清海vs美月と取り巻き
「ねえ。ちょっといい?」
次の日、言葉通り美月に呼ばれた。
「何…?」
「そうじ、教室だよね。」
「あんたには関係ないでしょ。」
「クスクス。教室終わったらさぁ、体育館もやっといて。」
「は?なんで?私の当番じゃないんだから嫌に決まってんじゃん。しかも一人とか一生終わんないし。」
「うちらプリ撮りに行くから文句とか言わないでよね。」
「ならなおさら。絶対やだかんね!」
「琴音、杏実、京!」
名前を呼ばれた3人がビクッとしたが、すぐに私を抑えつけた。
「ちょっと!やめてよ。早くプリ撮りに行きたいんでしょ?だったらさっさと終わりにすれば?」
「メンドっ!そんなことするわけないじゃん。」
「で?私に何しようってゆーの?」
「殴ろっかな~、って思ってる。だって昨日も逆らったし。今もね。」
そう言ったのもつかのま、美月のこぶしがみぞおちに命中した。あまりの痛さに私は声も出なかった。
「ウウウ…。な、なにすんのよっ!ゲホッ、ゲホッ。」
「キャー、ハハハハハ。ウケるー!もう一発!」
ドスッ。
私は意識を失いそうになった。痛くて、自然に涙がこぼれてきそうだった。必死に目に力をいれて、涙を流すまいとする。
私はずっと、5か月ほど前からいじめられていた。この5か月間、一度も泣かなかった。よく耐えられたと思う。誇りだけは失いたくなかった心が、私を耐えさせていた。いつも凛としていたい心が私を強くさせた。
だから、今殴られたところを見ても泣かなかった。
「ちょっとぉ、清海ってムネおっきぃ!」
美月が殴った手をもっと押し付けてくる。
「ねえ、まだ入るよー。ヤバくない?図ってみよ!琴音ー、メジャー持ってきて。」
「えっ、あっ、うん。わかった。」
そういうと、
「あんたさぁ、生意気だよ?」
急に美月が叫んだ。
「私よりムネおっきかったらナンパ通りに行って痛い目に合わせてあげる。」
「ナンパ通り?」
聞いたことのない通りに違和感を覚える。
「知らないんだ、ナンパ通り。何でもその通りって一日中ナンパしてる人が大勢いるところって言われてる。しかもチョーヤバい人たちばっかり。そんなことも知らないの?」
そう声を荒らげたのは
そんなことを言い合っていると、琴音が走って戻ってきた。手にメジャーを握って。
「ごめん~。お待たせ。」
「遅いよ。琴音、短距離得意じゃなかったの?」
「ごめん…。」
「どーでもいいけど、さっさと図るわよ。」
「えっ?私が図るの?」
「あんたばかぁ?私が図るにきまってるっしょ?あんたたちは抑えつけといてっ。」
「だ、だよね。わかった。」
そう言って、琴音がすかさず私をつかむ。
「琴音、楽しい?」
私は琴音の耳元でささやいた。
「…。」
琴音は黙り込む。と同時に力が緩んだ。その瞬間、
「ちょっと!琴音、あんたちゃんと抑えつけなさいよ!逃げたらどーすんの!」
美月の文句がムチのように飛ぶ。その言葉に俯きながらももう一度力を強める琴音。
「なるほどね。結局あんたも美月様、なんだ。」
「…。」
琴音はさっきよりも深く俯くと、次の瞬間顔をバッとあげた。
「ごめん美月!もう私ったらおっちょこちょいだからさっ!」
私は絶望の中何もできなかった。
「ではではお待ちかねのバストショー!さて、大江清海のムネはいつくでしょーかっ!?」
……。
「バスト、○の○、なんとEカップ!」
「えっー!すっごぉっい!」
杏実が手を叩いて叫んだ。
「杏実…。」
杏実、
「んで、結局私よりデカいんだ。ウッザ。とゆーことであんたはナンパ通り行き決定!!!」
「ちょっとまってよ!私の意志でやってるんじゃないんだけど!」
私は睨む。許せない。自分では変えられないとわかっていて言う美月が。
「あーら、どこの誰がそんな大口叩いてんでしょうね?」
「くっ…。」
「じゃっ、放課後!逃げたら承知しないからね!」
そのまま美月は琴音、杏実、京を連れて昼食に行った。私はただその後ろ姿を、涙で滲んだ目で睨み付けるしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます