5回目
学校に向かうために家を出る。すると、隣に住んでいる幼馴染みの香織が待っていた。
いつもと同じ、代わり映えのしない日常。そうとも取れる。しかし、俺は知っている。今日がこれで、5回目であることを。そして、そのことに他の誰も気付いていないことに。
「いっくん、おはよう」
いつもと同じ挨拶。しかし、その後には予想だにしなかった言葉が続いた。
「今日って、何曜日?」
俺にとっての昨日、繰り返しを伝えたときに聞いてきた質問だ。香織もこの繰り返しを覚えている?俺は狼狽し、無意識に答えていた。
「金曜日」
しまった。つい、本当のことを言ってしまった。
いや、そうじゃない。繰り返しが嘘とかそんなんじゃなくて……。
香織を横目で見る。最初から変わらず、笑顔のまま。その笑顔があまりにも眩しくて、見ていられなくて、それで、狼狽えて……。いや、眩しいのは香織じゃなくて、その向こうの太陽であって……。
「あれ?いっくん、顔赤いよ?もしかして、また風邪引いたの?」
「ち、違う!」
それだけ言って、俺は一人で学校に急いで向かった。後ろから香織が追いかけてくるけれど、振り返ることなんて俺にはできなかった。
────────────────────────────────
本当に繰り返してるんだったら良かったのにな、ってあたしはちょっと思ってる。だって、そうしたら、きっと、あたしにだけは言ってくれるよね?それって、きっと──
二人だけの世界、だよね?
繰り返す時の中で 星成和貴 @Hoshinari
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