前述
時が経ち。
「おい聞いたか、まただってよ」
「また?」
「あぁ。また、被害者が出たらしい。今度は女らしい」
「物騒になったな、この辺りも……」
街の片隅で、男二人がそんな会話を交わしていた。時刻は日付が変わったあたり。繁華街から一本離れたこの通りは彼らが酔いを覚ますのにはちょうどいい静けさだった。昼間の暑さも日が沈んでしまえば和らぎ、犬の散歩をしている住民もちらほらとみられる。二人は会話を続けた。
「鋭利な刃物で切り裂くんだって?」
「らしいな。現代の切り裂きジャックとか言われてた」
「へぇ。今は21世紀だって言うのに。警察は何してるんだか」
「証拠が残ってないとかいうけど」
「でも何かしらはあるだろ? 普通」
「だとは思うんだけどなぁ」
二人はゆっくりとした足取りで歩く。そしてふと、片方が口を開いた。
「もしかすると、この辺りに犯人が居るかも?」
「何だよお前、驚かすなよ」
「いや、だって、そうかもだろ?」
「可能性は無きにしもあらずだけどよ、でもそんな……」
不意に、その言葉は途切れた。それに隣を歩いていた男も不思議そうに足を止め、そして男が凝視している先を見て、悲鳴を上げる。
道の端のゴミ捨て場で、短いスカート丈の女性が壊れたマネキンのようにばらばらになって、そこにいた。
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