第10話 景気


 

 世の中はアベノミクスだ、賃上げだとかで何を根拠にかは解らないけれど、景気のいい話も湧いているようだが、そんな景気のいい話とはまったく無縁の世界である。



 しかし、景気の悪い話には敏感な世界でもある。



 だからといって、印刷料金にその値上げ分が上乗せできるかというと、できないと言っておこう。



 理由は簡単である。



 仕事は安いところに流れるのである。



 それって利益が出ていないどころか、赤字だろうと言う値段で仕事を受ける印刷会社が多いのは事実である。



 正確に言うならば、その値段で利益を出せる体制というものを作り上げているからこそ安い値段でできている所もあるのだろうが、きっと利益を出せているところは多くないと思う。



 むしろ、そんな状態で会社が存続していけるというのが不思議で仕方なく思う。



 私が高校を出てすぐに働き始めた会社は、はじめの頃こそまだバブルの中にあったために忙しく設けているようであったが、バブルが弾けてしばらく経ち、会社の経営がヤバくなり始め、同業者の倒産の話が聞こえてきた頃に朝礼でお偉いさんが行った言葉を思い出す。



 「潰れるときは一番最後に潰れよう」



 実際、だいたいそうなったのだけれども。

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