第20話 ブルースは加速していく

連続少女誘拐殺人事件の犯人である宮崎勤が逮捕されたのが1989年7月23 日の事であり、逮捕報道の熱が冷め切らない中で8月13-14日にかけて行われたコミックマーケットの会場前で、あるテレビ局の女性レポーターがこう言った。


「ここに10万人の宮崎勤がいます」


今ならネットなどによって、反論もしくは抗議をする事が出来るだろうが、当時はまだガえラケーも、ポケベルも無い時代であり、反論をする事が出来ない時代だった。


放送とは「送りっ放し。言ったもの勝ち」とは良く言ったものである。


一方的に意見を言う事が出来て、レッテルを貼る事が出来て、反論は聞こえないし、反論があると言う事を放送する義務は無い。


何を伝えて、何を伝えないかという編集権はマスコミにあるからだ。


宮崎勤が逮捕された直後、警察が家宅捜索に来るよりも前に、宮崎勤の部屋に父親の承諾を得たマスコミが入り、有名な部屋の中の写真を撮る時に、解りやすいエロ漫画雑誌を目立つ所に配置し、印象操作して撮影したと言う話は、当時現場にいたという記者がネット上で書いていたと思う。エロ漫画雑誌もロリ系ではなく「若奥様の生下着」というタイトルの劇画タッチのものであった。


宮崎勤はロリコン、ペドフィリアだという報道がさんざんされていましたが、宮崎勤の部屋にあったとされるビデオ、漫画のタイトルは複数漏れ伝わっているのにロリ系のそう言うもののタイトルはいっさい見られませんし、裁判の中でも成人女性の代わりとしての少女を標的にしたとされていて、そもそもロリコンであったのかも怪しくなる。


宮崎勤は映像マニアで、特撮ものを多くコレクションしていたそうだが、その中でアニメを実際にどれくらい収集していたのかは不明。


伝えたくない事は伝えなくて良いし、嘘でないなら事実というものを自分たちの解釈で伝える事が出来る。


彼らはこう言う。


「伝える事が使命ですから」


その良い例が災害報道だろう。阪神淡路の時も、東日本の時も、そして熊本でも、その横暴ぶりが問題になっているが、問題になっていると言う事を問題を起こした局の放送の中で見る事はほぼ無い。


阪神淡路大震災の時、TBSの記者が地震発生直後に瓦礫に埋まっている人々を近所の人たちが救出する為に掘り起こしてる前で撮影をしようとカメラの前に立った時に、


「まだ人が埋まってるんだ。カメラを回すくらいなら手伝え。手伝わないなら帰れ」


と言われて泣きながらその場を立ち去った映像を年末の特番で流していたのですが、その時に司会をしていた今は亡き筑紫哲也が言ったのがこちら。


「難しいですよね。報道する事が私達の仕事ですから」


同じ番組内では、家族を亡くしたばかりの男性に病院で声をかけ「今のお気持ちは?」と聞いた記者に、


「アンタは身内を亡くして泣いている人間に、どういう気持ちか聞かないと理解できないのか」


と怒鳴られ、


「そう言う部分も含めてお気持ちを聞かせて頂きたい」


とそんな事を答えている場面がありましたが、その映像はその時に一度だけ見ただけで二度と使われていないようです。


熊本では撮影禁止と看板の立てられている避難所の前で中継をしていたレポーターが避難所に避難中の住民に注意されて放送を止めるとかあったようですが、ここ最近は伝えたい様に伝えられなくなっているようだ。


そんな中でまだ叩きやすくて叩いても問題ないと思っているのが「アニメ」なのだろう。


規制賛成派の議員が


「実感としてそう言うものに影響を受けている事件が増えている」


と言ったらしいが、データーを出せと言われて自分の実感だと答えるような議員はこの国に必要ないだろうと思う。


犯罪白書や統計、過去のデーターを見てみればすぐに解る事なのだけれども、昭和三十年代の方が遥かに未成年者の性犯罪や殺人事件は多く、性犯罪の犠牲になった少年少女が、多かったのは記録として残っている事実である。


国連が日本にアニメや漫画の規制を強く求めているが、この国に規制をしろと言っているほとんどの国の方が、遥かに犯罪大国であって、犠牲になる未成年者が多いというのも周知の事実である。


まずは自国の銃と未成年者の行方不明の問題を解決してから言えよ、アメリカ。


もちろん犠牲になる人がいなくなる事に越した事は無いのだが、報道の仕方がおかしいと思うのは私だけではないだろう。


実感で言うならば「教師」や「母親」による性犯罪や暴行死の方が「オタク」が起こす事件よりも遥かに多いと思うのだけど、マスコミ的にはそれは別の話らしい。


「だって、オタクの方が叩きやすいだモン」


そんな声が聞こえるのは私だけだろうか?


「在日外国人への日本人によるヘイトスピーチを赦さない。けど外国人による日本人へのヘイトスピーチは仕方がないし、オタク(犯罪者予備軍)への根拠のないヘイトは良いヘイト」


と言っている様に聞こえるのは私だけだろうか?


追記


「10万人の宮崎勤」をネットで検索すると、都市伝説と言う記事が多い事に気が付く。


理由が「その映像が、それ以降一度も出てきてない」かららしい。


 当時、その放送をたまたまリアルタイムで見た人間として、そう言う事にしたい人がいるのだろうと思い、伝えたくないことは伝えないのだなと納得する。

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