2-1 Returns ~赤月~ 卍 I. 時を経て 卍

※関西弁全然使ってなくてすみませぇ~ん!!

※今回もパクリ全開どぇ~す!!


打ちミスなどのご連絡はコチラ



あれからどれだけの時が経っただろうか……


その昔、地球温暖化による海面上昇と、残された陸地の過剰な砂漠化、化石燃料の不足、そして人類同士の醜い争いである"戦争"で地球、地球上の生命はことごとく傷つけられていた。

そんなある日、一人の少年が言った。

「僕には見える、地球の明るい未来が……」


そして、数百年、数千年もの時が経ち……

本当に訪れたのである、地球に、明るく、暖かい未来が。


"魔法"の発見である。

地球上の二酸化炭素の大半は、"魔法"によってこの世の裏側にあるという第5次元空間に転送され、今は正常値を保っている。

そしてこの地球は再び氷河期に向かっているので、気温は再び下がる傾向にある。


しかし、大半の人間は、月に移住してしまった。

その人間たちは今、地球は完全に死の星だと思い込んでいる。

……だが、彼らのその概念も、崩壊する時が迫っている。





眼 鏡 の 聖 地 Returns

~ 赤 月 ~







卍 I. 時を経て 卍



第1章 氷の都


"水の鏡"に イツキ あかつき の姿が映し出されてから、まる2年の月日が経とうとしていた。


M-C戦争に終わりが告げて1年たった今、あの美しきバーバリアが再び甦ろうとしていた。

眼鏡王国第2の首都と呼ばれていたバーバリアの復興は著しく進み、摩天楼がそびえ立ち、高速道路がピアノ線のように細く張り巡らされていた。

それは……今までのような緑の美しい街並みではなかった。

「僕がが生まれ育ったのはこんな街ではない。」

ここ数ヶ月、大尉卍F卍はずっとこのことばかり考えていた。

「僕の母さんの面影など、もはやどこにもなくなってしまった……


K。お前が死んで償おうが、絶対僕は貴様を許さんぞ!!」


しかしながら、卍F卍が怒り狂うのも分からなくもない。

どうもちくわぶーの対応が怪しい。

実質ここ最近、なにやらちくわぶーが企んでいるのも明るみになってきた。

眼鏡王国に破れて落ちぶれ、反政府デモの悪化によりやむを得ず第3帝政に突入した新生ちくわぶー帝国だが、その新体制も決して納得のいくものではなかった。

Kが死に、皇帝として新たに政治の実権を握ったJr.Kは国王と同じく、まだ幼い。

実際に政治を執り行うダートム=ユコーが、今回特に怪しいと言われている存在である。

あまり公には晒されていない事実だが、ユコー一家は一昔前には肉眼共和国で大盗賊一家と呼ばれており、共和政にあきあきした彼らは、一家総出で旧ちくわぶー帝国に脱北ならぬ、脱弐してきたのだった。

しかし、その 思惑 おもわく はひるがえされ、帝政派閥は間もなく散っていった。

そして、今回、念願だった帝政復活が実現し、表の顔である"政治家"として重要ポストに起用されたのだった。


それにしても、バーバリアの復活ぶりには誰もが目を見張った。そして誰も思わなかったろう、この美しい"水の都"が再び死の大地と化してしまうとは……。

地球は偶然発見された"魔法"によって環境問題による傷跡を癒し切ったかに見えた。しかし、残念ながらこの"魔法"が解かれる時、地球は正真正銘の"死の星"と化してしまうのだ。

それにしても誰がこの"魔法"を解いたというのか? 人類の大半は宇宙開発の進行と共に、地球が"死の星"と化するのを恐れて月や火星に逃げていった。しかし、彼らは完全に"地球人"との交信を閉ざしており、"魔法"のことなど知るはずもなく、誰もが「地球は"死の星"になった」と思い込んでいるはずだ。

では、誰がこの魔法を解こうというのか? 地球に残された全ての国は何かと眼鏡王国と親交が深い。


今も尚、眼鏡と決裂している国、それはちくわぶーだけであった。

やはりこれから起こる異常気象もちくわぶーのせいなのかもしれない……


緑が消えた地のはるか上空は、分厚い雪雲に覆われ、それは真冬をも思わせるほどだった。

しかし、少なくとも今は冬ではない。しかし雪はしんしんと降ってくる。

人々はこの現象に不気味さを覚えた。


しかしながらも、やがては牡丹雪ぼたんゆきがひらひらと舞い散り、ところによってはぱらぱらと霰あられが降ってくる。

これはもしや何かの前兆ではないか……人々は不安を隠し切れずにいた。

そして、恐れていた大惨事が相次いで巻き起こり始めた。


ガラス張りの超高層ビルにものすごい勢いで雹ひょうが一斉攻撃を始めた。凍て付いた氷の弾丸にありとあらゆる窓がなすすべもなく砕け散る。町中で負傷者が絶えない。

駐車場の車も悲惨なことに、窓は虫食いのように割れに割れ、車体は傷つくどころかへこんだ箇所も多数。車上荒らしもたまったもんじゃないだろう。

やがて、雹は拳こぶしほどの大きさになって人々に"殴り"かかってきた。公園の砂場に突っ込んだ氷の拳は砂を撒き散らした。わずかに残された雑木林にもぐりこんだ雹は木々の葉を散らし枝を揺さぶり、そして折った。

街はもう住めるような環境にない。ガラス張りのビルはもはや鉄骨むき出しの殺風景なジャングルジムに変貌した。


凍て付いたアスファルトを踏みしめ、卍F卍も逃げる場所を探した。



第2章 氷の鏡


避難できそうな建物もなく、卍F卍は仕方なく洞窟に避難した。


ここは卍F卍が子供の頃、今は亡き彼の母に怒られた時に隠れていた洞窟で、今こそひっそりとしているのだが、実はここはアクアマリンの原石が発掘され、その昔とても珍重されていたのだが、その時、アクアマリンはあまり需要が伸びなかったため、ここも閉鎖された。今はここの存在を知る人もめっきり少なくなった。

ここに入るのは中学生以来だから、実に10年ぶりだろうか。兵隊用の鞄に常備していた懐中電灯の灯りを頼りに奥に行くと若干温かくなった。足元も少し湿っているようだ。奥のほうは今は鍾乳洞になっているようだ。天井に少々突起物が見え始めた。

足元もだんだん水浸しになってきた。とても蒸し暑い。眼鏡が曇ってきたので、しかたなく外した。

水面はふくらはぎの半分辺りの頃だろうか。水流も感じられるようになった。

そしていよいよ膝元まで水が及んだ時……

「うわああぁぁ!!」


水流に足を取られたかと思うと、卍F卍はどこかに落ちていくような感覚に襲われた。


……いや、実際に落ちた。

卍F卍が気付いた時には、彼は大きなドーム上の空間内にいた。その壁に懐中電灯の灯りを照らすと、蒼く輝いた。アクアマリンの原石は、今も尚健在だったのだ。


一方で首都、メルポシティはあのシナが覚醒した日のような重たい空気を運ぶ黒雲が空一面を覆っていた。

「不吉だ、実に不吉だ。」

宮殿、回廊の窓辺にいらっしゃる国王様はいつにもなくご機嫌が夜露死苦良ろしくないご様子。

我が宮殿のある丘を囲むように位置する遺跡から、重く冷たい空気が流れ込む。

また何かが起こるかのような、気味が悪い思いをしているのは、国王だけではなかった。


そんな中、本日は宮殿のホールにてちくわぶーとの今後の対応について、そして異常気象の対策について緊急会議がとり行われようとしていた。

中央に"水の鏡"を望み、それを囲むように国王と幹部ウィザードが席に着く。


会議こそ順調だったが、各々の気分は重くなるばかりだった。

ホールの天井には小さなドーム上にステンドグラスがあしらってある為、いつもならホール内に暖かい陽光が差し込む時間帯であるはずだが、"水の鏡"の光だけを頼りに向かい側の人の顔が見えるか見えないかぐらいの薄暗さが彼らを取り囲んでいた。

いつしかステンドグラスに雨粒のぶつかる音が聞こえてきたかと思うと、雷の強く不気味な光が断続的に差し込むようになっていた。


しかしながら、なぜか会議は異様なほど順調に進み、その会議も終盤に差し掛かっていた。

……ちくわぶーとはしばらく国交を断ち切ることになりそうだ。

その時、一瞬何か殺気のようなものを感じた国王が叫んで言った。

「皆、席を離れて、急いで!」

"急いで"といい終わるか否か、というまさにその時、ステンドグラスが異様な音をたてた。

そして、次の瞬間――!!!

ステンドグラスが粉々に砕け散ったかと思うと、ホール内に轟音が響き渡り、まばゆい閃光が各々の目に飛び込む……!!!


その青白い光は決してステンドグラスを突き破ってホール内に飛び込んできた 雷光 らいこう ではなかった。


それは……その雷を一心に浴び、その光を放出しているかのように輝く、"水の鏡"


その後、"水の鏡"に"一点"のヒビが入っていた。

宮殿の中で、"水の鏡"はいつしか"氷の鏡"と呼ばれるようになった。


この事実を知ったマスコミの波もおさまった頃、ちょうどあの雷雨の日から一週間後だっただろうか。

久しぶりに国王の希望でホールに入り、その"氷の鏡"の姿を目にした国王たちは、とんでもないものを目にした。

それは、ヒビが入り、もう完全に魔力がぬけたであろうその大きなアクアマリンで出来た球体、"氷の鏡"に映し出された、一人の青年の姿であった。その茶色い瞳にはどこかMrk.3の面影が思い出された。



第3章 異邦人


異常な環境変化により、大多数の人間はあの世に逝ってしまい、生き残った大半の人類は月に向かった。月にいる彼らは地球と反対側の、言わば地球と全体に向かい合わない"月の裏"に住んでいたため、今の蒼き地球の姿など知るよしもなかった。

アレから百数十年の時が経ったある日、月に謎のカプセルが墜落した。


その中に入っていたのは……エイリアンでも何でもなく、紛れもない人間の子供である。

着せられていた宇宙服は月面人にとって極めて原始的なものであった。念のため早く自分たちの居住している月面基地へ移動させた。

彼らは野菜、果物を初めとする植物を栽培することで酸素と食料を確保し、同じく家畜を飼育することでも食料を確保している。

水はスペースシャトル延べ何百機、何千機分も運んだが、後は排出物を循環させるしかない。

電力はほとんど太陽光でまかなっており、光エネルギーや熱エネルギーの源となっている。

金属の心配は今のところいらない。かろうじてではあるが、月でも金属を発掘することが出来る。


カプセルの中にいた彼は英語でソル=ユコーと名乗った。歳は現の世の大学生ぐらいである。その眼差しは黒い光を湛たたえている。

2、3億人もの人々をまかなうには改善はされてきたが、それでもまだ狭い空間である。


何とも認め難いことだが、この青年は地球からやってきたというのだ。

父と宇宙旅行中(地球一周の旅)、誤って脱出ポッドを起動させ、そのまま死ぬかと思っていたらしい。

地球にまだ人間がいるのが信じられなかった月面の人だが、こんなに若い青年は月面人はスペースシャトルにはまず乗せない。とすると、彼の証言を信じるほかない。


それから2ヶ月、ソルはここの生活にも慣れてきた。

ある日、彼と同じ棟で生活していた一人の少年がソルに向かってこう話しかけてきた。歳は中学生くらいだろうか。

「ソルさんって、ホントに地球に住んでいたんですか?」

「あぁ、その通りだ。」

「地球って、まだ陸地があるんですか?」

「うん、地球は君たちが月に着てからほとんど変わっていない、いや、むしろもっと美しくなったというか、蘇ったというか……。」

「ホントですか!?」

少年の目がきらきらと輝いている。

「あぁ、そうだ。」

「へぇ、地球ってどんなんなんだろう、僕、まだ見たことが無いんですよ。」

「そりゃそうだろうな、ここは地球の裏側にあるし……っておい、まさか地球を見に行くわけじゃねーだろうな!?」

「僕、前から見たいと思っていたんです。この基地だって、地球と真反対ではありませんし……」

「バカ言え、君みたいな子供がこの基地を出て行ったらどうなる? お前のおっかさんが心配するだろーがよ。それに、うっ!?」

ソルは少年にアルバムのようなものを押し付けられた。

「同行してくれたらこれ、全部あげますよ」

ソルはその中身をためしに1ページ見てみた。

「ムフッ……ォォ…ぃ、いいだろぅ……」


月面走行用の4輪駆動車で彼らはさっそうと月面を駆け抜けていた。

「これがクレーターか……吸い込まれそうだな。」

「僕もこんなに近くで見るのは始めてです。」

「ん、それにしてもボクたちの基地からの脱出劇は最高だったよな?」

「意外とあっさり出てこれましたよね、他人の目にも見られずに。」

「監視カメラなんかも無かったみたいだし。」


優に千数百キロは走っただろうか。なんとなく青い光が地平線から射し始めていた。そしてついに、

「わあぁぁ――……」

美しく蒼き地球が地平線上に浮かび上がっていた。

「本当に地球って青いんだなぁ。」

「ああ、地球が恋しいな……!?」

「どうしたんですか、ソルさん?」


「サイレン音だ…月面警察のお出迎えのようだ。」



第4章 シナ、覚醒。


「(ぁ、オーロラ。)」

卍F卍は何とか自分の落ちてきた滝を這い上がって、外に出てみると、すっかり日が暮れていた。そして、夜空に幻想的な光のカーテンが揺らめいていた。

「(こんな大都市でオーロラを見られるなんて……超常現象とはこのことか……)」

今も尚雪がしんしんと降っていた。地面には"氷の弾丸"が残した無残な傷跡が残されていた。

その晩は仕方なく洞窟のなるべく奥のほうで(水のほとりで)寝袋に入って寝ることにした。


今まで気づかなかったことだが、洞窟の今いるところは蝙蝠こうもりの住みかになっているようだ。蝙蝠が一斉に帰ってくるその泣き声と羽ばたく音で目が覚めた。

洞窟を出ると、銀盤の地面から強烈な反射光を浴びた。雹がものすごい速度で地面にぶつかり、強力な圧力でつぶされたため、しっかり踏み固められて路面が凍結した状態になっており、思いっきり、コケた。

その時、卍F卍にケータイに電話が掛かってきた。

「おい、F。ケータイが圏外だというもんだから心配したんだぞ。至急訓練センターに戻ってくれ。」

電話主は頼れる大先輩、元帥Jii-sanだった。


電車もモノレールもバスもタクシーもヒッチハイクも全滅だった上、地下鉄は大混雑だったため、すべりながらも何とかバーバリア市内の訓練センターにたどり着いた。

「これから、お前には偵察機部隊を率いてもらおうかと思う。」

「え゛、僕が……ですか!?」

「あぁ、お前、ちくわぶーにおっかさんを奪われたろ?」

「ぁ、はい……」

「倒せとまでは言ってない、スパイってだけだけどよ、親孝行、してあげなよ。

ルートなど、詳しいことは大佐から聞いておくように。


最後に言っておく。これは重要任務だからな!!」


そして、直下の兵曹の偵察機数機と共に、敵陣、ちくわぶー帝国へと飛び立った。どんよりとした雲が今で言う日本海上の空を覆っていた。

その雲行きも怪しくなり……何か向こうの方で何かがうごめいている……?

竜巻だ。ゆらゆらとこっちへ近づいてくる。

「みんな、ルートを左方向に変更してくれ。」

竜巻をよけきったかに見えた。しかし、兵曹の一人から無線が入った。

「だめです。追いかけてきます」

「みんな、加速するぞ!」

偵察機とはいえども、滑空速度はどの国の戦闘機にも劣らない。少なくとも地球では。

「大尉、最高速度に達しても尚も追いかけてきます。」

「うぬぬ、燃料の問題もある、ここはひとまず引き上げよう、今から航空管制塔に連絡をとって事情を説明する。

決して、竜巻に巻き込まれたりするなよ、なにしろ君たちは優秀な兵曹だからな!」


「だめです、追いつかれそうで……―――」

卍F卍は機体後方が映し出されているモニターを見た。すると、何か異変に気づいた

「(??)」

目を凝らしてよく見てみると……竜巻の中心に人影が映し出されていた……!!


そいつの顔は、実際に見るのは初めてだったが、写真では見たことがある。シナだ。でもあいつは死んだはずじゃ……。

その時、管制塔から無線が入った。

「卍F卍大尉が現在いらっしゃるポイントに、ワープゲートを作成します。」

無線が終わるや否や、きれいな水色の正三角形が海上に浮かび上がった。卍F卍に続き、全偵察機が"正三角形ワープゲート"に飛び込み無事ワープに成功した。


「ワレニシタガエ、チキュウハワレノモノ、ワレニシタガエ……」



第5章 ちくわぶーの陰謀


「ソル…ソルゥ……」

地球上では亡くなったことになっているソルの墓の前で、この日もダートムは祈りを捧げていた。


ちくわぶーでは一大プロジェクトが密かに企てられ始めていた。今現時点での地球環境の状況をいち早く察知し、昔の人間のように国を月に移すのだ。

前章でもわかったかもしれないが、少なくとも異常気象の原因はちくわぶー帝国自身ではない。


極秘プロジェクトは着々と準備を進めていた。ちくわぶーが地球上の各国との国交を全て遮断してから丸一年の年月が流れた。

月面にワープゲートのストラクチャーを作り出すのはかなり高度な技術を必要としていたが、その月面にワープゲートを作成するポイントを絞り込む技術もかなり進歩し、いよいよ完成まで目前というところまでせまっている。

もう、スペースプレーンで宇宙空間を行き来するような時代ではない。ダートムはこのプロジェクト成功に大いに期待していた。


「(ソル、待ってろよ、今行くからな!)」


実は、Jr.Kは月面にソルが着陸することを予言したのだ。

これはJr.Kとダートムの間だけの話であり、このことも今回のプロジェクトに大きく関係している。


今回予定しているワープは

 ① 各家庭に十分な酸素タンクを配給。自家用車を初め、あらゆる四、六、八輪駆動車を真空にも絶えられるように税金をはたいて出張、加工。

 ② 満月の夜、基地が近くにあると思われている場所に一番近いところにワープゲートのストラクチャーを作成。

 ③ ちくわぶー新基地建築のために、建築材料、建築士をワープ。

 ④ 建築

 ⑤ 全国民一斉ワープ。

の過程をちくわぶーの陸空軍全面協力で行う。


…………


第三過程まで順調に見えたこの一大プロジェクトだったが、次の過程で事件勃発。


宇宙警察なるものが出動だというのだ。

「お前ら見かけない顔だな、誰だ!?」


見慣れぬ全領域巡洋機に呆気にとられるちくわぶー。

「そこの者たちに告ぐ、そこの者たちに告ぐ、今そこで何をやっているのだ、応答せよ。」

「我々は地球から来たものだ。ここに新しい基地を建設する。」

「何を言っているのだ!? 地球は滅亡したはずだ……でもその宇宙服はわが基地のものではない。まさか、本当に……。」


ソルたちが起こした事件は宇宙警察にもごく一部しか知らされていない。

「基地から100キロメートル以内は一般は立ち入り禁止区域になっている。不法脱出…(?)者を直ちに連行する。」

「ちょっと待……」

ちくわぶーの目の前に現れたのは、正六角形型の強制ワープゲートだ。

「やめろ、我々の話をちゃんと聞け!!」

「詳しい話は基地にてゆっくり。」


「うわぁぁ――!!」

「地球ウチに帰りてぇ~よぉ~!!」

「母ちゃ――ん!!」

「……無念だ!」


建築士達は、一人残らず基地に転送されてしまった。



第6章 False Crescent


眼鏡王国から見る三日月は、濃い黄色に、不気味に光っていた。

「(何なのだろう、最近の異常気象は。)」

国王の心はまた沈んでいった。


「んん、日本海沖に発生した竜巻は一体何だったんだろうか?」

空軍の幹部会議でもこの謎は全く解けなかった。


「シナは…シナは死んだはずですよね?」

会議が終わった後、卍F卍はおもむろにJii-sanに質問をぶつけてみた。

「あぁ、その通りだが……それがどうかしたか?

「見たんです…あの竜巻の中心に…シナがいたのが!!」

「何だと!? なぜそれを早く言わなかった!?」

「……。」

「早速、気象観測センターに連絡してもらうとしよう。」


「地球は青いんだ!! 父さんが……父さんがボクを迎えに来てくれたんだ!!」

ソルはちくわぶーの代表が尋問を受けている施設の近くで何度もこう叫んでは、警官に止められるのを繰り返していた。

「月面警察は嘘をついたんだ!! 地球は……地球はまだ生きている!!」


この騒動の後、月面に住む人間達の脱走が絶えなかった。蒼い地球の姿を目にしたのはその1/10に過ぎないが……。

それでも、蒼い地球の姿が写った写真があちこちに流出すれば、驚きの声が上がった。

「えぇ~、ホントだったのぉ!?」

「本当にあの少年は地球から来たというのか……。」

「マジかよぉ!!」

「……きっとこれは何かの間違いだ!」

「これお兄さんが撮ってきたの? すごぉ~い!」

「"黄昏たそがれの国"(基地の名前)は嘘をついていたんだ!!」

「許さねぇ……覚えてろよ、月面警察めぇ!!」

「地球は、地球はまだ生きてたんだぁ!!」

「くっそぉ、騙されたぁ!!」

「あぁ~!! 地球に行きたいよぉ!!」


そしてこの騒動は―――間もなく反乱をまねこうとしていた。


「やい、警察め!! そいつらを釈放してやれ!!」

「なぜ俺らをこんな狭苦しい基地なんかに放り込んだ!?」

「私達は知ってるわ。あなた達が嘘をついたってことを!」

「おい、嘘は泥棒の始まりって言うだろ、お前らが泥棒になってどうする?」

「知らん顔しても無駄だぞ、こそ泥め! これでもくらえ!!」

月面警察本部に何千、何万と人が押しかけては警察に罵声を浴びせ、ついには暴力を奮うものまで出てきた。


「そこの者達に告ぐ、直ちに引き下がりなさい。そうでないと即逮捕ですよ!!」


「は? 何のこと? さっぱり分からないなぁ!」

「こそ泥が俺らを逮捕するだって! 笑えるよなぁ!!」

「頭おかしいんじゃないの?」

「わしを数十年も騙しよって、いまさら何をいうんじゃ!」

「お前らが犯した罪は、相当重いぞ!!」

「警察氏ねぇ!!」

「とっとと消え失せろ!」

「お前らこそ即逮捕だぁ!!!」


やがて民間と警察の激しい戦いに、"黄昏の国"は混乱を招く。



第7章 暗黒の宇宙そら


「何ぃ? 月に行った者たちとの通信が完全に途絶えた!?」

ワープゾーンが破壊されたため、救助に行くには莫大な時間と資金がかかる。ダートムはいら立ちを隠せなかった。

「何てこった……これじゃあ俺の計画は台無しではないか。 さっさと復旧作業を進めろ!」

「分かりました、では直ちに……」

「いいから早く行けって言ってるんだ!!」

「では……失礼します。」


「(……これではいつまで経ってもソルを救うことが出来ないではないか~!!)」

一見親バカに見えるかも知れない、いや、見えないと思うが、実質親バカではない。例えるなら、外国に拉致された拉致被害者の家族のような気持ちである。


……いや、ほとんど同じ状況かもしれない。"黄昏の国"人に連行されたのだから。

一方、当の"黄昏の国"人の中で、反政府派閥は増加の一途をたどっていた。基地内のあちこちでデモが相次ぎ、警察は取り締まりに手を追われている。

そして遂に反政府派閥の者たちは……牢をこじ開け、ちくわぶーの者たちを釈放したのだ。ただ残念なことに、この事件に関連した者は即逮捕という形になってしまった。

「おい、お前たちは何を考えているんだ? 敵を野放しにしているんだぞ! いつ襲ってくるか分からん!!」

「はい!? 言ってるイミがよく分かりませんが何かぁ!?」

「第一、あんたらが俺達をだましたから悪いんですよ!!」

取り締まりの時は、絶対といっていいほど論争が巻き起こる。どっちも正しいことを言っているはずだ……いや、ずばり言い当てていた。


警察の所持物である超兵器にまで手を出して内紛を起こす"黄昏の国"基地を目の前に、侵略をしない手立てはない。そのためにも、早くちくわぶーと連絡を取らねば……


そしてこの騒動はいよいよちくわぶー帝国の外に漏れ始めていた。

かつてoir-okeが所属していた眼鏡王国軍のスパイたちの賜物たまものである。

「そうか、この異常気象を目の前に逃げ切ろうというわけか……それにしても、本当に異常気象はちくわぶーのせいではないというのか? 気象センターのデータでもお前らを襲った竜巻に人影は見えなかったんだぞ!?」

元帥はまだ卍F卍を問いただしていた。

「機械を信じては行けないですよ、元帥さん。」

「おお、これはこれは国王様。」

「シナは私と同じ魔法使いです。機械が魔法に負かされるのは自然の摂理のようなものですから。」

「……国王様がそうおっしゃるのなら……しかたないですな。」


「それより、ちくわぶーが抜け駆けするというのは……本当か?」

国王の間に戻った国王は、専属秘書の一人に問いてみた。

「はい、そうですが、それがどうかしたのですか?」

「これは、非常にまずいことになったなぁ……」

「???」


「……宇宙戦争が……始まるかもしれない。」



第2部へ続く......

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