだい状況にあると行って差し支えない。


自分自身も歳をとり、当然の様に親も歳をとっていく。

平均寿命で考えてみれば、余生がそれほどあるとは言えないのであり、最後の日はそう遠くないと言えるだろう。


最後の日どころか、寝たきりや痴呆になってしまった時を考えてみれば、さらに時間はなくなってくる。


そう遠くない未来のことを考えれば、不安になるのも仕方がない。

なぜならそんな日々を支えていくことなどは自分自身にできるとは思えないからだ。


というか、無理なのは確定である。


手取り20万でどうしろと。

嫁さんはいないけれど、年老いた両親と逃げて行った姉が残した中卒で引きこもりの甥っ子をかかえるのはむりである。

まだ親父が働いているので何とかなっているけれど、親父が働けなくなった時、自分の給料で四人が生活をするのは無理である。


泣ける。


宝くじでも当たらないかなと思うけど、お金がないので宝くじは買っていない。




 

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