香織

 いつものようにあたしはいっくんの家の前で待ってると、何かを考えている感じのいっくんが出てきた。

「いっくん、おはよう」

「……俺は、今日を繰り返している」

 またいつもの変な妄想でもしてるのかな、と思いながら挨拶したら、思った通りだった。でも、繰り返してるって、どういうこと?よく分からず、あたしは首を傾げながら聞いてみる。

「えっと、またいつもの妄想?」

「違う!今日が終わったと思ったら、また今日になっているんだ!原因は、分からないけど……」

「そっか。とりあえず、学校に行こう?」

 まだよく分からないけれど、あたしはいっくんの手を掴んで歩き始めた。いっくんは少し、驚いたような感じで、でも、あたしの手を握り返してくれた。

「それで、その、繰り返してるって、どういうこと?」

「だから、寝て、起きたら、また同じ日になっていたんだ。今日は、4回目。何故か、同じ日を何度も繰り返しているんだ……」

 あぁ、タイムスリップ?それをしちゃってるってことなのかな?でも、4回目?もしかして……

「ねぇ、いっくん、今日って何曜日?」

「え?だろ?」

 やっぱり。いっくんは月曜日って言ってるけれど、本当は。月、火、水、木。うん、4回目って、こういうことなんだね。いつもの妄想で、こうやって毎日学校に行くのを繰り返してる、なんて言ってるんだ。

 あたしは……、合わせた方がいいのかな?うん、そうしよう。

「うん、そうだね、月曜日だね。えぇと、このことに気付いてるのはいっくんだけなの?」

「他の誰も気付いてる様子はない。俺だけなんだ。だから、香織、この繰り返しから抜け出すのに協力してくれないか?」

 ん~、協力って何するんだろう?先生に怒られるようなことだったら……。うん、そうだよ。そうなりそうだったら、あたしが止めればいいだよ。

「うん、いいよ。何をすればいいか分かんないけど、協力する」

「香織、ありがとう」


 そうして学校に行ったけれど、朝の話だけで何もしなかったから、先生に怒られるようなことにはならなかった。

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