第2話 金なし三人爺

 えーここに三人の男がおります。爺どもといったっていいかもしれない。

爺といっても家族がいるわけでもないから「孫」がいるわけがない。

若いころちょっとやんちゃをして「塀の中」に少し入っていた。

別に、人を殺した。女を手籠めにしたなんてひどいことをしたわけじゃないが、どういうわけか入ってしまった。理由もなく塀の中に入るわけはございません。まあはっきり言ってしまえば「すり」です。

「すり」という仕事はいわゆる現行犯でないと逮捕できない。

取り締まる警察からしてみれば厄介な話です。

したがって職人みたいな「技術」を持っていないとできなかったらしいです。

困った「職人技」ってのです。しかし若いときから酒が好きってのがどうもいけないようでして、酒を飲みすぎると手が震えるようになる。だから絵描きの先生はあまりお酒をお召しにならないんだそうで。

若いときの手の震えなんてもんはあんまりありませんが、それが年を取るにしたがって震えが大きくなる。

とうとう「すり卒業」って事になります。

すりを卒業してもべつに「学位」を頂けるわけもなく、まあはっきりいって「廃業」ですな。

そうすると金がなくなる。まあ、なんとか「生活保護」って形に収まります。

そんな爺が三人。リーダー格の正吉。参謀の辰三。幕下の英二。

この三人が物語の主人公になります。

「正吉兄い、あついですなぁ。それにしても兄いの家にはエアコンないんですかい?」これは辰三の言葉です。

「あちーなー。まったく暑い。エアコン壊れてんだよ。去年の夏も暑かっただろ?

だから夏中、窓開けずにエアコンだけで過ごしたんだよ。そしたらエアコンから水が滴ってきて、水も滴るいい男だ。」これは正吉、団扇を仰ぎながら話します。

「あっしが直しましょうか?」これは英二

「おめぇ直せるのか?」

「ええ、あっしはこうみても中学の技術の成績が10でしたんですぜ」

「じゃあなおしてくれ」てんで、脚立なんてものは「男やもめ」にはございませんから英二を辰三が肩車いたします。

子供を肩車するのはなんてことはありませんが、爺が爺を肩車するとどうしてもふらふらする。ただでさえふらふらしてる人間が大の男を肩車すればもっとふらふらする。エアコンの前で肩車したじいさんがふらふらしている。

はたから見たら変な光景ですが本人たちはこの暑さから解放されたいと思って至極まじめ。もっとも、もう少し「人生」真面目に生きていたらこんな生活は送らなかったんですがね。

「もうすこし右」「左」とか言っているうちに汗だくだく。

下にいた辰三はばててしまってとうとう部屋の真ん中にぶっ倒れる。

バーンって大きい音がする。当然上に乗ってた英二も倒れる。

「いけませんや。兄ぃこいつぁ俺の手に負えませんぜ。」

「なんだと、」

「さっき思い出したらあっしが10取ったのはエンジンの問題でして。。。」

「ばかやろう」正吉、辰三が英二の頭を殴ります。


まあ、することなすことこんなもんですから、お金は稼ごうと動くたびにかえってお金がなくなってしまう。もうこうなれば三人もやけになる。

そこで参謀の辰三がある提案をいたします。

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