眼鏡の聖地

4-3 新生鬼 眼鏡の聖地 Sympathy ChapterⅢ "KIZUNA Warriors"

初めから仲間達を怒らせるつもりなんて、泣かせるつもりなんてなかった。

神は、仏は、どこまで俺を見捨てたら気が済むのだろうか。

家族は皆死んだ。

仲間からも忌み嫌われる。

おまけに"アノ姿"が知られてしまえば、俺の社会的地位は絶望的なものとなるのは、目に見えた話だ。

俺の生まれてきた意味はなんだ？

……そう、そうだよな。

俺は王となって、人間を統括するために生まれてきたんじゃない。

俺は、"戦う"ために生まれてきた。

でも、もう人殺しなんてまっぴらだ。

人を殺したところで、何も解決はしない。

それに、もうこれ以上、大切な人たちを悲しませたくない。

でも、俺の生まれもっての過剰な"食欲"と、性欲の代わりに身に着けた"殺欲"は、もはや"不可止"だ。

じゃあどうすればいい？

……"ヤツ"を倒して、信頼関係を戻せばいい。

あぁ、どんな方法を使ってでも、俺は"ヤツ"を消してみせる。

たとえ、どんなに"醜イ戦イ方"であろうとも。

母上。

父上。

兄上。

こんな今だから、言えることがあります。

母上、

父上、

兄上、

生マレテキテ、ゴメンナサイ。

今、ソチラニ向カイマスカラ。

モウ少シ時間ヲクダサイ。

デモ、俺ハ、戦イマス。

母上ヤ父上ヤ兄上ノ代ワリニ、

国ヲ治メテイカネバナラナイカラ。

母上ヤ父上ヤ兄上ノ代ワリニ、

コノ世ノ明日ヲ見ナケレバナラナイカラ。

Ready?

鬼が、目覚める。

"時●け"のタイムリープばりの異次元空間を潜り抜けてここまでやってきた――――――

ぬわ、まぶっ!!

…………ここは？

と、思う間に空を裂く音―――――刃物と床がかち合う音。

ぬわ、あぶっ!!

「O、OPEPA座！？ ズルいぞ、フライングは！！」

「オ――●――ラ――座――！！！

……じゃなかった。

し――に――が――み――！！！！」

「紛らわしいんだよ、仮面取れ。」

「てめぇ死神ナメてんだろ！？ 死神だぞ、しーにーがー……ぐわっ！？」

「うっさい、消えろ。」

「ズルいぞ、不意打ちは！！」

「さっきのお返しだ、バカヤロー！！」

「『まぁいい、コロス。』」

「で、此処何処？」

「説明するのかったるいから、お前が死んでから読者にだけ説明するわ。」

「おいー！！ だからそんなキャラが安易に"読者"とか言っちゃだめぇ！！、……」

「『まぁいい、ゼッテーコロス。』」

「吉、●三、

眠太マンエグいぜ、トランスミッション！！」

「おいー、待てーぃ！！ ツッコミどころ満載なその発言の前に、お前完璧ここが"電脳空間"って知ってるよなぁ、よなぁ！？、」

「『まぁいい、ナニガナンデモコロス！！！！』」

「『じゃあ行くか、闇の咆哮！！！』」

……相打ち。

「………前章までのシリアスな雰囲気ブチ壊しじゃね、俺ら？」

「私を巻き込むなぁ！！！ そもそもお前が私のことを前章の最後でOPEPA座とかいうのが事の発端だろうが！！、」

「『まぁいい、(…………クドイ？、クドイヨネ。by 筆者)』」

少年の名はない。彼こそが眼鏡王国、国王である。

国王、といえども、"飯"の時は王冠を被らない。

マントの色は紫紺。マントの中に来ているのは黒装束は、筋肉もあまり見受けられないような、至ってスリムなボディを浮き彫りにしていた。

少年の夢は、99個の人間の魂と、1個の魔女の魂を喰らい、死神様の武器、デスサ…………

……スミマセン、自重します。

と、いうわけで、少年は今、死神と対峙している。

白仮面。＠はアノ黒布を被ったような、アンナ感じ。

「君という存在を前から気にしていたんだ、眼鏡王。君はそんな比較的がっしりとしていない体つきで、どうやったらあそこまでのパワーを引き出すことができるのかい？」

「"戦はガタイじゃない、ドキョウ。"、これじゃ納得できないか？」

国王は斧の一振りを軽く受け流すと、軽く飛び上がり、この"デュエル"を優位に進めようとする。

「君のその強靭な魔力は生まれつきかい？、それともどこかで見つけたのかい？、その恐ルベキ力を。」

「知らねぇ。

ただこの力を俺が持ったことは、何かの偶然ではなく、運命的なものであったことだけは、日々感じている。」

上から国王は斬りかかるが、斧で軽く弾かれてしまう。

「運命、ねぇ？ 君は運命という、実に夢のような響きがする言葉を、信じるって言うのかい？ 所詮はまだ子供―――――」

「運命なんて響き、信じたくねぇよ。

でもなぁ、"コレ"ばかりは、どうにもいかないらしい。」

国王は着地してすぐさま構えなおすと、再び死神と対峙する。

「くだらん話かもしれないが、君はこの電脳空間の素晴らしさを知らないようだ。」

「はぁ、くだらんなぁ。俺の閉鎖空間の方がよっぽどスゲーや。」

「この空間の制御コントロールは私が握っている。

これがどういう結果をもたらすか、わかるか？」

「さぁ、知らねぇなぁ。」

「こうだ！！」

"さいばーふぃーるどニ不法侵入者ハッケン、さいばーふぃーるどニ不法侵入者ハッケン、タダチニ排除シマス。"

「！！！」

「貴様は今"不法侵入者コンピュータウイルス"扱いだ。

このサイバーフィールドは君の国家が運営するもんなんだろ？

面白いなぁ、国の統治者であるはずの君が、国から除け者にされているんだから！！！」

「………………

ぬわぁ！？」

国王をどんどん壁に押しやる"バリアー"。

「君は実際にサイバーフィールドに入ったことがないだろう？

これがファ●●ウォールだよ！！」

「……くそっ！！」

国王アナログは、国家デジタルに敗れる。―――――――

「鎌鼬！！！」

バリバリバリーン！！

――ファイア●ォー●は砕かれた。

「――――――シナ！！」

「…………。」

「ほう、小娘、お前も一緒だったのか。」

「シナ、どうやってここに？」

「情報操作ハこつサエツカメバ、私ニダッテデキル。」

「何でもありかよ……」

「情報操作ノデキナイアナタハコノ空間を出タホウガイイ。」

「出口は！？」

「アッチ。」

シナは漠然と方向を指差すだけ。

「……わ、分かった。後は任せる！」

少年は、走りには自信があった――――――。

『あいつは、自分自身が"本気"を出さない限り、絶対に死なない。何度でもエスケープを繰り返すさ。

なぜかって？

あいつは預言者――神の御言葉を授かった、それ即ち、神に選ばれた娘だからだよ。』

『神に選ばれたかどうか知らないが、奴は必ず俺が殺す、この、国王の名にかけて。

でもその前に聞きたいことがある。

貴様は…この世のもんでなさそうだし、俺みたいな幽霊でもなさそうだ……俺の、敵だよな？』

『お前……

確か今、シナを殺すと言ったな？』

『あぁ、そうだ、それがどうかしたか？』

『彼女の持っている力は、お前にとっても、私にとっても、後々厄介なものになるだろう。芽は若いうちに摘んだほうがいいだろ？』

「計画が狂ってしまった……しかしながら、君の存在は私にとって邪魔だった。

マズハ貴様ノ命カラ頂戴スル！！」

長斧を構える死神と、――――"闇風之刃"を手にした堕天使。"情報操作ウラワザ"により二刀流だ。

「ジャマ？ ジャマナノハアナタ。何レキエユク運命ナラ……

此処デ消エナ！！　私ガ遊ンデヤルカラ！！

憎キ、疾ク死ネカシ。

飛天疾風突！！！」

「死天暴風斬。」

一方、他の面々は……

「ここ……どこ………？」

それなりに顔立ちの整った現代美少女、月宮ルナその人は、摩天楼と幾重もの高速道路から僅かに垣間見ることができる狭い青空を、暫くただ呆然と眺めていた。

ちなみに彼女はメインヒロインではあるが、筆者としても「最終的に主人公である国王と結ばれる」なんていうendは全く持って用意していないのでご心配なく。

彼女は、気づいたように愛しの彼の名前を叫ぶ。

「イツキー！ どこなのー！？」

「ここだよ、ルナ。」

「どこ、どこなの！！」

「…………下。」

イツキは、ルナのお尻の下敷きになっていた。

イツキ。頭ボサボサの、ヲタクだった野郎。外見からしたら、彼女は彼の何処に惚れたのかと疑ってしまうほどだろうが、彼には、それだけのHeartがある。それだけははっきりといえるだろう。

「大丈夫、イツキ！？」

「大丈夫。ルナは軽いから。これがあのケツデカ女だったらどうなっていたことか……」

「誰がケツデカ女ですって！？」

彼女のボン、キュッ、"ボン"が裏目に出てしまったようだ。体のラインそのままにフィットした漆黒の戦闘用スーツを着用した、その女のコードネームはoir-oke。分かりづらければ「二挺拳銃トゥー●ンド」とでも呼んでいただければよい。性格は―――なかなかクール、のハズなのだが……。

「ぇ、ぁ、………今の、なかったことにできません？」

「姉御さん、許してやれよ、

ドウセ俺ラハコイツラヲヤッチマウンダカラ。」

そして現る、サイボーグ Mrk.3。右腕と左足、そして失われた"視力"を機械で補っている。しかし、初見では誰も彼がサイボーグだと気づきまい。

「Mrk.3。」

「姉御さん、見ててくだせぇ、こんな邪魔者、一吹きですから。」

「Mrk.3………」

「イツキ……。」

毎度の如く、イツキはルナの盾になる。

「おいおい、2度あることは3度あるとかゆーけどよ、いつも国王が来てくれるわけじゃねぇんだぜ？」

「俺は、いつだって本気でルナを守ってる。」

「あっそ。

ジャ、死ニナ。」

轟く銃声――――――。

国王は―――来ない。

しかし、銃弾は二人には当たらなかった。

「姉御！？」

oir-okeが前に立ちふさがったので、Mrk.3は引き金を引く直前に慌てて銃口を頭上に向けたのだ。

「バッカじゃないの……

人殺しが、そんなに楽しい！？

人殺しが、この状況を快方に向かわせるって言うの！？

――――――あなたはまだ理解しきれていなかったのね。

"破壊"は、何も"創造"してくれないことを。」

「姉御…………。」

「私たちは国王を消せば、それでいい。

何も私事に他人まで巻き込む必要はない。」

「…………そうだな。」

「駄目。」

「ハ？」

「国王を殺しちゃ、絶対駄目だから。」

「オイ小娘、せっかく命見過ごしてやったのに、まだたて付く気かよ？」

「国王を殺したら、国王を殺したら…………」

「やっぱり撃っちまうしかないかな。

………イツキ、どかないならてめぇも撃つぞ。」

「ハ？ バッカじゃない？」

「！？」

「イ、……イツ…キ………？」

『国王。そんなことをして楽しいのか？

お前は人を殺す側じゃない。

人を守る側だろーが！！』

『イツキ、止めて！！』

『ほう、イツキ、俺とお前には、暗黙の絶対的服従関係ができ上がっていたと思っていたぜ。

皆、分かってるんだろうな？

惨劇は、まだ終わっちゃいねぇ。

最後は、俺が自分で幕を下ろす。

だがな、どうもその前にやっておかねばならんことがあるようだ。

俺は次男坊として生まれた。

兄上を失った。

父上を失った。

母上を失った。

俺は愛すべき全てを失った。

俺に国王になるための教育は施されていなかった。

俺には戦士、煎じ詰めて言えば"殺人鬼"になるための教育が施されていた。

今、俺は全てを失った。

そう、皆の信頼までも。

ルナ。

君に救ってもらった命をまた無駄にしてしまいそうだ。

許してくれ。

そう、俺はもう命さえもいらない。

この世に残したいものなんて、何も無い。

モウ何モ要ラナイ。何モ……

全員マトメテぶっ殺シテヤラァ！！』

「俺らの生活を滅茶苦茶にしやがった、

何が『暗黙の絶対的服従関係』だ。

あんなイカれたヤツに、誰がついていくもんか！！

あんなやつに、生きている価値はねぇ。

いや……生きてること自体許されねぇことなんだよォ！！！」

「イツキ、止めて！！」

「あぁ、そうか、そうですか、俺はもう生きる資格無しですか。」

「こ、国王……」

ここは電脳空間の出口と通じていたのだ。

「俺はもうお前らの顔も見たくねぇ。でも殺す気はねぇ。

……でも惨劇トラジェディは俺が自分で幕を下ろすから。

その瞬間を、せいぜい愉しみにしてな。」

身を翻すと、国王は当てもなく走り出す。

「ヤツ、自爆テロでも起こす気か？」

「放っときましょう。私たちまで巻き込まれるのは御免よ。」

「イツキ、……お前ら、帰る方法分からないだろ？」

「え？」

「とりあえず施設に来てくれ。

……一時休戦ってことで。」

Mrk.3はそういうと身を翻してそそくさと歩き出す。

oir-okeが近づいてきて、ルナの耳元でそっと呟く。

「何があったか知らないけど……今は彼の言う事に従ったほうがよさそうよ。」

「……ハイ。」

「――――ルナ、ちゃん………」

「？」

「下だ、下……」

「――――――――きゃっ！？

……や、薬師寺、くん！？　いたんだ……」

「『いたんだ』じゃない！ ずっと人の顔面踏んづけといてそれかよ！ ちょっと存在薄いからってそりゃねぇぜ！！ あのなぁ……」

「……まぁまぁ、落ち着いて。キャラ変わりすぎだから。」

ルナとやっくんも、歩を進めることにする。

「ケツデカねぇちゃん。」

「ん？」

oir-okeはあまりにキャラの変わったやっくんを、キャラが変わったとも知らぬまま、自分のキャラは変えまいと、派手なツッコミなしに、ただ振り返って冷酷な視線を送りながら聞き返した。

「此処、何処時どこ？」

「今は5008年9月1日、此処は眼鏡王国第2の首都、バーバリアよ。」

私ニハ、二人ノ兄上ガイタ。

上ノ兄上ハ、私ヲ大事ニ可愛ガッテクレタ。

下ノ兄上ハ、……アマリヨク覚エテイナイ。

私ハアノ頃ノコト自体、記憶ガ断片的ニシカ、私ノ頭ニ残ッテイナイ。

アレハイツダッタッケ？

父上ガ、殺サレタ。

上ノ兄上モ、殺サレタ。

ソシテ……

……ココマデ思イ出ソウトスルト、私ノ脳回路ガイツモしょーとシテシマウ。

イツカラダロウ。

私ハちくわぶーノ真ン中ニイタ。

ソシテ今、化ケ物ト戦ッテイル。

今ノ自分ガ嫌イナワケジャナイ。

今ノ生キ方ニ不満ガアルワケデモナイ。

タダ、自分ガ決メタ路ヲ進ムダケ。

……イヤ。

決メラレタ路ヲ進ムダケ。

何ニセヨ、私ハ、しな。

ソレダケガ、真実。

「竜之涙ダイヤモンド・レイン!!」

「ぐっ!!!」

死神ニ私ノ"命"ヲブツケル。

「ほ、ほほぅ……

これがアリス魔法……

自分ノ魂ヲケズッテ魔力ニ変エル、人類最強ノ魔法。」

「最強？ ソウネ。

"あれ"ヲ除ケバ。」

「そう、"コレ"を除けば。」

「！！！」

「永爆ファイナルクラッシャー!!」

「ヤ、ヤメロ！！」

電脳空間ノ"壁"ガ、崩壊スル――――――

――――――実体化スル、"闇"。

逃ゲ惑ウ、人々。

ワカッテル。ワカッテルカラ。

彼デサエ、運命ニハ抗エナイヨウニ、

自分モマタ、運命ニハ抗エナイト。

いかにも"高等な戦人"の格好をしている青年と、若干"お坊ちゃま"な雰囲気を醸し出している少年。

「ぅ、……痛ってーな、コンニャロー!!」

「おい、人踏みながら叫ぶなっての!!」

ソルと卍F卍が口論を繰り広げていた。

彼らはまだ気づいていないが……ココは眼鏡王国随一の規模を誇るバーバリア中央空軍基地。

「おい、卍F卍、なぜお前がここに……。」

「父上！？」

この純白のスーツを着た、老いぼれた男こそ、卍F卍の父親であり、国王の叔父である元帥Jii-sanである。

「なぜ………いつ地球ココに戻ってきたのだ！？　というより、どうやって！？」

「まあまあ、詳しい話は筆者が記述しない裏でこっそり……

それより、そんなに急いで、何かあったのですか？」

"筆者"などと飄飄と口にする、怖いもの知らず、ソル・ユコー。彼もまた、国王の親戚に当たる。

元帥はソルの意味深な発言を無視して返答した。

「大変なのだ！　怪しい戦闘機が一機、上空を飛び回っておるのだ。」

「それは、どんなやつですか！？」

卍F卍が一歩進み出てさらに尋ねる。

「それが……

あの、布教男、覚えてるか。」

「『いえ、覚えていないことにしたいのですが。』」

初めて息の合う二人だった。

"布教男"、というのは他でもない、アオギリである。

ちくわぶー軍に入隊していながらも、軍の内部で着々と宗徒を増やし続け、そしてちくわぶーの残党にまぎれて地球に舞い戻ってきたのだ。

ヤツが今使っている愛機は、人型戦闘機。戦闘機名は……次シリーズSpiralで後述の予定だ。

「ヤツはまだ大きなアクションを起こしていないが、何かたくらんでいるのは間違いない。

そこで卍F卍、お前にも出動してもらおうと――――――」

「断るっ!!!」

「いや、そこまできっぱりと断られても……」

「第一、僕のスターダスターは例の爆発に飲み込まれたんじゃ……」

「我が息子よ、思い出せ。」

「はぁ……？」

「お前らが爆発に飲み込まれた時に乗っていたのは、

中将のギャラクシーバスターだろうが!!!」

「『……すみません、後で謝っておきます。』」

「分かったなら、早く出動せぇいい!!」

「『了解ラジャー!!』」

「……とは言ったものの、俺、どうしようか。」

「大丈夫。"僕の"スターバスターは二人乗れるから。」

「あぁ、そうなのか。」

「うん。非常器具用倉庫に。」

「………。」

「アオギリィ～、タスティックっ!!」

高層ビルの森の上空を叫びながらたたやみくもに飛び回るアオギリの戦闘機。名前は省略。

「アオギリ、まだ生き残ってるとはなっ!!」

「おぉ、お前も生き残っていたか、ソルっ!!」

その時、卍F卍は初めて気がついた。

勢いで飛び出してはみたものの……

自分とアオギリは、初対面であった。

「噂には聞いていたが、君は大佐ながら急進派のスゴ腕パイロットと聞いているよ、卍F卍!!

大佐なら、もっとゆっくりしてればいいのにな!!」

「それはこっちの台詞だ、布教男!!」

「黙れ黙れ黙れ!! 教祖様と呼べ!!」

「教祖だぁ!?　もう口でずべこべ言っても聞かねぇようだな……

もぅ我慢できん、

3,

2,

1,

(BAAAAAAAAAAAAAANG!!!)

……ぬわ!!」

「なんだなんだ！？」

「わ、私を誰だと心得……あへぇ～」

教祖専用機、墜落。

「なんだ、あのデカブツはあああああああああ!!!!」

――――――実体化する、"闇"。

逃げ惑う、人々。

水の都は、"闇"に支配される。

その"闇"の中央部には、見覚えのある"白仮面"がデカデカと浮遊していた。

"地上"が騒がしい。

何が起こっているんだ！？

ココはバーバリア市内某所地下にある極秘地下通路。

王族や高等軍人のために設けられており、バーバリア内の各重要施設と直線距離でつながっている。

……電気が止まったり、何か別の魔法でテレポーテーションが使用できなくなった時にのみ使うのだが。

「国王……様………？」

俺は暗がりからの突然の呼びかけにビクついた。

恐る恐る振り返る。

「国王様……国王様ですよね!?」

「………お前か。」

いかにもオンナのコーなカンジの眼鏡をかけた、この忍者コスプレ娘は…………

……誰だったっけ？

「cu:nonです！　cu～no～n～！！」

耳慣れない名前コードネームだ。

タイムスリップ前にあんなに殺意むき出しにしていた俺に一切の動揺を見せないとは、それはそれで大した度胸を持った少女であること。……

……これ以上のコミュニケーションは面倒くさいので、無視することにしよう。

「さっきの爆音、何だったのでしょうか？」

「うるさい。」

「ここはどこです？」

「うるさいうるさい。」

「私、これからどうすれば―――」

「あーうるさいうるさいうるさい！」

「あの、何で怒ってるんですか？　私、何も――――」

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさ～い!!!」

………何で俺、こんな怒ってるんだ？

確かに彼女は素直に俺に質問しただけだよな…

オズオズと振り返る。

やべぇ、このコ、半泣きだ。

どうしよう、謝ろうか。

大声で泣かれても困るから、いっそ日本式―――じゃなかった、"眼鏡"式で――――――

――――――ふぇ？

ふぇ？ふぇ？

ふにゃ――――――!?!?!?

これはこれでヨワッタゾォ……

このコムスメ、俺の胸に飛びついて、顔を俺の胸にうずめやがった。(ぁ、ちょっ、鼻までかまないで……)

まぁ誰にも見られる心配がないだけマシなのだが……

――――――いや、そんな心配もあるようだ。いや、心配じゃない。

心配は現実になった。いや、現実になっている、現在進行形で。

「マァ、不埒ナ国王サマ。」

「シナ、お前、いつからここにいた！？」

cu:nonとかいうコムスメは未だに俺から離れようとしない。

「『国王……様………？』当タリカラ。」

「ずっとじゃねぇか！！

っつーか死神はどうした、死神は！？」

「逃ガシタ、現実空間ニ。」

「さっきの爆音はそれか？」

「イヤ、ソレダケジャナクテ……

死神ガ最終形態トシテ実体化シテシマッタ。」

「それって相当ヤバい？」

「ソウトウ。

……ゴメンナサイ、私ノチカラガ至ラナクテ。」

「いや、謝ることじゃねぇよ。

……最終形態って、具体的にどんなカンジ？」

「空ヲ覆イツクス、ミタイナ？」

「相当じゃねぇよ、無茶苦茶やべぇよ!!!

おい、コムスメ。いい加減離れろ、緊急事態だ、もうお前には構ってられ―――」

「同年代にコムスメはないんじゃないですか、コムスメは!!

ってか私にはcu:nonという立派なコードネームが……」

「……おい、同年代のレディ、鼻水たらしながら話すのはヤメレ。

―――ぁ、そだ、シナ！

って、あれ？」

ヤツは、どこに…………？

「ねぇねぇ、」

「何だよ？」

「死神って………？」

「お前には、関係のないことだよ。」

「……えっ！？」

「どうした！？」

「………後ろ!!」

チュド―――ン！！

「……ひゃ、ひゃい――――！？」

「…………あ。」

俺らは間一髪でその青白い何かを避けた……

いや、正式には、俺はコムスメをお姫様抱っこしながらそれを避けた。

慌てて下ろす、俺。

そして、ヤツに向かって、言う。

「お前………ついてきてたのか………。」

「やっと気づいたか……国王。

いつまでも俺がお前になびいていると思うなよ。

俺の生活を台無しにした代償、きっちり払ってもらうからな！！！」

「ケツでか女王様？」

「何？」

あれ、おかしいな、この女の人の顔にムカムカマークが……

「あのデカイの何？」

「え？　TSUUTENKAKUタワーのこと？」

「(通天閣？)……じゃなくて！！

あれですよ、あの黒くてでっかいの。」

「私だって知りたいわよ。」

「え？　自分のおっ●いがなんででかいか知らないって？」

「いっぺん、死んでみる？」

「いえ、遠慮しときます。

……イチオウ、叫んでおきますか。」

「……うん。」

「何じゃありゃ――――！！！」

――――――黒くてでっかい、その高さは天にまで達する、逆円錐型の、ど真ん中に白い顔がついた、得体の知れないもの見たら、こう叫ぶか逃げるしかないでしょ！？

っつーわけで、やぁミンナ、僕は薬師寺ヤクモ、やっくんって呼んでくれ！

……こんな前フリはいいって？

んでもってコイツが僕のガールフレン…………

ってあれ？　ルナちゃん？

そういえば、さっきからイツキもいないな…………

「ぁ、Mrk.3。」 「姉御。聞いてくれ。あの怪物から膨大な反螺旋エネルギー反応が……って、一人？」

「えっ!?　…さっきまでここにいたんだけどな…………。」

「おぅおぅおう!!!　イツキ、眼鏡王国民全ての生殺与奪権を持っているといっても過言ではない、この国王様に刃物を向けるとは、いつの間にそんな度胸手に入れたんだ、あぁん！？！？」

「お前の忘れ物だろ、このバタフライナイフ。持ってきてやったんだよ、感謝しな！！！」

「二人ともやめて……」

「お前は黙ってろ、鼻垂れ女。」

「しゅん…………。」

「いいか、イツキ、今更ごめんなさいだなんて無駄だぜ。俺は既にお前のことをすっかり信じられなくなっちまった。

俺の信頼を失ったものはどうなるか知ってるか？

俺の生贄ディナーだよ、今宵の。」

「生贄か、笑わせる。

お前に喰らわれるようなら、まずここで自殺してやらぁ。

そんでもって俺の全身に回った毒で、勝手に死んどきゃいいものを！！！」

「おいおい、お前が自殺する前に、お前を血の海に溺れさせてあげるよ。俺の剣技、見くびるんじゃねぇぞ？」

「ふ、こっちにはあの"ラノベ"があるんだぜ？」

「飛び道具？　あぁん、こっちにはあの剣先からイカヅチ放つ奴あるけど、どーすんの？」

「でも、いずれにせよ、」

「言いたいことは同じということか。」

「『今まで楽しかった。

そして、

死にさらせや、おらぁぁああああ！！！！！』」

「やめてぇぇぇえええええ!!!!」

……ルナ！？

「いい加減にして、国王！！　あなたのやってることはメチャクチャよ！！

イツキもよ！！　イツキだってさっき聞いたでしょ！？　忘れたの？

殺し合って、何の意味があるのよ！？

……確かに私たちの周辺はグチャグチャになったわよ、恨んでるわ。

でも、国王を殺したからって、元の世界は戻ってくるの！？

国王を説得して、元の世界を返してもらえるの！？

こんな脳なし相手にして、何があるって言うのよ！？！？」

「ル……ナ………？」

俺は黙っていた。

確かにそうだ。

俺は脳なしだ。

俺はさっき一人で何と誓った？

そう、

俺はもう人殺しなんてまっぴらごめん。

もう人間の死ぬ姿を見たくない、

かといって、ここで殺されてたまるか。

敵前逃亡？

いや、敵はコイツラじゃない。

敵はヤツだ。

俺は今から敵の下へ向かいに行くんだ。

そんでもって、あいつを倒す。

その時に、俺の身が尽きようとも、

たとえ命果てようとも、

あいつを倒すために奮戦しての結果なら本望だ。

この惨劇は、自分で落とし目をつける。

　　ソウ、俺之自爆、乃至、自殺デ幕ヲ下ロス。　　

「ルナちゃん！、……イツキ？　どうした、俯いて？」

「はは、なんでもないのよ、薬師寺くん。」

「ぁ、忍者の女の子………。」

「あ。」

「しゅん………。」

忍者の女の子は誰もいない方に顔を上げて、

「はいはい、どーせ私はコムスメですよ……ってあれ？

………ぁの、国王様、知りません？」

「『知らない。』」

その3人の即答ぶり、そして受け流しぶりは、Ｋ１にダムで殺人事件はなかったかと聞かれた魅●ばりだったという。

(※変換ミスじゃないよｗｗ)

「oir-oke。

アフロｓ。

ソル。

諸君に告ぐ。」

卍F卍大佐のゲートが、瞬時に開く。

「こ、これは……」

「伝説の兵器とまで言われた……」

「合体ロボ型戦闘機、アク●リ●ス！！」

「いかにも。君たちは、僕と共にこれに搭乗してもらう。」

「ついに、姉御とガッタイ……」

「真空―――――」

「わぁーー！！　ちょ、タンマ、タンマ！」

「・・・・・・Mrk.3まで、何処に行ったのやら…」

「フレーバー・シャー●チャージ、発進！」

「フレーバー・ビタ●ンガード、発進！」

「フレーバー・ア●ティブダ●エット、発進！」

「フレーバー・●リース●イル、発進！！」

Jii-san：「卍F卍！」

卍F卍：「はい？」

「見間違いかもしれんが・・・・・・

TSUUTENKAKUの頂上に白仮面の男が……」

「！！！！」

なんだ、あの戦闘機は、……見慣れない種類だ。

……！！

俺は危うく飛び降りる――――――。

何だった、今の殺気は！？

一秒遅レテ、TSUUTENKAKU頭頂部ガ一瞬ニシテ捻ジ曲ガル。

―――――いや、あんな明確な殺気じゃない！！

もっと微笑で、鋭利で・・・・・・・

バコ――――ンっ!!

・・・・・・・・・コレだ。

気づいたときには遅かった。

Mrk.3の銃弾は、俺の白仮面だけ砕いて、俺の顔面スレスレを通過していく。

「何の真似だ、国王。」

卍F卍：「空間歪曲値測定不能――――標的、見失いました。」

Jii-san：「何だったんだ、今のは？」

「さぁ、・・・・・・・・・」

oir-oke：「そう、そこを右、じゃなかった、左よ、左！！」

彼女は、地下通路にいたcu:nonと眼鏡付属型無線で連絡を取っていた。

cu:non：「ゲートの暗証番号は………」

「０＊１＊２＊８よ。」

「……何ですか、そのアスタリスクの入れ方は。」

「いいから、急ぎなさい！！」

―――――　卍F卍：「卍F卍だ。司令室、聞こえるか？」

cu:non：「感度、良好です、続けてください。」

「今から合体を開始する。"ガッタイ"のボタンを押してくれ。」

緑のボタンでデカデカと「ガッタイ」と書かれてある。

「・・・・・・単純ですね。」

ポチっ！

ウィーン、ウィーン！！

「にゃ？にゃ？にゃにゃ～～！？！？」

緑のランプが回り、サイレン音が鳴り響く。

――――心配することはないはずだ、合体開始の合図なのだから・・・・・・・・・。

卍F卍：「フォーメーション、F - A - S - B ！！

ガッタイコード、"約束された自由"！！」

金髪アフロ：「これって、例の、『うそ・・・・・・気持ちいい！！』とかゆーやつじゃなかったでしたっけ？

逆に、痛いんですが、ぐあぁぁぁああぁぁぁぁ・・・・・・・・・」

ソル：「これも姉御の愛のカタチなんですねぇ～！！

はぅぅぅうううう～～～～！！！　ボク、もう・・・・」

oir-oke：「んん！？　何、この変な感覚は・・・・・気持ちワ・・・・んぁ、

気持ち・・・・・・ぁ・・・あぁ・・・・・」

卍F卍：「皆、耐えてくれ・・・・・・っく！！

ア●エ●アス・フリー●タ●ル！！」

「なんだ、この見えない壁は？」

やっくんは首をかしげていた。

「ねぇ、イツキ、なんだかさっきと光の色変わってない？」

そう、イツキには思い当たる節があった。

「・・・・・・閉鎖空間？

……まさか――――！！」

外への梯子目掛けて一目散に駆け出すイツキ。

「ちょ、ちょっと待ってよ！！」

追いかけるルナと、――――――置いていかれるやっくん。

―――置いてきぼりになったわけではない。自分が望んで、暫くそこに居座っていたのだ。

「何だか、今まで以上に嫌な予感がする。」

「国王、どういうつもりだ！？」

遠くから俺に問いかける声――――Mrk.3だ。

俺は、閉鎖空間を開いた。

後は、あいつらが来てくれることを望むのみ。

「俺はあいつらが1%でも俺に信頼を寄せていることを信じる。

もしあいつらがこなければ……やはり自分で後始末をしなければならない。」

「…………。

あのバケモンを呼んだ根本の原因はオレだ。オレにだって戦う義務はある。」

「……………俺を殺す前にか？」

「あぁ、一時休戦だ。

俺らの第一目的は一致している――――あの死神の"白仮面を潰す"こと。

……どうせお前も、俺を殺す気、サラサラないんだろ？」

「・・・まぁな。」

「じゃあ今から―――――」

一方、漆黒の逆円錐、内部。

「ちっ、消えやがったか、国王。

・・・・・・またお前か。」

「イイカゲン負ケヲ認メタホウガイイ。」

「誰が認めるものか。

いや、ここまで来たんだ。

色々と邪魔は入ったが、

もうここまで来た。

もう負ける気がしない！！」

「……確カニ貴方ハ人間ニトッテハ計リ知レナイホドノ反螺旋力ヲ有シテイル。

シカシ、ソレデモ敗北ト言ウナノ運命カラ逃レルコトハデキナイ。」

「運命？　何でも運命で片付けられてしまったら、そこまでじゃないか！

私は手に入れたんだ、この世のあらゆる法則にも囚われない最強の力を！！！」

「空間ノ流レハ可逆的ナモノ。数々ノ賢者タチガソレヲ証明シテキタ。

時間ノ流レハ不可逆的。デモ、貴方ト私ハ、個々ノ方法デ時間遡行ガ可能。

デモ、ソンナ私タチデモ、絶対不可逆ノ運命ノ流レニ抗ウコトハデキナイ。

デモ、彼ナラデキル。

ナゼカッテ？ 理由ハ至ッテ単純明快。

彼ハ、"眼鏡"王ダカラ。

貴方ハ、イズレ彼ニ殺サレル運命。

ソシテ私モ……イズレハ彼ニ殺サレル。

コレハモウ、決マリキッタコトナノ。」

「イツキ、どこ、どこなの――！？」

地上に出たルナは、イツキを探していた。

風が吹く。

なびく髪を右手で抑える

――――――めくり上がるスカートを左手で抑える。

青白い光に振り返る。

そのときルナはようやく気付いた。

自分の頭にオレンジ色のリボンが巻かれていることを。

「"ハ○ヒｃの憂鬱の、○門のキャラは一体何なんだ"パーンチ！！！」

ズゴ――――ン！！

「イツキ！！」

閉○空間の力を受け、神○と化したイツキの青白い光が、ルナの背後を照らしていたのだ。

「私もいくわよ！

"ハ○ヒのコスプレをして、悪いか――――！！"」

そのコスから死神に放たれるは、桃色の眩い光。

2色の光線が、"闇"を捕らえる。

「さぁ、どうだ、白仮面！」

卍F卍：「どいてくれ、イツキ！」

「大佐！？」

ソル：

「"灼熱のファイヤーボール"！！！」

○ク○リアス、その右腕から投げられる巨大な炎の球体が、"闇"の中心部を捕らえ、つかの間の光を与える。

イツキ：「…………父さん！？」

oir-oke：「しかも本家と一字違いって、・・・・・・・・・・まずくない？」

cu:non：「いや、それ以前に今までの攻撃、全然キいてないキがするんですケド……ケド？」

Jii-san：「どけ、卍F卍！！」

卍F卍：「父上！」

「主砲、発射っ！！！」

もはや大量生産型となったSG-MG78だが、その主砲の威力は"ファイアボール ＝ オギス"なんぞ比類にならない。

それに追い込みをかけるように―――

cu:non ：「スターダスター大佐専用機、ファイナリスト20、発射準備―――」

卍F卍」：「え！？　ぼっ、僕のスターダスターが何故！？」

「遠隔操作、デス！

3,

2,

1,

FIRE!!!」

oir-oke：「ソルみたいなヘマはやらかさないわ。見てなさい！

"爆乳大爆破"。」

ソル：「うわーお♡♡♡」

「ルナ、俺たちももう一発、撃っとくか！」

「ウン♥」

「効かん効かん、ふはははははははははははははははははははははは！！

何処だ何処だ！

国王は何処だ、あははははははははははははははははははははははは！！！」

国王：「くそ、下手に身動きが取れん。」

Mrk.3：「国王、こっちだ！　急げ！！」

「むぐ、むぐぐぐ……」

「ぬわっ！？」

Mrk.3は足下から聞こえた声に、思わず大声を上げてしまった。

国王：「お前は・・・

・・・・・・・・・・・・・・・誰？」

「ふふ、ふはははは！

聞いて驚くなよ、

私はあのアオギリ教の教祖、アオギリなのであーる！　ふははははははは！！

苦しゅーない、苦しゅーないぞ、んん？」

「『・・・・・・・・・・アオギリ教って、何？』」

アオギリは、上からタライが落ちてきたような気持ちになった。

――――――愕然。

「ｚ、頭が高い！！　何なんだ、貴様のマントは！　私のパクりか、ん！？」

「イチオウ、俺、

眼鏡王国の、国王ですけど、何か御用でしょうか、教祖様？」

「こ、国王・・・・・・様？」

死神：「ミ―――ツケタ――♪」

"闇の咆哮"が、国王たちに襲い掛かる―――――

「ぐべら！！」

――――アオギリの戦闘機が"闇"の攻撃を受け、木っ端微塵となって空を舞う。

国王：「気をつけな、教祖"様"！

下手したら、次の攻撃であんた自信も死にますぜ？」

国王とMrk,3は先を急いだ。

アオギリ：「……………………………………………………。」

教祖"様"は、ただ彼らの走る後姿を眺めていた。

ひとまずビルの陰に隠れ―――――――――

ガッシャ―――ン！！

……ビルが壊され、隠れた意味がなくなり、ア○エリア○司令室へと再び走り出す国王とMrk.3。

「おいおい、容赦なしだぜ、アイツ！！」

「大丈夫。○鎖空間だからいくら建造物を壊されても平気。」

「そういう問題じゃなくてよぉ・・・・・・」

ガッシャ―――ン！！

「ちっ、……一発カマしとくか。」

「えっ、ちょっと、国王………？」

「フルメ○ル・パ○ックっ！！」

※名前は違えど、「ふ○っふ」や「セ○ンド○イド」と同じ技です。

「おいおい、○泉のパクり先の名前、モロに技名にしてんじゃねぇよ！！」

死神：「死ニタイノカナ～？☆」

ガッシャ―――ン！！

「ぬわああっ！！！」

「ご丁寧に"☆"まで付けられちゃった………やっぱ"ふ○っふ"の方がOP曲よかったしなぁ………」

「そういう問題じゃねぇだろ！！　早く行くぞ！！」

ガッシャ―――ン！！、　　ガッシャ―――ン！！、　　ガッシャ―――ン！！

死神：「逃げきりよったか、……………………、

まずは貴様らのどでかい図体から破壊させてもらおうか、んえっ！？」

ルナ：「ここまでやっても無理なんて………」

ソル：「おい、ジジィ、話が違うじゃねぇか!!　何が我が王国の最終兵器だ！？」

Jii-san：「…………卍F卍、例のあれ、ヤッテいいぞ。」

卍F卍：「いえ、その前に父上。

やはり"鬼"には"金棒"なのでは？」

Jii-san：「だと思って、前もって用意しておいたぞ！」

ソル：「ちょっと、"例のあれ"って、軽く受けなが―――」

A&D：「お待たせしましたぁ―――！！！」

アフロ：「・・・・・・B様とC様は？」

卍F卍：「仮病でしょ？」

四賢者Aのエア・グーンと四賢者Dのエア・シエルが変形を加える――――――。

エア・シエルはアクエ○アスの右手に、エア・グーンは左手に持たれる形になった。

「『神よ、我に力を！！』」

A：「必殺神技じんぎ、」

卍F卍：

「"神･竜盾氷虹針りゅうじゅんひょうこうばり"!!!」

D：「必殺神技、」

ソル：

「"神･亀火大車輪きっかだいしゃりん"!!!」

左手の"竜盾"から伸びる"氷虹針"が"闇"の身動きを抑え、本体の芯から凍らせる。

そして、右手から投げられた"大車輪"が"闇"にぶつかった後も永続的に回転し、"闇"を削る。

cu:non ：「効いてる！　効いてるよ!!」

ソル：「ハァ、ハァ・・・・・・・」

卍F卍：「………どうした、ソル？」

「姉御がアノ技を使って以降、ずっと耳元で悶絶する声が、ハァハァハァハァ♡♡♡」

アフロ：「・・・・・・・・・・。」

戦艦の中央制御室から、空を見上げるJii-san。

「彼らではダメだ。あの神器を使うにはまだ足りない。

…………彼らを信じた自分がバカだった。

そう、それは簡単なことだった。

反螺旋力には、反螺旋力で対抗するしかない。」

地下通路で、黒いオーラを測るヤクモ。

「神の力、か。

正直言って、神や仏の力なんて、実質何の役にも立たない。

あの化け物には、金か権力かの方が良く効くかもしれない。

……あぁ、くだらない、くだらない、くだらない！！！」

「私は、屈しない！」

死神は懸命にもがく。

「私は、負けない！」

死神は必死に叫ぶ。

「私の、勝ちだあぁぁぁああああああ！！！」

闇に"炎"が灯り、ノイズ音が街中に走る―――――

私はつい最近まで、ココに捕虜として連れてこられる以前の記憶を失っていた。

私が彼と初めて出会ったのは、スパイとしての訓練初日、バーバリア地下の訓練場でだった。

「やァ、新顔だな。」

「…………。」

当時の私は、眼鏡をかける人間に威圧を感じていたらしく、その日は四六時中黙りこくっていたことをよく覚えている。

「そんな暗い顔すんなよ。

何があったか知らないけど、ここでの生活も悪くないもんだぜ、？」

その男こそ、Makeyであった。

Makeyはいつも新米の私に気さくに語りかけてくれた。

……そりゃ、幾ばくかの下心かそれに順ずるものもあったのかも知れないけど。

私はその男にだけ、少しずつ、少しずつ、心を開いていった。

私は彼と、後にパートナーとして、また同じ異国からの捕虜の兵士として知り合うことになるMrk.3と過ごす時間が増えたのだ。

…………それでもその時は、一人でいるのが一番落ち着いた。その時は。

『ハ○ヒを読んで悪いかぁ―――!!』

そして、私は"死"んだ。

個人情報を検索する端末でMrk.3と二人で色々検索をかけたところ、二人とも国王自身によって親を殺されていることが分かったのだ。

あの少年は、考えることがつくづく分からない。

国王との全面対決との末に、さっきも神人イツキが放っていた青白いによって、私たちは"死"んだ。

そう、私たちの命は、そこで尽きていた。

私たちの人生は、そこで終わったのだ。

終わった、はずだった。

『死○蘇生、one more time!』

私たちは、"墓地"から"特殊召喚"された。

そして、カ○ス―黒○術の儀式によってMrk.3だけがマ○シャン・オブ・ブ○ック・カ○スの生贄となった。

結果的に、二人は生き別れる形となったのだ。

私たちは、どさくさにまぎれて、国王と共に元の時代に帰還した。

母国の女王の死を間近で見た時のショックは、そこまで重くはなかった。

意外と私も"眼鏡"に馴染んていただのかも知れない。

どうも軍隊の中では、私たちの名簿が残っていたらしく、私たちが死んだことは知らされていなかったようだ。

私は"行方知れず"のMrk.3に代わり、cu:nonという忍者コスプレ好きな新しい部下をもらったが・・・・・・そこまで交流はなかった。

私は軍に帰ってくると、真っ先にMakeyのところへ向かった。

そして向こうの時代で見てきたこと、父を国王に殺されたことなどを話した。

すると、Makeyも、政治的な考え方が異端と判断され母親を殺されたことを打ち明けていた。

(ママァと呟きながら俯いて涙を流していたのが印象的だった。)

私たちは、個人的な国王への復讐を誓ったのだ。

SG-XMG1に上手く紛れ込み、遂に戦争真っ只中の月面で私たちが復讐を試みようとしたその時、私たちは、信じられないものを見てしまったのだ。

死神に取り付かれた、Mrk.3の姿だった。

蜘蛛型超兵器に寄生したMrk.3の肉体に取り付く死神と、国王が退治している構図には、圧巻だった。

あの時の毛穴の開き具合は尋常じゃなかった。

『Mrk.3!!』

そして、Mrk.3と国王の体は、爆風に煽られた後、月面に叩きつけられる。

私はMakeyに、ちくわぶー側に回って王国自身に刃向かうことを決意した。

…………あの時、危うくアオギリ教に入りかけていたのは、気付いてからゾッとしたが。

Makeyは、私や彼もほんの少しお世話になった卍F卍大佐に戦いを挑んだが……あえなく傷だらけで戦線離脱。

全治一週間だった。

病室での彼とのあの会話は、恐らく一生忘れることの出来ないものだろう。

『oir-oke。』

『ん？』

『俺、お前のこと、好きだから。』

『今さら何言ってるの。

・・・・・・・・・・・・私もよ。』

(暫くの沈黙)

『俺さぁ。』

『ん？』

『国王に母親殺されちまったけど、家に金がなくて困ってて、責めて自分だけでも経済的に安定した暮らしを求めて、軍隊の、それもスパイ部隊に配属したんだ。

飯食って、寝て、訓練やっときゃ、健康に暮らせるだろうと思ってさ。

でも、実際は違った。戦乱の世の中だもんな。

戦闘に借り出され、傷つく日々。肉体的にも、精神的にも。

俺さァ、だんだん…………

人殺して、何の意味があるんだろうって思うようになったんだ。

殺せば、悲しみが生まれるだけ。

戦争って、何も楽しくねぇんだ。

当たり前のことだけど……だから、むやみやたらと、人を殺す自分が、怖くて、怖くて……。』

『・・・・・・・・・・・・。』

私は、その言葉を頭の中で数百回はリピートしていたように思う。

そして私は、再び戦場に向かった。

Makeyが、ゆっくりと体と心を癒してくれていることを信じて。

『この人たちは、地球を破壊しようとしているんですよ、でっかい大砲で!!!』

cu:nonその言葉で私とソル(ド変態お坊ちゃま)は眼鏡側に寝返った。

Makeyには、後で話すつもりだった。

しかし、Makeyは、死んだ。

私よりもその事実を早く知ったMakeyは、私にそれ以上何も言わずに、最愛の私を置いて、死んでしまった。

Makey……

Makey…………

『殺せば、悲しみが生まれるだけ。』

そう、最愛の人が"殺されれば"、死んでも拭えないほど深い"悲しみが生まれるだけ"。

空を見上げ、ただ呆然とするアオギリ……でもなかった。

アオギリは、己の計画の成功を目の前に、笑いを堪えられずにいた。

「これで閉鎖空間は破壊されるだろう。

＠はアイツをぶっ放して地球もろとも国王を殺しゃ終わりダ。

私は今から最新型ワープ装置で月面基地に向かう。

そしてサテライト・キャノンCX-001.5を放つのだ。

まさかと思ってCX-002の予備、CX-001.5をつくって置いたかいがあった！！

CX-002よりチャージ量が少ないために今日にまで至ってしまったが、これで地上はただ一面の荒野と化し、地下深くや月面基地にいる我が宗徒のみが残る。

イカれた発明家ではあったが、キルターを味方につけておいてよかった！！

あははははっははははっはははははははっはははははは！！！！」

「筒抜けなんだよ。隣の部屋で○やってるくらい筒抜けなんだよ、バカヤローが！！！」

「んな！？　お前はさっきの！？　何処から？　何処から！？」

会話主の正体は、Mrk.3だった。

戦闘機の無線と、Mrk.3の眼鏡に内蔵されている無線で会話しているのだ。

「眼鏡かけてねぇから、どうも怪しいと思って、さっきcu:nonとかいうコムスメから聞いたんだよ、バカヤローが！」

「コムスメじゃありません！　レディです！！」

「うっさい、童顔！！……んで、要はその人工衛星に死神をぶつけりゃいいわけだぁ？」

「！！！！」

「Mrk.3さん、急いで！！　さっきの攻撃でアクエ○アスの合体が解除されました！！」

「何だって！？　すぐいく！　じゃあな、あばよ、教祖"様"！！」

Mrk.3はそこでアオギリとの無線を切った。

アオギリの困り果てた顔を想像しただけで思わず一つニヤリとしまいそうだが、今はそんな場合ではない。

「あんなロボットでどうしようっていうんだ？」

Mrk.3の後ろを走る国王が尋ねた。

「お前、あれはタダのロボットじゃねぇ、紀元前1万年前から王国に伝わる伝説の神器、アクエ○アスだ！

アレこそが、我が王国の真之最終兵器ファイナリストなんだよ！！」

スターダスター大佐専用機が装備している超高性能多弾頭追尾ミサイルの名にもあるように、ファイナリストの名は王国の軍事力の要となる兵器に、誰からとなく付けられる称号、というよりは愛称である。

「まぁ、俺に従えばきっと勝てるから安心しな。」

「・・・・・・。」

「姉御さんとの連絡が再び取れました！　……ソルさんとアフロさんが重症!!　Mrk.3さん、急いで！！！」

しかし、国王は知っていた。

正真正銘の人間最終兵器ファイナリストが誰であるかを。

司令室に入る、Mrk.3と国王。

「Mrk.3さん！……国王様！？」

「俺と国王をソルやアフロさんとトレードしてくれ！！」

「でも、国王様は……」

「行かしてやれ。」

卍F卍からの無線だった。

「でも大佐……」

「ここまでMrk.3が言っているんだ。行かせてやれ。

それと、国王"様"が搭乗するので、緊急事態につき私が臨時に指揮を執る。Mrk.3が死神と人工衛星の衝突を狙っている。狙いが完全に定まった瞬間を仕留めろ。気をぬくんじゃない。市民一人傷つけるな！！」

「卍F卍大佐と国王様、アフロさんと私、そしてソルさんとMrk,3さんを、トレード！！」

「ひゃい～！！」

「何だ何だ！？」

3人の体が青白い光に包まれ、――――――

――――――トレード完了。

「元帥だ。聞こえるか？」

「あぁ、聞こえてますぜ。」

「Mrk.3、お前の眼なら見えるはずだ。」

「人工衛星ですか？　そんなアホな。」

「信じろ、己の力を。信じろ、仲間の力を。信じろ、無限の可能性を。

四人の心を一つにすれば道は開かれん！！」

閉鎖空間が破壊され、変身が解かれたイツキとルナ。

「ルナぁ！！」

「イツキ！！・・・・・・きゃっ！？」

「きゃ――――!!!」

「逃げろ―――――!!」

「何をしておる、君たちも早く逃げんか！！」

「そうだ、そうだよな、ココは大都市だもんな・・・・・・」

「フォーメーション、A - F - B - S ！！

ガッタイコード、"未来への暴走"！！」

「あぅあぅ、あぅ～、こ、コレが、ガッタイなんですね、んぁ、あぁ～！！」

「うるせぇ、そんな声あげるな、コムスメ！！　・・・・・・ん、んがああああ、オレも燃えてきたあああああぁぁぁぁぁぁぁ！！！」

「気持ち、…い……ぃ………イイ…………かも……んぁあ！！」

「ヤメレ……――――ンガ、何カニ、目覚……メ………ル…――――――――っ！！」

「ア○エリアス・アクティ○ダイエット！！！」

「イツキ。」

「うん……どうした、ルナ？」

ルナの眼が、少し潤む。

「私、死んじゃうのかな・・・・・・」

「大丈夫、アイツがきっと何とかしてくれる。」

「・・・・・どうして、アイツのこと信頼できるの？」

「アイツはもう、俺のこと仲間じゃないと思っているだろうけど、死神を恨む気持ちは同じだから。

それに、アイツは強いから。

アイツは絶対負けないから。

仲間だと思ってるやつ以外には、絶対に負けないから。」

ルナがイツキの胸に顔を押しやる。

「・・・・・・心配するな、

たとえ元の世界に戻れなかろうが、たとえ死のうが、俺がずっとお前の傍にいてやるから。」

「ねぇねぇ、この続き、書いてたはずなのに紛失しちゃったんだけど、どうすればいいかな、Mrk,3？」

「自分の胸に手を押し当てて、適当に飽きなおせや、このダホが！！！」

「Mrk.3？　今誰に話してる？」

「国王。」

「嘘つけ。

・・・・・・んで、どうやって倒すんだ？　何か剣でも使うのか？　剣術ならまか・・・・・・ぬわ！？」

「何勝手に剣出してんだよ！！」

「いや、出ちゃったもんは仕方がないもんね、ね、姉御？」

「まぁ、……cu:nonの言う通りね。引っ込めておく。」

「さぁて、元帥のジーさんの言うには、"ビヌルハウス"っつー核となる球体があの"闇"の中にあるらしい。

死神本人もそこにいるみたいだ。そこを攻撃するんだ。

でも、ただ攻撃するだけじゃ駄目なんだ。

イメージしろ。

月にまで思いを馳せるんだ！！！」

「『えぇっと、それ、マジで言ってる？』」

「オ・オ・マ・ジ・ダ！！！

古文書に書いてあった伸びるパンチ嘗めんなよ！！！」

「あぁ、CMでやってたあれね。」

「姉御……少しは口を慎んでくれ。

イクゼ、魂之兄弟ソウルブラザーたちよ、我に力を！！」

「ソウル、」

「ブラザー？」

「・・・・・・何だそれは。」

「熱くねぇんだよ、てめぇら！！　これに命懸けないで、いつ体張るってんだ、んえ！？

見てろおぉ、

"死ぬ気で、打ち抜く、うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！！"」

「ヤバイのです、Mrk.3さんの熱気が、ふわあああぁぁぁぁ～～～」

「・・・・・・・この、熱は・・・・・！！！！！」

「・・・・・・感じる、感じるぞ、・・・・皆の魂の鼓動ビートがっ！！」

『四人の心を一つにすれば道は開かれん』

「心を、一つに、右拳に全ての集中力をかけろ！！」

Mrk.3の右目は超高倍率のズームが可能、どんな獲物も探し出す。

たとえ、それが人工衛星であっても。

「――――――見えた！！

くらえ、　

－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－

無　限　鉄　拳

－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－

拳が伸びる、伸びる、伸びる――――

「人っ子一人犠牲にしてたまるか……」

卍F卍は、前にバーバリアが焼け野原と化したあの日のことを思い出していた。

「頼む、君たちなら、君たちならきっと―――――――」

球体に、拳がぶつかる。

――――――まだ尚、拳は伸びる。

角度は上に、上に、さらに上に・・・・・・・

「『まだまだぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ！！！！』」

「な、言ったろ？」

「すっっごい……」

「アイツは、負けないんだ。」

「『行っっけぇぇぇぇぇぇえええええええええええ！！！』」

ビヌルハウスは、拳は、やがて大気圏を越える。

アフロ：「人工衛星衝突まで、

3,

2,

1,

衝突！！！」

司令室モニターから、お互いの反螺旋エネルギーが爆発した様子が映される。

卍F卍：「良かった・・・・・・」

天から見ていましたか、母上。

僕は、あのような惨劇がまた起こることを、食い止めることが出来ました――――――

「いや、安心するのはまだ早い。」

「君は確か・・・・・・」

「やっくんと呼んで下さい。

この状況は相当まずい。」

アフロ：「何がまずいんです？」

「死神が、反螺旋エネルギーを吸収している。」

「『何だって！？！？』」

「彼ノ言ウコトハ事実ヨ。」

ヤクモ：「シナ、いつの間に！？」

「・・・・・・ソレヨリそるハ何処？　話ガアッタンダケド……」

「ソル？」

卍F卍：「あぁ、あの変態か……あれ、あいつは？」

アフロ：「さぁ……先ほどまで此処にいらっしゃったはずなんですがね・・・・・・」

卍F卍：「それにしても、君が、一体あいつに何のようなんだ？」

「・・・・・・話セバ長クナルケド、イイカシラ？」

「あぁ……ぁ、アフロさん、あなたは引き続きアクエ○アスの状況を確認しておいてください。」

シナは、ちくわぶー政府の幹部の息子であるソルと、物心つく頃からずっと過ごしていたんだそうだ。

これは、シナが、国王とは遠からぬ親戚であるソルから聞いた話。

前国王、すなわち現国王の父上様と、当時の正当な次期王位継承者、すなわち現国王の兄上様は、何者かによって暗殺された。

――――――僕は前国王の従兄弟に当たる父上からそう聞かされていたが、

この時点で、事実とはズレが生じるらしい。

現国王の父上様を殺したのは、現国王の兄上様だったという。

前国王様は、やがて僕の父上と同じ道を歩もうとする国王を激しくいじめていたのだという。

そこで兄上様は弟をいじめる前国王様を見かねて、ある日の前国王様の夕食に毒を盛って殺したのだ。

しかしその深夜皮肉なことに、CLの一派に、兄上様は暗殺された。スナイパーライフルによる銃殺だったというのは、僕も聞いている。

「それでは、母上は前国王様の後を追って、3年後に自殺。それも間違っているのか！？」

「マダソンナコトヲ信ジテイタノ？」

この頃からシナの性格を少しは知っている卍F卍とヤクモは、既に違和感を感じていた。

あの無機質な女が、何か強い感情を抱いているっ！

「女ト言ウ生キ物ハ、男ニ比ベテ意外ト前向キ。マシテヤ数年モ経ッテ後ヲ追ウヨウナコトハナイハズ。

……仕方ガナイ。ココマデ隠シテキタコトモ話ソウ。

ゆこー・そーらーノコトハ知ッテル？」

アフロ：「ユコー・ソーラー？　誰だそれ？」

cu:non ：「ユコーって確かソルさんの名字じゃ・・・・・・」

「ソノ通リ。デモ貴方達、本当ニマダ誰ノコトカ分カッテイナイヨウネ。」

卍F卍「国家機密AAAランクの事項だが、偉大なる錬金術師であり、国王の曽祖父にも当たる、U.K.S.様のことだ。」

「あ、そういえばソルさんと国王様って確か再従兄弟同士だって聞いたことある！」

「国家機密ダッタノ、ソウ・・・・・・。ジャア何故国家機密ダカ分カル？

KハKillerノK。彼ハ本能デ殺人ヲ行ウ殺シ屋ダッタノ。」

cu:non ：「本能で、人を、狩る・・・・・・。」

「ソウ。

発端ハ、彼ガ鉱石ヲ採掘シニ鉱山ニ行ッタトイウコトカラ。採掘中ニ蝙蝠ニ襲ワレタノ。

タダノ蝙蝠デハナイ。魔術士ヤ魔獣ノ血ダケヲ吸ウ巨大蝙蝠。

ソノ蝙蝠ニ吸ワレタ者ハ二重人格ノ症状ガ発生スル。

彼ノ場合、彼ノ体ニ鬼ガ宿ッタカノヨウニ暴レ狂ウヨウニナリ、ヤガテ妻、近所ノ人、親友トイウ具合ニ、次々ト人間ヲ狩ッテ、マダ生暖カイ血液ヲ吸イ尽クシタトイウ。

言ワバ、吸血鬼ネ。

ココデ話ハ変ワルケド、ユコー一族ノ魔術士ハ瞳ノ色ニヨッテ使ウ魔術ノ種類ガ違ウトイウ。

例エバそるノ場合、7月ノ誕生石、るびーノ瞳ヲ持ッテイル。るびーハ火炎魔法ノ傾向ガ強イ。」

卍F卍：「僕も母方がユコーの結構固い筋でね、僕の瞳は9月の誕生石、サファイアなんだ。」

cu:non ：「だんだんポ○モンみたいになってきた……」

「彼ノ瞳ノ色ハぶらっどすとーん……白目部分ガぐれー、黒目部分ガ赤褐色。

・・・・・・ソレダケデモ怪シイデショ？

ソシテ、幸運ナコトニ形質遺伝ハ起コラナカッタ。

・・・・・・アノ少年ガ生マレルマデハ。」

辺りが鎮まり返る。

「ソウ、国王ハ基モトイ、戦人そるじゃートシテ生マレルサダメ。

……ソシテ、本当ニ狩猟者はんたートシテノ野性ガ目覚メテシマッタ。

………トイッテモ、最初ニソノ本能ニ目覚メタノハ3年前――――――」

卍F卍：「ちょ、ちょっと待て！？　何故そんなことをスラスラと言える？

お前が今から言うことは、本当に本当なんだろうな！？」

「大丈夫、私ハ情報操作ハ得意ダッテ言ッタハズヨ？　貴方サエ知ラナイ、国家機密Sらんくダッテ・・・・・・」

全員、キョトン。

「……ゴメンナサイ、主人公ト読者ニシカ言ッテナカッタワネ。…………適当ニ流シテオイテ。

デモモウ皆サンモオ分カリネ。

国王ハ、

無意識ノウチニ、

自分ノ母親ヲ、

殺シテイタノ。

ソシテ自分ノ母親ノ、

顔面ヲ、

顔面ノ皮膚ヲ、

顔面ノ肉ヲ、

眼球ヲ、

頭蓋骨ヲ、

ソシテ脳ミソニ至ルマデ、

頭トイウ頭全テヲ、

己ノ胃袋ニ収メタノ。

彼ノ体ニ宿ッテタノハ、吸血鬼ドコロカ、人喰イ鬼ダッタノ。

向コウノ方ダッテ情報操作ハ得意ダカラ、スグニ自殺ッテコトニナッタワ。

国王ガ肉親ヲ殺スナンテ知レ渡ッタラ、国ガ潰レルノハ目ニ見エルデショ？

彼ハしょっくカラ3ヶ月ホド立チ直レナカッタトイウワ。」

僕は思い出していた。

元CL帝王レンジャーのクローン、レンザーを倒しSG-XMG機内に戻った国王と卍F卍。

「国王様。国王様の執事さんがお呼びです。一回部屋に戻られて…(卍F卍)」

「血が欲しい。(国王)｣

「へ？｣

「お前の生き血が欲しい。」

「え、いや、その…」

「お前の赤い血が欲しいと言っておるのだ!!」

国王は突如鞘から太刀を抜き、すぐさま卍F卍に切りかかろうとした――

確かあの後、料理長にトマトジュースを持ってくるよう国王が脅した、と父上から聞いた。

そして脳裏にある景色が蘇った。

それは、

確かに国王が倒される前に、

一瞬だけ、

見えた、

国王の、

"鬼"の

翼。

「まさか、

俺たちの生活を無茶苦茶にしたのも、それなのか！？」

「ソノ通リヨ、

赤西いつき。」

「『・・・・・・・・・・・・・・・。』」

皆はイツキと、一緒に来たルナを見つめたが、シナ以外は皆、無言だった。

「デモ聞イテ。

彼ハ確カニ自分ニ眠ル"人喰イ鬼"ノ食欲ヲ満タスタメニ、体ヲ鬼ニ委ネタ。

デモ、彼ダケガ原因ジャナイノ。

確カニ国王ハ桂木やよいヲ殺シタケド、

桂木やよいガ谷野ゆうたヲ殺シタノハ、彼ト何ノ関係モナイワ。

ゆうた殺人事件ノ引キ金トナッタノハ、

谷野ゆうた自身ノ浮気ト、

裸体ノ状態デ彼ノ寝室デ寝テイタ水島ゆりや・・・・・・

デハナク睡眠薬ヲ飲マセタMrk.3と、

ゆうたノ寝室マデゆりやヲ運ビ、服ヲ脱ガシタ死神。

確カニ国王ハ桂木はづきヲ殺シタケド、

いつき、貴方ナラ分カルデショ？

はづきハ貴方ニ恋愛感情ヲ抱イテイタノハ確カ。

ソレニ彼女ハ貴方ト知リ合ッタ時カラ軽度ノやく中ダッタ。(Stop、薬物乱用　by 筆者)

ソシテ自分デくすりヲ買イニ行ッタトキ、国王トはづきハタマタマ知リ合イニナリ、ヤガテハ彼女ガ恋愛相談ヲ持チカケルホドノ仲ニナッタ。やく中同士うまガ合ウトデモ彼女ハ思ッタノカシラネ。

マァ、国王ハ買イハシタモノノ、使用シタノハ全テ他人ダッタケド。

ソレニ、彼ガイナカッタラ今ノ自分ハイナカッタ、死ンデイタノヨ。

国王ハ貴方タチヲ殺ソウトシタ？　イイエ、救ッテクレタジャナイ！

アノ時、貴方ガ校舎ニ行カナカッタラ、今ノ月宮るなモイナカッタデショ。

管野けんたト田原ごうダッテ、国王ガイナクテモ、ドッチミチMrk.3カ死神ニ殺サレテル。

コレハ偶然ニ偶然ガ重ナッタ結果。

イツキ、貴方ナラ分カッテクレルワヨネ？」

「俺は・・・・・・・・・・・あいつに・・・・・・なんて・・・ことを・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・ソウイエバ、月宮るなモオ揃イデ、何故ココニ？」

「え、イツキが、『僕らは司令室で見守ろう、そしてもしまた駄目だったら今度は俺らが乗るんだ』って・・・・・・

それに、

実際に合体解除したし・・・・・・・」

「うﾞぁあっっかやるぉおおおおおおおおぉぉぉおおおおおおおおおおおお！！！！！！

何故見てなかった、アフロメタボっ！！」

(※ これは卍F卍の発言です。)

「すみません！！　話につい夢中になって・・・・・・・・・・・」

「そういえば、やっくんここに来ませんでした？

って・・・・・・誰も聞いてねぇや。」

「まずい！　あのロボット、今度は合体解除どころか完全にブッ壊れやがった！！」

自称"教祖"のアオギリは、自分のボンコツロボットのコックピットの中でモニターをバンバン叩いて一喜一憂していた。

「くそ、私のロボットも動け、ちくわぶーの歯科技術の粋を集めて作った、――――――」

「ストップ。」

「ぬわ！？」

「何ですか、貴方は？　最近登場しないキョウ君と性格が似てるような似てないような・・・・・・」

「誰だ？　その大泉キョウってやつは！？」

「コッチの話です。ってか名字言い当ててるし。」

「小僧、危ないからどいてくれたまえ。私を誰だと心得る！？」

「某ハンバーガーショップのマスコットキャラで、赤いアフロで、靴の大きさがハンバーガー4個分で、つい嬉しくなった時と食後に"ら○ら○るー"と叫び、バスケやらスケボーやらスキーやら野球やらも出来て、今ダンスに夢中で"Go､アクティヴ！"の掛け声と同時に自然に体が動いちゃう、――――――――――――」

「ストップストップ！！

何故そこまでド○ルドのことに詳しい！？　お前、あやつに洗脳されたのか！？

確かにあのお方もある意味教祖であるが、"ら○ら○るー"と"アオギリ・タスティック"とは格が違うのだよ、格が！」

「・・・・・・僕はラ○ディ君人形のことを言ってたのにな。」

「"嘘だ！！！"、本家のケ○タッキーおじさんだって白髪じゃねぇか！！

だいたいお前は――――――」

「やっくんです。」

「？」

「薬師寺ヤクモです。やっくんとお呼び下さい、教祖"様"。」

「『あああぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁ！！！！！』」

説明しよう、何故アクエリ○スの合体が解除されたか！？

アクエ○アスの右拳で、死神が作り出しバーバリアを覆った"闇"の核となる球体"ビヌルハウス"(モデル出典：「新世紀ヨシ○イクゾン」より)を直撃、そのまま宇宙空間へと押し出し、故・キルターが開発した地球人殲滅用人工衛星型超兵器CX-001.5と衝突させ、互いの反螺旋エネルギーを爆発させて一緒に消してしまおう、そういう計画だった。しかし、衝突までには至ったものの、死神は何と人工衛星側の反螺旋エネルギーを一滴残らず吸収し、さらに勢力をつけてしまった。

一方、アク○リアス内でも信じられない事態が起こっていたのだ。

ア○エリアスからも、強力な反螺旋エネルギー反応が感知されていた。

よって今度は死神による"外側"からの反螺旋エネルギーと、アクエリ○ス内で発生した"内側"からの反螺旋エネルギーに耐え切れなくなったアク○リアスは、パイロット四者の感情の乱れ如何に関わらず、合体解除は愚か、各パーツがそれぞれ破損してしまったのだ。

――――――ただ一機を除いて。

その一機については、後述することにする。

oir-okeとMrk.3の機体がちょうど隣り合うように落下してきた。

「姉御！　大丈夫か！？」

「えぇ、何とか……」

「お取り込み(戦闘)中失礼。あなたたちに話がある。」

二人に無線が入る――――――ソルだ。

「お前……誰だったっけ？」

「ソル、今何処？」

「下だよ、お二人の下。」

それぞれの機体から降りる二人。

「ソルと言ったな・・・・・・お前、大丈夫か？」

「どうしたの、その眼？」

「これから起こりうる事態に先駆けて、お二人にお話しておきたいことがあって……」

ソルは終始誰かに取り付かれたような、意志の一欠けらも感じられない眼をしていた。

「こんな戦況の中だけど、長々とお話させてもらう。」

吸血鬼となった現国王の曽祖父、ユコー・ソーラーと、とある凄腕スナイパーが決闘になった。

このスナイパーの名は、間　零ハザマ ゼロ。

彼はCL最強の人狩り師マン・ハンターとして当時その名を轟かせていたと同時に、彼は教会の神父でもあった。

吸血鬼 VS 聖職者。その戦いは、結局引き分けに終わり、二人はその戦いで命を絶やしてしまった。

それから数十年の月日が流れ、国王の父・兄の殺人が起こった。

「そして数ヵ月後、君たちは何が起こったか、知ってるだろう？」

えっ？

「『父さんの命日…………えっ！？』」

「じゃあ聞くよ。

君たちのお父さんの名前は？」

「『間　九ハザマ キュウ。

………………えぇっっ！？！？』」

「ようやく気付いてくれたようだね。

間 御一ハザマ オイチ、間 明二ハザマ アクツ」

「アクツ？

…………Mrk.3、あなた、アクツなの！？」

「姉貴？

姉御が姉貴で、姉貴が姉御で…………えっ！！！」

「アクツ・・・・・・・・・・・！！」

「姉貴ぃ！！！」

灯台下暗し――――――探していた人が、本当に近くに、いた。

「・・・・・・本来なら感動的になるシーンだったはずなんだけど、筆者が先にネタバレしちゃったからね、あぁあ。

もしも～し、話、続くよ～

……そのまま聞いてもらってもいいけど。

知ってるよね？　自分たちの父親が、誰に殺されたかということを。」

「『国王。』」

「その通り、君たちの父親、間　九は、現国王によって殺された。

でも、君たちは、国王が行き当たりバッタリで父親を殺した、そう信じてる。

でも、実際はそうじゃなかったんだ。」

二人の母親が蒸発して早2年が過ぎようとしていらある日のこと。その頃、父親が随分長く任務に出かけていたことを、二人はよく覚えている。

実はその頃彼らの父親は、一大プロジェクトを抱えていた。

眼鏡王国王宮占拠。そして、眼鏡王国王家抹消。

しかし、現国王の兄上が当時の国王を殺したことをいち早く知った彼らは、ターゲットを長男に変更。

――――――どちらにせよ、当時隠し子であった現国王は、殺されずに済んだのだった。

「俺たちの…………父さんが……」

「国王のお兄さんを……………」

「『殺シタ………！？！？！？』」

「そして国王は、兄上の敵を果たすため、君たちの父親を・・・・・・・・・・・」

「『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』」

「なぜ国王は君たちを殺さなかったか知っているか！？」

家をズタズタにされた当時の二人は、何が起こっていたのか見当もつかなかった。

「国王様、子供を二人発見いたしました。

彼らも国王様の手で殺しますか？」

「いや、

CLに生まれてきたからと言っても、

まだ彼らは無垢だ、無知無能だ。

再教育さえ施せば、あのスナイパーの子供なのだから、きっと最強の戦士になってくれるに違いない。」

『生まれながらにして両親を失い、身元も分からぬまま異国の地をさまよっていたところに今の国王の父に保護された。

それまで約3年間、Mrk.3の父が趣味で集めていた銃の数々で狩猟を行って暮らしてきたMrk.3。

(銃を使えるまでは木の実採取で食事を済ませた)

エアガンが大半だったが、その中には本物の銃もあったりした。

それでもほとんどがマシンガンや二丁拳銃だったが、一丁だけのスナイパーライフルを見つけ、

その殺傷能力のとりこになってしまったのだ。 』

――――――これが、記憶をほぼ完全に失っていたサイボーグ・Mrk.3に植え付けられた"新しい"記憶であった。

姉弟は引き離された。

姉は怪しい薬を飲まされ、記憶が飛び、肌がやがて黒くなった。そして性格は暗く、冷たくなった。

もう昔の面影など思い出せないほどに。

しかしこれも運命なのか、こうして再びサイカイを果たした。

「国王が一言、救いたいと言わなければ、君たちはもうこの世にいなかった。

当時君たち一家は、CL国内でもかなり野蛮なやつらだと見られていたらしい。

そんな野蛮な父親を、君たちの母親は見捨てたんだ！

国王は、君たちを救ってくれたと言っても過言ではない！！」

oir-okeの脳内に次々と戻ってくる、記憶のカケラ。

思い出した。父親はとんでもなくヤバイやつだった。

思い出した。父親は怒り狂っては病弱なMrk.3に暴力を振るっていた。

思い出した。私は父親からMrk.3を守ろうとしたけど、私は無力にも庇い切れず、遂には父親はある日Mrk.3の右腕と左足を包丁で切り取ってしまったのだ。

思い出した。あの時のMrk.3の悲痛な叫びを。

思い出した。母親の顔を、母親のいつも悲しそうな顔を。

思い出した。血を垂らしながら家から出て行った、母親の後姿を。

そして思い出す。顔に感情が戻ってくる。

頬をとめどなく伝う、涙。

「今、国王が危ない。」

「どういうことだ！？

オレたちはもう心を一新した、そうだよなぁ、アネキ！？

オレたちが国王を救わなければならない！

国王は今どういう状況なんだ！？」

「さっき起こった"合体解除"の原因について説明する。

『アクエ○アスの右拳で、死神が作り出しバーバリアを覆った"闇"の核となる球体"ビヌルハウス"(モデル出典：「新世紀ヨシ○イクゾン」より)を直撃、そのまま宇宙空間へと押し出し、故・キルターが開発した地球人殲滅用人工衛星型超兵器CX-001.5と衝突させ、互いの反螺旋エネルギーを爆発させて一緒に消してしまおう、そういう計画だった。しかし、衝突までには至ったものの、死神は何と人工衛星側の反螺旋エネルギーを一滴残らず吸収し、さらに勢力をつけてしまった。

一方、アク○リアス内でも信じられない事態が起こっていたのだ。

ア○エリアスからも、強力な反螺旋エネルギー反応が感知されていた。

よって今度は死神による"外側"からの反螺旋エネルギーと、アクエリ○ス内で発生した"内側"からの反螺旋エネルギーに耐え切れなくなったアク○リアスは、パイロット四者の感情の乱れ如何に関わらず、合体解除は愚か、各パーツがそれぞれ破損してしまったのだ。

――――――ただ一機を除いて。』

その一機が、」

「国王の乗っていた機体、そういうことだな？」

「あぁ。今は本当はもう時間がない。詳細は後で……生きてたら話す。」

「おいおい、その"詳細"とやらを聞かされないままあの世に逝くなんて、死に切ろうにも死に切れないぜ！！」

「アクエリ○ス内部から反螺旋エネルギーを発したのは、

他でもない、国王だ。」

「さっきからいってる反螺旋エネルギーって……」

「早い話が、あの世を力の根源とするエネルギーよ。」

「何で国王がそんなものを――――――。」

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

…………間ニ合ワナカッタ。

ソル・Mrk.3・oir-okeの3人は、叫び声の聞こえた方――――――国王のいる方への走った。

目的地には、すでに皆の姿があった。

イツキ：「国王、落ち着け、国王！！」p cu:non ：「国王様！ どうかお気を確かに……聞こえていらっしゃいますか、国王様！！」

アオギリ：「おいおい、これ結構マズい状態に入ってるよ、これ……」

ルナ：「あなた、……どちら様で？」

卍F卍：「駄目だ、ずっと呻いてる・・・・・・Mrk.3、oir-oke、ソル！」

ヤクモ：「ヤバい、遂に戻ってきたぞ。」

黒い何かを放つ球体、それこそが"闇"の核、"ビヌルハウス"。恐怖の概念そのものであった"闇"は消えたものの、青空の下にこのような不吉な物体が浮遊しているのは実に気味が悪い。よくよく見れば、こやつの回りのビル軍が崩壊している。

それに……前述した、人工衛星から吸い取った反螺旋エネルギーにより、さらに

所どころ半透明になっている箇所から、中の様子を少し伺うことができる。

「アーーーーーハハハハハハハハハハハハハハハハハ！！！！

愚かな人間共め！　ここに舞い降りた私を、もう倒せる者などいないのだよ！！

ここでビルの残骸と共に、朽ち果てるが良い！！」

「イチイチウルサイワネ。」

「あぁん？ またお前か。いいのかぁ？ このままだとお前の仲間たちが遣られちゃうんだけどなぁ？」

「貴方ハドウセ"彼"ニ殺サレル。ソレハモウ決マッテルコト。ソレニ―――――――

彼ラト私ハ仲間ナンテモノジャナイ。今回タマタマ攻撃対象ガ一致シタダケ。」

「あぁ、そうかい。

じゃあ、奴らにはそろそろ逝ってもらおうか。

ぅうううぉおおおおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！！！！！」

布を裂き、大地を裂くパルス。

耳を劈き、硝子を砕くノイズ音。

「苦しめ、苦しめ、苦しめえええぇぇええええぇぇえええええ！！！！

アーーーーーーーーーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ！！！！」

国王は耳を押さえて、尚唸る。

ヤクモはあまりに邪悪な波動を感じ、倒れこむ。

国王は耳を押さえて、尚唸る。

卍F卍の護身用の拳銃がイカれる。

国王は耳を押さえて、尚唸る。

暁のラノベが真っ二つに裂かれる。

国王は耳を押さえて、尚唸る。

強風に金髪のアフロ(鬘)が舞う。

国王は耳を押さえて、尚唸る。

ルナのスカートが・・・・・・フワッ・・・

国王は耳を押さえて、尚唸る。

oir-okeの戦闘用スーツが・・・・・・・・・・・・ビリ、ビリビリッ・・・

国王は耳を押さえて、尚唸る。

cu:nonの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・喚き声が、ノイズ音に混じって微かに聞こえる。。。

国王は耳を押さえて、尚唸る。

ソルは、そんな光景に鼻血をたらして・・・・・・は、いなかった。瞑想に入る。

国王は耳を押さえて、尚唸る。

「アナタハ、既ニ死ンデイル。」

唸りは、雄叫びに変わる。

「ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱああｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ亜ｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱああああああああああああああああああああああああああああああああああｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱあああああああああああああああああああああああｧｧｧｧぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、、、、、、、、、ｩｩｩｩｩｩｩｩｩｩｩｩｩｩｩｩｩｩｩｩぅｳｳううううｳうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううｩｩィおっぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！！！！！！！！！!!!!!!!!!!!!!!!!!」

Mrk.3は、砕け散る己のスナイパーライフルをよそに、微かに眼を開ける―――――――

――――叫び声の聞こえた方向へ。

――――――――――――硝子の割れる音、いや、

――――――――――――――――――――――国王の眼鏡の、レンズが割れる音。

フレームが、落ちる。

いつしか広がる黒雲から、雷鳴が鳴り響く。

光が、国王を照らす――――――

轟音から気を取り戻すと、

国王がいたは・ず・の場所には、

国王らしからぬ、すらりと伸びた身長。

長く伸びた手足。

長く伸びた指先。

長く伸びた爪。

長く伸びた耳。

いつの間にか金髪も、シナのような銀髪に変わっている。

振り返る国王。

蒼白な肌色。

腕に浮き彫りになる血管。

長く伸びた毒牙。

大きく見開いた、エメラルドグリーンの眼まなこ

でも、見間違えない。

それは、国王。

あの日、あの世界、あの終焉の草原で見た、化け物に変わり果てた、国王。

でもその姿を、存在を、許してはならない。

彼は国王ではない。

肉体は国王のものであっても、

魂は国王ではない。

それは、国王の心の闇に潜む、

"鬼"。

"鬼"は雷によって刀身が砕けた刀を拾い上げ、

体だけ球体と対峙し、

顔は俯いたまま、地を、足下に散らばる"摩天楼の屑"を、見つめていた。

――――――ノイズ音から覚めた卍F卍が、眼鏡の無線からなにか音をキャッチしたのに気付く。

「――――――」

？

「――――――ス」

？？

「――――――ロス」

？？？？

「――――――――――コロス。｣

！！！！！！！

もっと、もっとイヤフォンを近づける。

――― 一気に毛穴が開くのを感じたあまり、眼鏡をつい投げ飛ばしてしまう。

「――――――――――殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 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全身で感じる、

いや、

街全体ニ漂ウ、明白ナ殺意。

「ほ、ホホホホホホ！！！

それが真の姿ですか！？どこかの吸血鬼のコスプレですか？笑えますね、アハ、アハハハハ。」

「言ッタデショ、アナタハ、既ニ死ンデイル。

怖ガリサン」

「黙れ、貴様は黙っておれ！！」

「ソウネ、ココモ直ニ崩レルシ、退散トシマスカ。」

「え……ちょっと待て、おい、お～い！！」

やがて、その"念仏"は、眼鏡を外しても、その場にいる者の"耳元で"囁かれる。

「殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 殺ス 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そして、"念仏"は、国王の肉体を包み込む。

蛹は蝶になり、

繭は蛾になる。

そしてこの"念仏"の殻からは、

漆黒の翼が生えた"鬼"が生まれる。

「ふ、ふふ、ふふふ、

全く分からん、貴様と言うﾔﾂは！！

しかし、貴様にはもう仲間はいない。自分で捨てたもんなぁ。」

「・・・・・・」

「死ニナ。」

ビヌルハウスから伸びる、一筋の光、いや、"闇"。

これが、間近で見る、反螺旋の脅威。

「今の私は地球一個だって楽に破壊できる。

貴様一人など相手じゃないわ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ！！！！

・・・・・・？」

全ては予定調和？

それとも、奇跡？

一枚だけでも全身を覆いつくせるほど巨大な二枚の、"闇"色の翼によって守られた"鬼"は、いよいよ死神に、傷一つついていない顔を上げた。

「ウルサイ。」

「は？」

「サッキカラウルサイ。」

「え？なんて？聞こえねーな。」

「ウルサイッツッテンダロ。」

「え？　うるさい？　え？　まだ私に刃向かおうってのかい？　え？　おい！！―――――」

「ウルサイウルサイウルサイ、ウルサイウルサイウルサ―――イ！！！！！」

グギャオーンッッッ！！！！！

か細くも、確かに球体を貫く、赤い光線。

――――――レーザー刀。

優に１㌔は伸びているだろう。

「そんな、私が負ける、こんな人間の成り損ないに…………」

レーザー刀の刀身が、一気に元のサイズに縮む。

「人間の成り損ない？

あぁそうさ、俺様は人間の成り損ない。

親から邪魔者扱いされ、

その家族を失い、

そして仲間までも失ってしまった。

眼鏡は壊してしまうし、

殺したくもない人間を無意識のうちに殺してしまう。

俺は最低だ。

最悪だ。

糞だ。

トイレについている、糞以外の新手の新生物だ。

でもな、

俺様には一つだけ譲れねぇもんがある。

え、何かって？

見せてやる。

あぁ、見せてやる。

見せてやるとも。

今見せてやっから、

途中でビビって逃げるんじゃねぇよ。

受けな。

これが王国の誇り。

これが眼鏡王国王家末裔の

最後の勇姿だっっ！！！」

―――――― 「 翼生エタラ、天ソラ目指セ。 」 ――――――

国王は翼を広げる。

歩みだす。翔け出す。

一歩、二歩、三歩、

翼をバタつかせる、風に乗る、滑空する。

風を切る。音速。光速。

もう、この肉体なんて、要らない。

鬼に取り付かれた、こんな肉体、もう要らない。

これで幕を閉じよう、惨劇の幕を。

俺の明日なんて要らないから。

仲間と呼べた者たちに、

この地球に、

明日を下さい。

人々が明日に羽ばたける、

大きな翼を下さい。

父上、

母上、

兄上、

今行きますから、

どうか私目の最期の勇姿を、

見届けてください。

僕は今日のために、

生まれてきたのかもしれない。

産んでくれて、

アリガトウ。

国王は滑空しながら、最期の雄叫びとばかりに、己の鼓膜が破れるほどの大声で、言い放つ――――――――

－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－

迅　雷　裂　空　剣

－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－

バチッ、　バチッ、　バチッ。

視界が点滅する。ピントも合わない。

これが、断末魔、か。 体が、宙に舞うように感じる。

そうか、俺、空を飛んでたんだ。

あの"闇"色の翼で、

あの醜い姿で滑空し、

球体ビヌルハウスの真下に来た時鉛直上向きに飛び上がり、

――――それは音速。

球体の目の前に来た時にそれを斬りつけ、

――――攻撃時だけ刀身が驚くほど伸び、

しかもどんどん柄は軽くなる、

レーザー刀が自分の体の一部になったかの如く。

こうして俺様は、球体の反螺旋爆発の爆風に煽られ、その熱と光に体をさらしながら、翼のない肉体を為されるがままにしている。

右手にさえ力が入らず、ついに柄を手放す。

快楽は、絶頂に達していた。

力の入らぬ肉体のはずなのに、無意識のうちにに笑みがこぼれる。

こんな笑顔になれたのは、生まれて初めてかもしれない。

母上。

私は過去を清算しました。

どうか許してください。

そしてあの"闇"と自分の"闇"を"カキ消シタ"ことを、褒めて下さい。

今、そちらに行きますから。

母上。

私は今までの生活も十分満足でした。

生ンデクレテ、アリガトウ。

気持ちいい。

こんな快感、初めて。

三大欲求を全て満たしてもこんな快楽には敵かなうまい。

俺、　もう、　イッちゃっても、　　いい、　　　よ、　　　　な、、、、、、、、、

空を飛ぶ翼を失った少年は、地面に叩きつけられて十数秒後、最後の気力を振り絞って、仰向けのまま、右手で天を指差した。

第九拾七話　　鬼才

それは、雨が激しく降り、風が激しく吹き、雷が激しく鳴る、とある夜半のこと。

兄上の遺影の前に、眼鏡を置き、手を合わせる、俺。

ノック音。

……母上だ。

「勉強、捗ってる？」

「まずまずといったところです、母上。」

俺は国王としての最低限の教養を身につけるため、この時期は王宮に幽閉され、勉強や会議から、テーブルマナーや茶華道、さらには古に伝わる遊びとして、麻雀や遊○王カードまでやらされていた。

「もうすぐ始まるから、キリのいいところで来なさい。」

その日はどこぞの姫君が来ているそうで、所謂舞踏会的なやつもあるらしい。 お見合いや社交ダンスも教養のうち、と家政婦長のクソババァに言われたことがあるが、 …………俺はどちらかというと気品溢れる"プリンセス"よりも貧相ながらもそれなりに顔立ちが整っている"メイド"の方が好きだった。 ダンスは踊れないわけではないが、どちらかといえばHip-Hopなんかの曲で踊る方が好きだ。

・・・・・・剣を振りたい。

今ならきっと柄を握っただけで嬉し涙がにじむに違いない。

そう思いながら、ガーリックライスを口にする――――――

「ぅっ！？」

突然の嗚咽感。

「母上、席を、しばし席を外しま、す・・・・・・」

料理長：「今日の料理がお気に召さなかったのですか？」

「いや、・・・最近体調が悪くてな・・・・・・」

家政婦長：「誰かお手洗いの前まで連れて行ってあげなさい！！」

「いいんだ、家政婦長、・・・・・・・一人に、さ、、、させてくれ・・・・・・・」

そういって俺は部屋を出たんだ。

「どうしたのかしら・・・・・・・」

それっきり、パーティーには参加しなかった。

勉強も手につかず、たまたまコップに注がれていたトマトジュースを飲む。

・・・・・・あれ？

そういえば俺、トマト、大嫌いじゃなかったっけ？

それから記憶が飛ぶ―――――――

記憶が飛ぶ直前に、ノック音がしていたような、そんな気がする。

そして俺の"人間"が再び戻ったのは、若い女の甲高い悲鳴が聞こえた拍子だった。

悲鳴の聞こえたほうを咄嗟に振り向く。

記憶の中に微かに画像が残っている、少女。

それが家政婦だったのか、

例の姫君だったのか、

それとも、

あの日を境に行方知れずの"アイツ"なのかは、はっきりしない。

ただ覚えているのは、

俺と同じ輝きの金髪を、

肩のラインより下まで伸ばしていたこと。

そして、白いワンピースを着ていたことだけだ。

俺はしばし呆然としていると、嗅覚に異常を覚える。

それに一瞬送れて、嘔吐。

己の胃から出てきたのは、

肉片。

無数の肉片。

そして俺の吐いたブツに流れ込もうとしていた、血ダマリ。

恐る恐るその血を発する源に、顔を向ける。

顔は、無い。

首から上が、無い。

何故だ？

・・・・・・何となく察しが着いた。

何故なら、

嘔吐物の中に白イ破片ガ入ッテイタカラ。

手足も数箇所噛み千切られている。

そして、落ちていたネックレスを見て、はっとした。

俺は、

俺は、

「キャァァァァアアアアア！！！！！！」

違う、

違う、

違うんだ、

俺じゃない、

俺じゃない、

俺じゃない！！！

皆が駆けつけて、俺を疑った時には、俺の顔はグチャグチャになっていた。

頬には大粒の涙が伝い、

口からは涎と血の入り混じったのが垂れ、

自嘲気味に高笑いを始める。

目は笑っていないのに、

口だけ笑っていた。

あれから俺はだいぶ成長した。

しかし俺はこうして、大人になれないまま、最期の時を迎えようとしている。

父上が死んだ瞬間から、もしかすると世界は変わってしまったのかもしれない。

でも、この世界に未練はない。

兄上を殺したヤツを殺したって無駄だと分かったのだって、殺した後だったんじゃないか。

……だから"あの二人"を救ってやったのだが、このザマだ。

俺は極楽浄土で、平民と同じ、温和な生活を送りたい。

もし逝き先が地獄であれば、俺が閻魔を殺して、今度は俺が閻魔になろうか？

俺は向こう側の世界で、仲間を作りたい。

普通に皆と暮らし、

普通に友達を作り、

普通に恋をして、

普通に円満な家庭を築き上げたい。

・・・・・・・流石に子供は産めないだろうが。

俺も、俺の肉体も、そして俺の"鬼"も、もうじき死の"闇"に沈む。

さらば、暗鬼悪霊め・・・・・・・ざまあぁみろ！！！！

国王、バーバリアの摩天楼の微塵の中、意識不明の重体。

第九十八話

突然、体に激痛が走る。

俺の視界に飛び込んだのは、"闇"ではなく、まぶしいばかりの"光"だった。

視覚を取り戻した俺は、起き上がる。

ここは、極楽浄土？

・・・・・・いや、もう自分に嘘をつくのは止めにしよう。

もう気付いてるじゃないか。

痛みを感じられた理由。

光を感じられた理由。

起き上がれた理由。

今も尚、小鳥のさえずりが聞こえてくる理由。

死んでない。

死んでない。

死んでない。

くっそおおおおおおおおおおお！！

第九十八話＜最終話＞　　絆（イト）

俺ハ今、生の"光"ニ包マレテイル。

俺ハ消エナイ、ダカラ、"鬼"モ、消エナイ。

"鬼"ハ、昨日ヲ持ッテ消サレナケレバナラナカッタ。

"鬼"ガ消エルトイウコトハ、自分ガ消エルトイウコト。

自分ハ、今スグ消エナケレバナライ。

コノ世界ニ平和ヲ取リ戻スタメ。

自分ハ、今スグ消エナケレバナライ。

自ラ"惨劇ノ幕ヲ下ロス"タメニ。

自分ハ、今スグ消エナケレバナライ。

誤リニ逝クト、家族ニ約束シタカラ。

逝コウ、俺ノイルベキ場所ヘ。

腕についた点滴を外し、

机からフルーツナイフを取り出し、

朝靄のバルコニーに出て、

そのフルーツナイフの刀身を胸にかざし――――――――

見えない"絆イト"が、0,1秒だけ、俺の死期を遅らせようとしたのが、功を奏したのか。

耳元で、金属が落ちる音。

それは、手元から零れたフルーツナイフのそれだった。

血は、ない。

あり得ない方向から自分の肉体に加わった力と、

俺の約１メートル先に聞こえる荒い息の主は、

Mrk.3、その人だった。

自分ハ、今スグ消エナケレバナライ。

自分ノ死ヲ食イ止メルモノハ、排除セネバナラナイ。

フルーツナイフの柄に手を置こうとする俺の左頬に、また予期せぬ力が加わる。

・・・・・・よりにもよって拳グーか。

「負けた負けた、俺の負けだ。

やっぱりお前の拳にゃ敵わんよ。

"無限鉄拳"は、そりゃもう惚れたから、あぁ。

まだ恨みを持ってるなら、その世界一の拳で、俺を死ぬまで――――」

「ヴぁっかやるぅううおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！！！！！

どうしてだ、どうして教えてくれなかった！？

どうしてオレラが姉弟であることを教えてくれなかった？

どうしてオマエのアニキがオレのオヤジに殺されたことを教えてくれなかった？

どうしてオマエがそんな悲しい運命を背負っていることを教えてくれなかった？

どうしてオマエが、オレラをオヤジから救ってくれたことを教えてくれなかった！？

どうしてだ、どうして死のうとした！？

どうして"オニ"を殺すためにオマエも死のうとした？

どうしてオマエの国を残して死のうとした？

どうして誰にも言わずに死のうとした？

どうして、オレ達"魂之兄弟ナカマ"を置いて、オマエ一人死のうとしたんだああぁぁあああ！？！？」

「なか・・・・ま・・・・？

俺はお前を、一度は殺してしまったんだぞ？」

「そんなのおアイコじゃねぇか！！」

「俺は、暁やルナやヤクモの生活を、ぐちゃぐちゃにしてしまった・・・・・・」

「不可抗力だ、正当防衛だ、何も"ニンゲン"のお前が悪いわけじゃない！！」

「俺はまた、無意識のうちに、"仲間"を殺してしまうかもしれないんだぞ！？」

「その時には、オマエが殺す前に、オレがオマエのツラをまたぶん殴って、"オニ"なんかブッ飛ばしてやらあ！！！」

「お前・・・・・・・・・・・・なんで俺に、、、そこまで―――――――」

「"魂之兄弟"ってのはなぁ、

一度敵対しようが、

"絆"っていう鉄棒の数兆倍は固いイトでまたよりを戻すんダッ！！！

それに、

オマエが今、オレがいなければ自殺していたようになぁ、

オレだって、オマエがいなければ、終いにはあのクソオヤジにナベで煮込まれていたかもしんねぇ！！

同じ、両親を失った同士じゃないか！

・・・・・・まぁオレは母親がまだ健在かも知れねぇし、オマエはアニキも失ってるけどよ・・・

オマエがもうこれ以上誰の死に際も見たくないようになぁ、

オレだってオマエに死なれたら困るんだよおお！！

…………殺し合いを繰り返した後にようやく気付くなんて、とんでもなくバカな話だよな。

さぁ、立て！

オマエはまだこの世で、やらねばならないことが山ほどある！！

オマエを必要としている人が、オマエの傍にいたい人が、オマエを"ナカマ"だと思ってる人が、オマエを待っている！！

たとえ"オニ"が宿っていようがヨウ、

オマエはオマエじゃなきゃダメなんだ！！！

・・・・・・オマエのオヤっさんだって、オマエのアニキだって、ゼッタイ思ってる。

オマエには、やってもらいたいことがあるから、まだこっちに来るな、生きて、生き続けて、人生を全うしろ、ってな！！」

"鬼"の眼にも、、、涙。

機械仕掛けの彼の眼には、これ以上ない情熱と温もりがあった。

俺はひどいことをした。

まだ少しだけ、俺を信じたいと思っていた"仲間"の気持ちをかき消そうとしていた。

俺のことをまだ少しだけ、仲間だと思いたかった"仲間"を、俺の死によって悲しませようとしていた。

俺には、まだやらねばならないことがあるようだ。

それは、"仲間"を"仲間"だと思うこと。

またそれは、"仲間"に俺の愚行全てを謝ること。

そしてそれは、"仲間"の期待に答えること。

俺の体は、初めから俺だけのものじゃなかったんだ。

俺は、差し出された手を掴む。

今ここに、"絆イト"は、結い合わさる。

俺は何とか立ち上がる。足が若干ふらつく。

「オマエ、さっき『やっぱりお前の拳にゃ敵わんよ。』とか言ったよな？

白旗を揚げたのは、オレの方だ。

オレだってイチオウ人間だから、泣く子とオニには敵わねぇんだよ。」

Mrk.3は、ヒヒヒと笑う。

眩いばかりの笑顔、生命の輝き。

「"迅雷裂空剣"、か、あんなに痺れるワザは初めて見たぜ。」

国王は、涙を拭う、笑顔が戻る。

「さて、これで和平としますか！」

Mrk.3で右手で拳を作ると、国王に向ける。

国王も、状況を辛うじて読み込み、拳を突き出す。

二人は、号令もなく、同時に、拳を軽く後ろに引き、

そして、ぶつけ合う。

もう既に、国王の決意は固まっていた。

<epilogue>

「ねぇ、イツキ？」

「あぁん？」

「私たち、本当に帰れるのかな？」

「帰れるさ。ヤクモがそう断言してるんだから、そうに違いない。」

「・・・・・・・・・・・・。」

「唯一つだけ言えるのは、

国王がいるから、今の俺たちがいる、ということだ。

俺らはどうやら、彼に感謝しなければならないみたいだ。」

「・・・・・・ということなんです、父上。」

「・・・・・・・・・・・・。」

「父上、聞こえてます、父上？」

「いや・・・・・・まだ国王のあの力が信じられなくてな。」

「父上。何故僕に教えてくれなかったんですか？　内通者である僕にも！！」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「僕は彼のこれ以降の愚行を止める義務があります。

国のために戦う身として。

王のために戦う身として。

戦友として。

従兄弟として。

そして、同じユコーの血の流れるものとして。」

「アフロさん？」

「はい？」

「そのアフロって鬘ですか？」

「いや、そこは触れないで下さい・・・・・・

では、cu:nonさんの忍者服は、コスプレですか？」

「はい♪」

「あちゃ――――――・・・・・・

あ、そうだ。国王様の様態は、順調に回復しているそうですよ。」

「本当に！？　よかったぁ～！！

早く元気になって、また一緒に遊んでほしいかな、かな♥♥♥」

「で？　国王は退院したんでしょ、Mrk.3？」

「あぁ、アネキ。」

戦場で、アオギリ教の信者と名乗る男、オグーを二人係でしとめようとしている、oir-okeとMrk.3。

「で？　何で戦うことやめちゃったわけ？」

「それはだな、アネキ、国王は別にもう2度と皆に"オニ"の姿を晒したくないわけじゃないんだ。」

「へ？」

「アネキ、所謂"オニ"モードに入ったアイツは、"迅雷裂空剣"を打ってはショッチュウ今回のように倒れることになるそうだ。」

「誰から聞いたの？」

「ソルっていうヤツだ、アネキ。」

「あぁ、あの変態ね。

・・・・・・ってか、アネキアネキって、何回言うわけ？」

「ゴメン、アネキ。アネキがアネキであることがまだスゲー嬉しくてさ・・・・・・ハハハ。」

「――――それは私もよ、"アクツ"。」

「とにかく国王は、しばらく戦いを休んで、国政なり何なりに専念したいってさ。――――――」

「誰が国政に専念したいって！？」

驚きのあまり、敵の前で雑談を交わしていた二人が、敵の前で思いっきり後ろを振り向く――――――――

「いくら我慢したって、もう俺の血管中で"人喰い鬼マン・イーター"の血がうずいてんだ。

さて殺ろうか、俺らの強さを見せてやる！！

今宵ハ酒池肉林ノ 晩　餐　会ディナーパーティー ダ、サァ、

血　　　祭ディナータイム ノ、始マリダアアアア！！！！！」

新生鬼編　　end