第26話 綾斗の決断


学園祭二日目が始まる。


今日も皆は演劇に向けて気合い入りまくりだ。


私は今日も部活動。


今日もたくさん来てもらえてる。


冬コミの宣伝をしっかり出来ているし、冬コミでは夏コミ以上にCD売り上げたい。


「冬コミにはこちらのドラマCDの第二弾が出ます!ぜひ第一弾と併せてお楽しみください!」


「第一弾買います!昨日、高宮くんの演劇見て高宮くんの演技にとても惹かれたんです、あたし」


「あ、ありがとうございます!!」


部室のPCにはドラマCDの視聴ができるように設定されていて、来てくれた人達は皆ドラマCDを視聴して行く。


「ドラマCD購入希望の方はこちらのURLに飛んで頂き、注文をお願いします」


私はドラマCDが欲しいと言う人にURLの書かれたカードを渡して行く。


さすがに学校内でドラマCDの販売は先生達から色々と規制されそうだったので、通販のURLをお客さんに伝えるという手段に出た。


私が渡すカードに書かれたURLに飛んでもらい、必要な情報を入力してくれた人達にドラマCDを売るという商法だ。


昨日の演劇がかなり評判になったのでとりあえず50枚追加でCDを作り、50人から注文を頂くのが目標だ。


「品切れになる可能性がありますので、お早めに注文お願いします」


「マジか!リカ!今すぐ注文しよ」


「高宮くん人気だからすぐ品切れちゃいそう!!」


この調子だと予定枚数売り切りそうだなぁ。


予定枚数が売れれば、冬コミで販売する数も見直しができる。


夏以上にたくさん在庫が必要になるかもしれない。


創作研究部が有名なサークルになるぐらいにはしたいな。


こうなると。


「お姉ちゃん!」


あ!


「琴莉ちゃん!」


琴莉ちゃんが突然、部室にやって来た。


「やっぱりお姉ちゃん、この部室にいた!琴莉、お姉ちゃん探してたんだよー!」


「琴莉ちゃん、一人で来たの?」


「お母さんとお兄ちゃん達の劇見に来たよ!お母さんお仕事まだあるからお姉ちゃんのとこに行きなさいってお母さんが。このお兄さんが一緒だったから琴莉大丈夫だったよ!」


「このお兄さん?」


「・・・俺だ」


「鬼島先生!?」


鬼島先生が部室に入ってきた。


「全く。チビの世話は苦手なんだがな」


「あ、ありがとうございます」


「お姉ちゃん!琴莉、お姉ちゃんと回りたい!」


「えっと・・・」


「気にするな、桜木。その娘と回るが良い。小学校低学年の相手は俺より桜木が適任だろう。さっさと行け」


確かに鬼島先生はいかにも子供苦手そう。


「わ、分かりました。あ、ありがとうございます。二日連続すみません」


「構わん」


鬼島先生ってやっぱり優しい人なんだな。


「琴莉ねー、食べたいのたくさんあるの!わたあめ、たこ焼き、焼きそば、クレープ・・・」


「琴莉ちゃん、私のお友達と合流してからね?ごめんね」


「大丈夫!お姉ちゃんの友達は琴莉の友達ー!」


「ありがとう!」


やっぱり琴莉ちゃん可愛いなぁ。


「劇、りっくんとってもかっこよかった!お兄ちゃんもね、お姫様みたいで可愛かったよ!」


「劇、二人ともすごく良かったよね。私も昨日見たよ。高宮くんの野獣、琴莉ちゃんは怖くなかった?」


「魔法少女リリアの魔王様みたいでかっこよかった!」


「そ、そっか」


琴莉ちゃんのがメンタル強い!


さすが姫島くんの妹!


「蜜葉ちゃーん!!」


「あ、優里香ちゃん!」


教室の前に着くと、優里香ちゃんが待っていた。


「あれ?その子は?」


「姫島くんの妹の琴莉ちゃんだよ。琴莉ちゃん、私の友達の優里香ちゃん」


「はじめまして。姫島琴莉です。よろしくお願いします」


琴莉ちゃんは優里香ちゃんにお辞儀をして言う。


「よろしくね!めちゃくちゃ可愛い!姫島くん、妹いたんだね」


「うん。優里香ちゃん、琴莉ちゃんも一緒に回っても良い?」


「もちろん!」


私達は一緒に回る事に。


「琴莉ちゃん、綿飴あるよ!食べよっか」


「うん!」


「すごいね。ピンクや青があるよ、蜜葉ちゃん、琴莉ちゃん」


「琴莉、ピンクが良いー!」


「じゃあ、私もピンクにしようかな」


「あたしはブルーにしよーっと」


「えっと、300円」


琴莉ちゃんは金券を肩から下げているうさぎのポーチから出す。


「琴莉ちゃん、金券持ってるんだ?」


「うん!お母さんに買ってもらったの!琴莉、自分でお買い物するの!」


「偉いね、琴莉ちゃん」


「えへへ」


「さすが姫島くんの妹さんだね。しっかりしてる」


「姫島くんのお母さん忙しいから姫島くんが琴莉ちゃんの面倒を見てるんだよ」


「素敵なお兄ちゃんなんだね、姫島くん!」


「うん、琴莉のお兄ちゃんは世界一かっこいいんだよー!」


本当に仲良いよね、姫島兄妹。


「琴莉ちゃんはお兄ちゃん大好きなんだね」


「うん!お兄ちゃんは琴莉と毎日たくさん遊んでくれるんだ。リリアの映画も一緒に行ったんだよ!一緒にリリアを応援したの!」


今流行りの応援上映!


「楽しそうだね」


「うん、すっごく楽しいよ!お兄ちゃんが琴莉よりもおっきな声で応援してて面白かった!」


「ひ、姫島くん・・・」


姫島くん、リリアも大好きなんだなぁ。


綿飴を食べると、私達はたこ焼き、焼きそば、クレープと色々な食べ物を食べながら回る。


「やっべ。マジダイエットしないと」


「私もー」


帰ったら絶対体重測ろう。


「あ、お兄ちゃんだ!お兄ちゃーんっ!」


「琴莉!」


琴莉ちゃんは姫島くんを見かけると姫島くんに抱きついた。


「いっぱい遊んだか?琴莉」


「うん!綿飴、たこ焼き、焼きそば、クレープ!たくさん食べたんだよ!お姉ちゃん達といるとすごく楽しいの!」


「そうか、良かったな」


姫島くんは琴莉ちゃんの頭を優しく撫でる。


「ユイユイがシスコン発動しているわ」


「結斗、琴莉に甘々」


「姫島結斗はシスコンだったのか!」


姫島くんは高宮くん、綾ちゃん、桜小路くんと学園祭を回っていたようだ。


「うるせぇぞ!てめぇら!俺は妹想いな兄なんだよ!」


「はじめまして!橘綾斗でーす!よろしくね、琴莉ちゃん。お兄ちゃんのお友達よ」


綾ちゃんは琴莉ちゃんに笑顔で挨拶する。


「は、はじめまして。姫島琴莉です。よろしくお願いします・・・」


琴莉ちゃんは深々とお辞儀をして言う。


「きゃあああ!可愛い!ユイユイに似ず、めちゃくちゃ良い子」


「綾斗、ぶっ飛ばすぞ」


姫島くんは綾ちゃんを睨む。


「きゃっ!怖ーい!」


「桜小路雅だ。よろしくな。姫島妹!」


「よ、よろしくお願いします・・・」


琴莉ちゃんは桜小路くんにお辞儀をすると、私の後ろに隠れる。


「琴莉ちゃん?」


「姫島妹に悪い事したか?俺」


「桜小路が怖いんじゃない?」


「なんだと?冴島」


「もっと笑顔で挨拶しなさいよ」


「本当に腹立つ女だな、貴様は」


「女子に貴様とか言う!?普通。ありえないっ!」


相変わらず優里香ちゃんと桜小路くんって言い合う仲なんだなぁ。


昨日赤ずきんちゃんでは良いコンビだったけど。


「桜小路くん、大丈夫。琴莉は人見知りなだけ」


高宮くんがフォローする。


「だけど、あたしは大丈夫だったよ?琴莉ちゃん」


「琴莉は年上の男子に緊張しやすい。俺と結斗以外には慣れていない」


優里香ちゃんが言うと、高宮くんが再びフォローした。


「分かる。私もそうだったな。お父さん以外の男子怖かったよ!大丈夫だよ、琴莉ちゃん。綾ちゃんも桜小路くんも良い人だから。ちょっと変わってるけど・・・」


「桜木蜜葉!変わってるとは失礼な!」


「みっちゃんったらもう!」


「こ、琴莉・・・頑張って慣れる」


「うん!」


「みっちゃんは琴莉ちゃんのお姉ちゃんって感じね」


「琴莉、お姉ちゃん大好き。本当のお姉ちゃんになって欲しいなぁ。お兄ちゃんのお嫁さんになって、お姉ちゃん!」


琴莉ちゃんは私に抱きつき、言う。


「ユイユイ、妹を味方につけるとは卑怯ね」


「何でそうなんだよ!」


「ふふっ。私も琴莉ちゃん大好きだよ。でも、まだ結婚とかお姉ちゃんは考えられないかな」


「そっかぁ」


「琴莉ちゃんは可愛いなぁ」


私は琴莉ちゃんの頭を優しく撫でる。


「琴莉、やっぱムカつく」


「わわっ!りっくん!?」


高宮くんはいきなり琴莉ちゃんの頬を引っ張る。


「りーくと?大人気ないわよ」


「琴莉に妬くなよ、陸斗」


「蜜葉ちゃん、大人気だね!」


「へ?」


優里香ちゃん?


「あ、いっけね。俺、部の係行かないと。鬼島にぶっ飛ばされる」


「ユイユイ!あたしも行くわ」


「サンキュー!綾斗!」


「姫島くん、綾ちゃん!大丈夫?」


「桜木は朝に係やったし、大丈夫だ」


「あたし達に任せて!」


姫島くんも綾ちゃんも部活に行くらしい。


「お兄ちゃん、行っちゃうの?」


琴莉ちゃんが姫島くんのシャツの裾を引っ張る。


「琴莉・・・」


「琴莉もお兄ちゃんの部活行きたい!お手伝いする!」


「琴莉・・・」


「良いわよ!一緒に行きましょ?琴莉ちゃん!」


「じゃあね!お姉ちゃん!」


琴莉ちゃんは姫島くん達と部室へ。


何だかんだでお兄ちゃんが一番好きなんだなぁ、やっぱり。


ちょっと寂しい。


「あー!桜小路!あたし、行かなきゃいけないとこあったんだ!付き合いなさい」


「待て、冴島。俺は高宮陸斗と・・・」


「良いから!じゃ、蜜葉ちゃん!またね!」


「ゆ、優里香ちゃん!?」


優里香ちゃんは桜小路くんを連れてどこかへ行ってしまった。


高宮くんと二人にされちゃった!


優里香ちゃん、気使ってくれたんだろうな。


「二人になっちゃったね」


「ラッキー」


「へ?」


「行こ。昨日回れなかったとこ行きたい」


「え?あ、うん」


高宮くんと二人になるの、本当に久しぶりかも。


「何か食うか?」


「いや、さっきたくさん食べちゃったから。太っちゃう!高宮くん食べたいのあれば付き合うよ?」


「大丈夫だ。俺、イカ焼き食べて充分足りた」


高宮くん、少食だ!


「高宮くん、細いもんね」


「女子はやたらと体重を気にするな。理解出来ない」


「や、やっぱり可愛くありたいからじゃないかな。好きな人の理想の女の子でありたいというか」


「好きな人の理想・・・桜木の理想の男子は?」


「え?わ、私?」


「やっぱり桜木の漫画に出てくるような俺様か?」


「どうなんだろう?好きなタイプと実際好きになる人って違うって言うし・・・」


「俺様じゃなくても可能性はある、という事か」


「そ、そうだね」


高宮くんは俺様じゃないし。


「そうか。希望が見えた」


「高宮くん?」


「桜木、どこ行きたい?」


「えっと・・・あっ!占いあるんだ・・・」


「行こ」


「えっ?でも、高宮くん占いとか・・・」


「桜木気になるんだろ?付き合う」


「あ、ありがとう」


なんか申し訳ないなぁ。


私と高宮くんは占いコーナーへ。


「あの子、高宮くんと・・・」


「高宮くんには早苗が一番だっつうの」


「ね、ちょっと痛い目見せてやろうよ」


あれ?今、誰かの視線を感じた気が。


気のせいかなぁ。



「今の運勢とこれからの運勢を見ますね」


教室に入り、占い師の前に座ると、私は机の上に並べられたたくさんのタロットカードを見つめる。


タロット占いなんだ・・・。


「じゃあここからカードを選んでください」


「は、はい!」


なんだかドキドキする。


「はい、じゃあ占いますね。桜木さんの今の運勢は・・・おっ!恋愛運が絶好調ですね。モテ期みたいですね」


「モテ期!?」


「でも、最終的に貴女は一人の男性と結ばれます」


「え・・・」


「その男性は貴女にずっと想いを寄せている身近な人、と出ています」


えぇっ!?


身近な人・・・って高宮くんと姫島くんと綾ちゃんの事だよね?


他に身近な人で浮かぶ人はいない。


「ここの占いガチで当たるらしいよ?」


「ああ、有名なJK占い師なんでしょ?やってる人」


「リカ、ガチで彼氏できたらしい」


私は通りがかる人達の会話を聞き、動揺する。


あ、当たるんだ・・・。


「あ、ありがとうございました」


私達はその場を後にする。


それが本当なら、私は一体誰と結ばれると言うの?


「桜木・・・」


「び、びっくりしちゃった!ほ、本当に当たるんだろうなぁ。有名な人らしいし」


高宮くんはどう、思ったのかな?


あぁ!


占い行かなきゃ良かった!


「私がリア充になれるわけないよ。高宮くん?」


高宮くんは暗い表情をしている。


「高宮くん!」


「わっ!さ、桜木・・・」


「大丈夫?」


「大丈夫じゃない・・・」


「え?まさか気分でも・・・」


「桜木、俺・・・お前に話が・・・」


「いた!陸斗!」


「舞香・・・?」


えっ!


舞香さんが突然高宮くんに抱きついた。


「な、何故ここへ?」


「陸斗に会いに来たの!」


夏祭りの時に会った高宮くんの従姉妹の舞香さん・・・。


「ずっと会いたかったんだから!陸斗と最近毎日LINEしてたから会いたくなったのー!サプライズ!」


毎日LINE・・・。


「舞香、俺は・・・」


「ごめんね、桜木さん。陸斗、借りてくね。二人にさせて」


「おい、舞香?」


えっ・・・


「桜木さんはいっつも陸斗と一緒にいるんだから今日は舞香に譲ってくれるよね?舞香、たまにしか陸斗に会えないんだから」


っ・・・


「わ、分かった。私、やっぱり綾ちゃん達気になるから手伝いに行ってくるね、高宮くん!」


「桜木!!」


私は逃げるように走り去った。


高宮くんじゃない気がする。


占い師さんが言ってた相手は。


高宮くん、舞香さんとはLINEたくさんするんだなぁ。


高宮くんと占いくらいしか行けなかった。


二人で色々回れると思ったのに。


「嫌だ」とか「高宮くんと先に回ってたのは私」なんて言えるはずもなかった。


諦めるって決めたのに高宮くんと回れて調子こいてた。


私は中途半端だ。


舞香さんは真っ直ぐ高宮くんにアプローチしているのに。


だからか舞香さんについ譲ってしまった。


高宮くんも舞香さんとは私より仲良い感じするし、その方が良いよね・・・?


部の皆との関係を守りたくて高宮くんに告白せず、告白してくれた姫島くんや綾ちゃんには中途半端な態度をとっている。


だめだな、私は。


自分の事ばっかり。


そんな私が誰かと結ばれるなんて・・・


気付いたら私は校舎の外に出ていた。


一人になりたかった。


綾ちゃんや姫島くんは真っ直ぐに気持ちを伝えてくれた。


なのに


私は全然頑張ってない。


嫌なイメージばかり浮かぶんだよね。


創作研究部全員がそれぞれ気持ちが噛み合わず、恋愛に振り回されて自然消滅する未来のイメージ。


私が高宮くんに告白したら高宮くんは私を振って気まずい空気になって、綾ちゃんと姫島くんは私が想っている高宮くんに対して複雑な思いを抱えるだろう。


全員が気持ちを噛み合わせられず、関係も作業も上手く行かなくなる気がした。


気まずい空気が暫く流れてしまう。


でも、それが嫌で気持ちを伝えないのは私のエゴなんだろうな。


「桜木さん」


え?


突然、違うクラスの女の子2人組に声をかけられる。


「うちら、先生に頼まれ事しちゃってさ!代わりに頼みたい事があるんだけど」


「な、何?」


「この写真に写ってる衣装、探して持って来てくんない?急遽部で必要になってぇ!体育館倉庫にあるらしいんだけど、うちら別の仕事頼まれてさ」


「体育館倉庫に?」


「そう!ダンボール箱に入ってるらしいから。演劇部、体育館よく使うから体育館倉庫って演劇部の倉庫にもなってるの」


「わ、分かった!D組に持って行けば良い?」


「うん、ありがとう!桜木さん!」


困ってる人がいたら助けなきゃだよね!


私は体育館倉庫へ。


えっと、ピンクのドレス・・・


私は体育館倉庫のダンボール箱をたくさん漁る。


すると


「あれ?みっちゃん」


「あ、綾ちゃん!」


綾ちゃんが体育館倉庫に入ってきた。


「何探してるの?」


「あ、D組の子から頼まれて探し物を。綾ちゃんは?」


「あたしは体育館横の自販機に飲み物を買いに。でも、みっちゃん見つけたから追いかけてきちゃった。あたしも手伝うわ」


「ありがとう、綾ちゃん!」


「何探してるの?」


「ピンクのドレス!ダンボール箱に入って置いてあるらしいの。演劇部の備品が入ったダンボール箱にあるって」


「おかしいわね?演劇部の備品は体育館倉庫に無いはずよ?」


「へ?」


「全部部室で管理しているってみゃーちゃんが・・・」


「部室で?」


すると


いきなり扉が勢い良く閉められる音がした。


えっ?


「うそ!鍵がかかってる!」


体育館倉庫の扉は固く閉じられてしまっていた。


「嵌められたのかしらね」


「そんな・・・誰かーっ!開けてください!!誰かーっ!」


「みっちゃん、多分あたし達の声は届かないわ!その扉は中の音を遮断する造りだわ」


「そ、そんな・・・」


「あたしとしてはラッキーだけどね。部室にいたくない気分だったし」


「綾ちゃん?」


「みっちゃん・・・創作研究部は終わりにしましょう」


「えっ?」


「僕、ついに親から捨てられる事になっちゃったの。みっちゃんにはきちんと話しておこうと思って」


「あ、綾ちゃん!どうして!?捨てられるって!?」


「・・・アメリカにいる叔母の家の子になるって話が我が家で進んでいるのよ。僕は親から見放されたんだ、ついに」


綾ちゃんは悲しい瞳で言った。


「綾ちゃん・・・嫌だよ!そんなの絶対ダメだよ・・・」


「でも、良いんじゃないかな?みっちゃんだって分かってたでしょ?僕達創作研究部は恋愛が絡めばこじれていく脆い仲だって」


「それは・・・」


「みっちゃんを好きな気持ちがある限り、僕は同じ気持ちを抱えたユイユイには嫉妬でひどい嫌悪感を抱く事がある。前みたいな関係ではなくなってきている。みっちゃんと一番仲良しな陸斗にもひどく嫉妬する。でも、それはユイユイも同じ。きっと無理して仲良くしているって感覚になっていくわ、皆が皆」


「綾ちゃん・・・私のせい・・・だよね。皆を振り回してる」


「みっちゃんは何も悪くないわ。恋愛感情は誰にも止める事ができない突然起きる不治の病みたいなもの。だから、これを機に部はおしまい。ちょうど良いのよ。僕もあの息苦しい家から解放されて楽になれる」


「綾ちゃんは部が大事だって前に・・・」


「今は違うよ。ユイユイとみっちゃんの事でいがみ合う自分も、陸斗に嫉妬する自分も嫌。部長の僕がやめにしたいって気持ちになったら仕方ないよね?」


「綾ちゃんは嘘ついてる!本当は転校したくないのに・・・どうして!綾ちゃんはずるいよ!いつも一人で抱え込む!倒れた時も思ったけど・・・」


「みっちゃんに言われたくないよ」


「えっ?」


「部活の皆との友情を壊したくないから自分の気持ちを我慢してる。僕には分かるんだ」


「私は・・・」


「そうやってみっちゃんが我慢したら、僕もユイユイも・・・みっちゃんにガンガンアプローチしづらくなって余計苦しくなるってみっちゃんは分かってる?」


「綾ちゃん・・・」


「創作研究部はこの学園祭の活動をもって終了・・・にする」


綾ちゃんはいつもより低く重い声でそう言った。

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