第22話 失踪する生き様




 つい先日、会社で健康診断があった。

 去年も血圧が引っかかったので、今年も引っかかると思っていたら案の定。



 「……高い……ですね……機械ではかれないので、聴診器を使いますね」



 なんの問題もなく終わっていく同僚達を横目に、私の計測は通常の二倍の長さとなった。



 「去年も高かったようですけど、病院に行きました?」



 血圧が高いという事は解っていて、去年の健康診断の結果も「要治療」だったのだけれど、とりあえず、具合が悪いとか、頭が痛いとか、目が回るという事もないので放置していた。

 

 「行ってません」



 「病院、行って下さいね。次は診察です」



 私は促されて、すぐ横にあった仕切の中にある診察ルームに入っていった。



 「調子が悪いとかありますか?」

 

 医師が言う。



 「いま、血圧測定で血圧が高いと言われました」



 医師が記入された数値を見て



 「高いな。去年も高かったね。病院行かないと駄目ですよ」



 いろいろと高血圧に思い当たる部分があるのだけれど、とりあえず聞いてみた。



 「塩辛いものとか、しょっぱいものとか、醤油味とか、塩味とか大好きなんですけど、それですかね?お酒はほとんど飲まないですし、煙草も吸うから、それでしょうか?」



 「たばこはねぇ、吸った特後はあがるけど、ずっと高いというわけじゃないから、食事だね。塩分撮りすぎ。太りすぎ」



 自覚はある。



 と言う結果がでたので、同僚上司、から病院に行くようにと支持されて、健康診断の結果が出る前に、とりあえず血圧が高いのはヤバイと言う事で、命令で病院に。



 会社近くの紹介された病院に。



 本当は、ちょっと大きめの病院の方がいいかと思ったのだけれど、待合室で待たされるのが解りきっているので、小さな病院に。



 診察室に通されて、健康診断で血圧が高かった事を医師に伝え、それじゃあ血圧を測りましょうかと言う事に。



「高いね。ずっと前から高かったでしょ?これは高い。いままでに大きな病気は?」



 などと矢継ぎ早に聞かれる。



 「100メートルダッシュしたって、普通はこんなに血圧はあがらないよ」



 と、医者に言われた時、



 そうか、俺は延々とダッシュをし続け、人生を疾走し続けているのか!!



 などという、アホな妄想をしてしまう。

 こんな事を医者に言ったら、きっと怒られると反省する。



 とりあえず、診察も終わり、日本全国どこでも出されているという定番の高血圧の薬を処方される。

 

 しばらくは一日一錠のみ続け、血圧の下がり具合を要す見て、薬の量を増やすか変えるか決めるのだという。



 あとは次の診察まで、血圧計を買って、毎日血圧を計ってくるように命じられる。

 血圧計は安いので良いと言うが、上腕部にシートを巻き付けるタイプのものなので、手首に巻くタイプより値段が張るのである。



 痛い出費である。

 しかし、その測定が出来ないと、薬の量も決まらない。



 仕方ないかと諦めた時、



 「今日時間あります?とりあえず血液検査で、ホルモン異常かどうか調べる検査をしようと思うんだけども。解ります?ドーパミンって?それが異常に出ると、血圧が高くなるんですよね」



 「解ります」



 それ、グラップラーバキで読んだと思った。

 脳内麻薬を自分の意志で出してた奴でしょ?



 とは、当然のように口にださなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る