2-2 Returns ~赤月~ 卍 II. 赤月 卍
誰が想像しただろうか。
地球に次々と巻き起こる異常気象、そしてシナの復活……
しかし、超常現象はこれだけには留まらなかった。……
"Fall-Down"。夢が崩れ落ちる――!!
卍 II. 赤月 卍
第8章 紅あかき彗星の如く
CL帝国が滅びて早1年半の月日が流れた。
改めて今回、ちくわぶーにスパイを送り込むことにした。今日は快晴で、雲ひとつない青空が地平線の向こうまで続いていた、
まるで、今までの嫌なことを全て忘れさせてくれるかのように、
そして、逆に気持ち悪いほど……空は青々としていた。
「え、こんな僕でもいいんですか!?」
スパイの仕事は、上等兵に昇格後、なかなか仕事が舞い込んでこなかった金髪アフロにとって、大きな喜びをもたらした。人手が足りなかったので、たまたま召集されただけなのだが……。
夕日が沈む頃、彼は海軍基地から出港した。。
「(今回は竜巻なんて……起こらないよな。)」
アフロより1時間早く空軍基地を飛び立った卍F卍は、操縦しながらもずっと自分にこう言い聞かせていた。
確かに、竜巻は起こらなかった。海上に人影もなかった。
しかし朝方、海上にまたもや、いかにも不審な物体が……。
あれは……少なくとも船や潜水艦ではなさそうだ。トラック並みの荷台を構え……いや、姿かたちから見ると、トラックそのものである。
ただトラックとの大きな相違点は一つ、深さ2000㍍の日本海沖の海上を高速で滑走していることである。紅いボディのトラックが朝日に染まった海面を静かになでるように快走しているさまは、まるでアメンボのようだった。
「こちら、SG艦2号従属艦、新眼鏡丸改35号。日本海沖に怪しい船体を発見。」
「了解。こちらSG艦2号。全艦、警戒態勢を整えよ。」
その時、"トラック"の方向から爆音が鳴り響き、その振動で近くの従属艦の船体が大きく揺れた。
"トラック"後方からミサイルが発射されたのだ。その後も、何発ものミサイルが海上を飛び交った。
「こちら、新眼鏡丸455号。本船にて浸水を確認……敵艦がこちらに向かっています!」
「同じく、眼鏡丸改10号。本船にて浸水を確認済み。」
「……やむを得ん。海上保安センターに告ぐ。こちらSG艦2号。本ポイントにワープゲートを作成せよ。」
「了解。北緯x度、東経x度……他国領海内のため、テクスチャーを貼れません。」
「……了解。」
「こちら、新眼鏡丸改14号。眼鏡丸323号と思われる船体の沈没を確認!」
「何ぃっ!!」
その後、他の船体はかろうじて沈没をまぬがれた。眼鏡丸323号の船員は、金髪アフロを含め全員が行方不明となった。
第9章 盟約
3年前。
「女王様、女王様。」
「皇帝と呼べ。」
「す、すいません。来客の者が到着しました。」
「早速入ってもらえ。」
「ははぁ。」
「女王様、今回は是非とも女王様自ら協力していただきたい計画があるそうですよ。」
「皇帝と呼べと言ったはずだ!!」
「す、すみませ~ん!!」
「まぁいい。ではその"計画"とやらを聞かせてもらおうではないか。」
「レンジャー様、この度はあなたにお会いできてとても光栄であります。」
「まあまあ、立ち話もなんだからとりあえず座りなさい。」
「はい。(椅子に座る)……いやはや、では早速本題に移らさせていただきます。
今回レンジャー様に是非ともご協力願いたいお話といいますのはですね……。」
M-C戦争真っ只中のCL帝国の機密研究所で、クローン人間の研究が進められていた。
彼らの企てた恐ろしい作戦、それは皇帝レンジャー様のクローンを作り出すものだった。
眼鏡王国国王は剣術、魔術共に王国民の誰もが認めるほどの実力であり、またそれは、CL帝国軍の恐れるものでもあった。そのため王家を滅ぼすのは不可能とされていた。
しかし、皇帝となりたるお方はどうか!? 皇帝の魔術は飽くまで魔剣士の眼鏡の王よりはるかに上のはずであると、帝国民の誰もが信じている。なら、国王と我が皇帝を戦わせようじゃないか、という結論に至った。
「……というわけで、レンジャー様には直筆の挑戦状を敵陣に送っていただき、レンジャー様のDNAを是非とも我が研究所にご提供願いたいのですが……よろしいでしょうか?」
「面白いではないか、よかろう。ただし、決して失敗するんじゃないよ。それはワタシのプライドが許さないから。間違っても……ワタシが自らの身体で敵人に向かうことの無いように……ね?」
しかし早半年後、レンジャーのクローンの試作品がついに完成した直後、何者かが機密工場に潜入、ことごとく荒らされてしまったのだ。クローン人間に送るためのエネルギータンクが破壊され、国家機密情報であった波動砲設計図が盗まれてしまったのだ。
研究員は全員に罰が下され、女王……いや、女皇帝が体一つで敵陣に……そして時間遡行してまでの激しい戦闘の末……皇帝はこの世を去った。皇帝が生きる間浮かぶと言う黒水晶の球体が落下し、真っ二つに砕け散った。
幸いなことに、クローン人間は別の施設に移され、戦争後も内密に研究をすすめることが出来た。いつかのCL帝国の復活を夢見て……。
だが残念なことに、不幸なことは続くものである。カプセル内のクローン人間に異常行動が見られた翌朝、クローン人間はプラチナで出来た厚く硬いカプセルの壁を突き破り、脱走してしまったのだ。異常行動の原因は今も尚分かってはいない……。
それから半年後。
「ん、君は……見かけない顔じゃな……体がボロボロじゃないか。」
飢えた身体で、クローンは一人の錬金術士の男に助けられた。
「腕も取れかけとる……よし、ちょっと待っとれよ。」
「よし、完成じゃ。まったく、無口じゃなぁ、お前。どうもお前はクローン人間のようじゃな。いまどき、まだクローンがいたとは……。
じゃがこれからお前はただのクローンじゃないぞ。サイボーグ兼クローン人間じゃ。」
そして今日こんにちに至るわけである。
誰もあのトラック野郎の正体がレンジャーそっくりの人造人間とは知るよしもなかった。
そしていよいよ、何かが復活の時を迎えようとしていた!!
第10章 眼鏡、飛翔!!
「見ろ、いかにも不審な戦車の群れがこっちに向かってくるぞ!!」
ちくわぶーは再びワープゲートを築き上げ、仲間を救うべく大勢の増援部隊を月に送り込んだのだ。
流石の戦車には逃げ惑う人々。発砲を繰り返す戦車たち。
「月の者に告ぐ、月の者に告ぐ。さっさと拉致被害者を帰しなさい。」
「ん、拉致だと!? 愚か者め! 彼らは人質なんぞではない。それに、地球に住む汚けがれた者どもに指図を受けるつもりはない!!」
「汚れた者? 地球はそんな汚きたない所じゃない。こんな殺風景な所に比べれば……」
「え~い、やっちまえ~!!」
月警察の最新式全領域戦闘機ムーンセイバーとちくわぶーの真空対応型超高性能戦闘車両スペース・ウォーリアーの激しい戦いが始まった。
人数はほぼ互角だが、ずっと月で暮らしてきた"黄昏の国"民にとって、この対決はかなり有利であるはずだ。しかし、居住のすべを重点的に研究してきた月には、戦力がほとんどなかった。一方で、ちくわぶーお得意の怪力光線は、月で発見されたまだ数少ない資源によって造られたムーンセイバーのグラヴィティブレードをいとも簡単に貫き、そしてへし折った……。
一方、眼鏡王国の偵察機は、Jr.Kの住まいであるグリーンハウスに向けてちくわぶー半島上空を滑空していた。
「こちら少佐の卍F卍。航空班A、B、Cは至急僕と一緒に戻って欲しいとの連絡が入った。」
空軍基地に戻ってきた卍F卍は、中将から詳しい話を聞く。
「お前達は至急、宇宙に飛んでもらう。」
「そんな、無茶ですよ!! まだ宇宙飛行士の免許など持ってません!」
「心配するな、別にお前らだけではない。それに元帥殿もご搭乗になるそうだ。」
「……でも、どうやって?」
「はっはっはっ、お前達は聞いたことがないか? 今まで軍事工場では宇宙空間にも飛び出せる全領域戦闘機を開発しておったのだよ。」
それは聞いたことがなかった。しかし、ここまで眼鏡王国の技術が進んでいたとは……驚きだ。
「いきなりは苦しいだろうから、3日後、3日後にTake-Offだ、いいな!?」
「そうか、ちくわぶーが月に行ったから、我々も……」
卍F卍より先に到着した偵察班がこの情報をキャッチしたそうで、ちょうど今そのことが国王に知らされたところだった。
「はい、月といえば"黄昏の国"の国に行くとしか思えません。そこへのワープゾーン作成もちくわぶーなら不可能では……!!」
「何だ、この爆発音は!?」
どうやら外で爆発が起きたようだ。国王らが駆けつけたときには人だかりが出来ていた。
城壁が壊れている……城壁のかけらが足元にまで散らばっていた。
国王は空を見上げた……!!!
あれは…まさか……。
空はまたあの時のような黒雲に覆われ、宮殿の位置する丘を疾風が吹きぬけていた……。
第11章 疾風迅雷 A面 四方四神
「眼鏡ノ坊ヤヲサシダセ!」
まぎれもなくあれは……、間違いない。あの竹林の中で見た少女――シナだった。しかしあいつは……一応死んだことになっていたはずだが……?
秘書官がつぶやく。
「国王様。彼女からものすごい魔力が伝わってきます。これはもしや久々に激しい戦闘になるのでは……」
「何ダオ前ラハ? ゴミノヨウニタカル人間ドモメ。消エ失スガヨイ!! 攻撃魔法、シルフカッター!!」
無数の風の刃やいばが人だかりを吹き散らしてしまった。
「何という魔力か、流石さすがだ、シナ。しかし、この俺に勝てると高をくくるのだけはやめておけ。(何だか久しぶりの戦闘だから己の闘魂の熱さがひしひしと伝わってくる)」
「フ、オ前ダケジャ者足リヌクライダ。ソコイラニ残ッテイル者ドモモオ前ト同ジクライノ実力ト見エル 。ソイツラト私ワタクシガ一戦ヲ交エ、モシオ前ガソノ力ヲ思イ知リ、戦ウ気ヲ失ッタノナラ……今回ハ命ダケハ助ケテヤロウ。」
「なめた真似を。彼らは我が王家が誇る賢者四天王だ。お前ごときが彼らに勝てるわけが無かろう。俺もお前ごときに力をもてあます程の暇はない。とっととやっちまえぇ!!」
A:「神龍バスタードラゴン(蒼)、召喚!!」
B:「神鳥スザーク、召喚!!」
C:「神獣ザベルナイト、召喚!!」
D:「え、ええっと……珍獣タトルヘッド、召喚!!」
国王,シナ,A,B,C:「珍獣かよ!!」
D:「ば、ばかにすんなぁ!! "コブラツイストトルネード"!!」
C:「"ソニックフラッシュビーム"!!」
B:「"フェニックスファイアー"!!」
A:「"滅びのバー○ト○トリーム"!!」
国王,シナ,B,C,D:「お前、それってまさか……"○ 眼 の ○ 龍○○ーアイズ・○○○○ドラゴン"!?
A:「はっはっはっ、よくご存知で。」
国王,B,C,D:「……。」
シナ:「フ、オ前ラモコレデ一網打尽。"シルフスラッシュ"。」
シナの手先から凄まじい勢いで風が放たれ、何十、何百もの刃やいばとなって召喚された神々に襲い掛かってくる。
"赤いスズメスザーク" 、"子供の白い虎サベルナイト","亀と愉快な蛇たちタトルヘッド"は跡形もなく消え散っていった
しかし唯一"○眼の○龍バ ス タ ー ド ラ ゴ ン"は攻撃力3000、守備力2500だけあって余裕の貫禄さえ見せて平然とつっ立っていた。
C:「ははは、兄者の青龍をあまくみないでほしいな。頼むぞ、D!!」
D:「我が忍術の魔力にひれ伏すがよい。忍法、影分身の術!」
すると、あろうことか、Dではなく、バスタードラゴンが3体に分身したではないか!!
シナ:「コレハ、マサカ……。」 B:「そのまさかだよ。魔マジックカード発動、"融○"!!」
国王:「さあさあ、"青 ○ の 究 極 ○ブルー○○○・アルティメット○○○○"のおでましだぁ!!」
シナ:「マサカ私ガ、コノ私ガ、コノ絶対的ナぱわーヲ持ッタ私マデモガ、負ケテシマウト言ウノカ!?」
国王:「全く……愚かな者よ。お前も葬り去られるがよい! ひっさあぁつ!!―――」
第12章 疾風迅雷 B面 風神雷神
国王:「必殺!!―――」
シナ:「(デ、出ルノカ?)」
国王:「必殺!……」
シナ:「(……?)」
国王:「必殺ぅ……??」
シナ:「(……///)」
国王:「……何だったっけ??」
シナ:「フ、フハ、フハハハハハ!! 全ク、ドイツモコイツモ。カキ失セルガヨイ。"鎌鼬カマイタチ"!!」
一瞬まばゆい閃光が走ったかと思えば、三つ首のドラゴンは八つ裂きにされて倒れこんでいた。その眼にもう青白い光はなかった。
A:「……マジかよ。」
C:「どうする、兄者?」
A:「戦うっきゃねーだろ! "火車"……あっちぃ――っ!!」
C:「俺も援護する。"スパークボ……」
B:「おいおい、自分でしびれてどうする。しゃーねぇー。"氷結"。」
D:「凍ってるじゃんか、もー、俺一人でどーするんだよ。忍法、"木の葉隠れの術"!
お後が宜しいようで~♪」
「ったく、どいつもこいつも。本当にあれが国王に仕える身か?」
「全ク、笑ワセテクレルジャネーカ。シカシモウオ前ノ命モナイ。逃ゲルナラ今ノウチダゾ!」
「何言ってやがる。俺には国王としての威厳がある。引き下がる性質たちじゃねぇ!!」
「ホウ、随分ト口ノキキ方ガ悪イ少年ダナ。我ガ絶対的ぱわーヲ信ジテイナイノカ!?」
「ばか言え! シナ、お前はとっくに死んだはずではなかったのか、そう、あっけなく!!」
「しな? しなトハコノ身体ヲ持ッテイタ少女ノコトカイ?」
「お前……何者だ! なぜ他人の身体を操れる!?」
「フフフ、イズレ分カル。ソレヨリ、オ前ガ身ノ心配ヲシタラドウダ!?」
「分からんやつめ……絶対王政の名に懸けて、お前を処罰する!!」
「デハ、コレハドウカナ?」
そして、メルポの丘につかの間の静寂の時が訪れる……
「おい、これってなんだよ、これって!! 馬鹿にするんじゃねーぞ!! もういい!! 奥義、"時の――」
パリン!
「何!!!」
国王の身体にひしひしと感じていたオーラが、すっと消えた。
そのオーラこそ……暁の力である。おそらく今聞こえた何かが割れたような音は、暁の力が吸収されたヴィクトリーが割れた音に違いない。
「ドウダ、コレデオ前ノ超必殺技"時ノ咆哮"トカ、ハ○ヒとか叫んで出すアノ青白イ光トカハ使エナクナッタ!! 我ガ絶対的魔力ニヒレ伏シタマエ!!
"風ニ舞イシ龍"ノ御姿ヲ見ルガヨイ!!」
シナの長髪が舞い上がったと思うと、その髪は塒とぐろを巻いてやがて銀の龍のごとく宙に舞い上がっていた。
「サァ、神ノ裁キヲウケルノハ……オ前ダァ!!! "銀龍昇天"!!!」
シナの銀髪が驚くほどに伸び、国王目掛けて、国王の首目掛けて襲い掛かってくる――
ババババババン!!
唐突に機関銃の銃声が耳に飛び込んだ。
シナの銀髪は……いや、国王の足元に、白い羽が散らばっているだけだった。
国王は恐る恐る後ろを振り返った。国王の後ろには、傷だらけのマシンガンを担いだ青年が立っていた。
その青年は、Mrk.3と同じダークブラウンの色の瞳をしていた。
第13章 新たな救世主 ~ダツったのは"風○雷○Ⅱ"~
サングラスをかけているので眼鏡王国の軍人か民たみであることは明らかだった。
「ありがとう。もうしばらく援護を頼む。
さぁ、そろそろお疲れ気味か!?」
操られたシナは、おもむろに自分の背中に手をかざした。
「背がかゆくなったのか、どんな芸人だか知らないが、俺の剣術で即刻死んで…」
「秘刀、"闇風之刃ヤミカゼノヤイバ"!!」
鞘も無いはずのシナの背から、一筋の光が走ったかと思うと、シナの右手には刀が……あるはずもない刀が穏やかな光を放っていた。どす黒い柄に細く長い刀身を持ち、そしてどこか凛としたその刀は、何か強力で邪悪なオーラをまとっていた。
「憎シ、疾トク死ネカシ……"飛天疾風突ヒテンシップウヅキ"!!」
「面白い、我が一撃に耐えられるかな? "迅雷神速剣じんらいしんそくけん"!」
旋風かぜに身を任せるように、シナは静かに、しかし音速の速さで接近してくる。
一方国王も自らの足から放電し、その瞬発力で颯爽とシナに接近する。
「らーいらいらいらいらいらいらいらいらいらぁ―――!!!」
シナの刀、国王のレイピアともに、眼にもとまらぬ速さで次々と攻撃を繰り出す。激しく刀とレイピアがぶつかり合う。ほぼ互角だ。
「ハッハッハッノ \ッノ \ッノ \!!」
国王は大きく一振りすると、シナとわずかな距離をおく。そのすきに"救世主"はここぞとばかりにマシンガンをぶち込む。
ボロボロと言えど、YKKらの時代からすれば眼を疑うほどの連射力である。しかしシナは、それさえもか細い刀でものの見事にはじいていく。
「なかなかやるじゃないか、でもこれで俺の勝ちだな!
召喚魔法、"神の一手ゴッド・ハンド"!!」
「何!? ごっど・はんどハ大地系召喚魔法ノハズダ! 電撃系攻撃魔法専門ダッタハズノオ前ガ……何故!?」
「これが真の裁きだ……。」
地中から手を伸ばした巨大な右手は、国王がゆっくりと右手に握りこぶしを作ると、同時にシナを握り締め付けた。
「バカナ、ソンナバカナァ――!!」
「砕けろぉお―――!!!」
…………
その瞬間、エメラルドグリーンの光とともにシナは砕け散った……牡丹雪の如く散りゆく、青白い無数の羽となって。
「オ前ノ強サハ十分ヨク分カッタ。シカシ次コソ…次コソハオ前ヲ殺シテミセル。我ガ誰ナノカハマダ伏セテオコウ。タダ……タダ一ツ言エルコトハ、オ前トハマタ戦ウコトニナルダロウ。覚悟シテオケ!!」
「さっきは援護をありがとう。褒美をやらねば……コードネームを名乗ってくれたまえ。」
「褒美? あぁ、先に言っておくが、褒美は要らない……」
夕闇に紅く輝く三日月が、青年の頬をほのかに照らしていた。
「俺は"Makey"、"Mrk.3"の意志を引き継ぐ者だ。
お前を殺すのは…この俺だ。」
第14章 白き翼の悪魔
「さぁ、これで終わりにしようか!!」
Makeyはそういうや否や、マシンガンを構え、バトル小説の掟を知ってか知らないでか、即座に引き金を引いた。
…………
「運が良かったな。弾が切れていたようだ。」
「帰れよ。」
「分かったよ、帰るよ……
うわぁ~ん!! ママァ~!! またいじめられたよぉ~!!」
「(ったく、身逃がしてやった恩も知ってか知らないでか……)」
翌朝。空軍基地。
「えっ!! 話が違うじゃないですか、中将!!」
「月軍から援護の要請が届いているんだ。それに私は、卍F卍君、君の腕を見込んで言っているのだよ。君はもう随分前に少佐に昇格したではないか。もっと自信を持つんだ。」
「そ、そんな、軍勢は足りているんでしょうか?」
「全くだ。だから今回、やむを得ず国王閣下も同行なさるそうだ。」
「そんなの危険すぎます。まだ国王様はお若いんですし、それに……!!」
大佐が手に持って、卍F卍に見せたもの、それは……。
「この手は使いたくなかったんだが……元帥殿のご推薦なので…君を大佐に昇格する!!」
その頃、月面。
月面基地「黄昏の国」から2000㌔程離れた所で、事件は起こった。
月軍と帝国軍との戦乱が激化していたさなかだった。
この地域では、若干ではあるがちくわぶーの方が優位であった。
"黄昏"の戦闘機のレーザー砲ではちくわぶーの怪光線には全く歯が立たないでいた。それでも戦力の差を見せ付けて応戦するのがやっと、というところだった。
そんなさなか、赤い戦車のような物が急接近していた……そして次の瞬間、地面にごろごろと転がっていた岩が突如、宙に舞い上げられた!
強烈な波動が断続的にこの地域一帯に伝わる――戦闘機は吹き飛ばされ、戦車はひっくり返った。
残された軍勢は、我先にと戦場を後にしていった。
その場所に接近していたのは……あの日の赤トラックだった。
翌朝の王国。
多くの戦闘機と人間をのせた全領域超弩級航空戦艦、SG-XMB1号機がプラズマエンジン全力で宇宙おおぞらへ飛び立った。
さぁ、新たなる戦地へ!!
第3部へ続く......
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