第15話 日常の再開2

「因数分解って何?これでいったい何が判る

の?いつ、どこで使う物なの?」


「そんなこと僕に言われても。」


 は納得いかなかった。勉強とい

う概念は理解できる。それは教えてもらわな

ければならないことも。だが、そもそも教え

てもらう内容が、どんな役に立つものなのか

を理解もしないで、この者たちは一体なぜ勉

強しているのだろうか?


「使うべきところがあるのなら覚えたらいい

けど、使うかどうかも判らないのに一生懸命

勉強するって、頭おかしいんじゃない?これ

が普通なの?僕が言ってることが間違ってる

のかな?」


「いや、間違ってはいないとおもうけど、学

校で勉強するのは基礎だから、その基礎が出

来ていないと将来困るだろうから、今勉強す

るんじゃないかな。」


「それなら、必要になったら覚えればいいじ

ゃないか。全体を広く浅く勉強するより、実

際に役に立つことをピンポイントで深く掘り

下げて覚える方が合理的だと思うけど。」


「まあ、それはそうなんだけどね。って、な

んで僕が修太郎に怒られないといけないんだ

よ、勘弁してよ、文科省の役人じゃないんだ

から。」


「その文科省の役人が悪いんだな。今から変

えるように言いに行く?」


「やっ、やめてよっ。普通の高校生はそんな

ことしないんだって。特に七野修太郎って人

間は『長いものに巻かれたい』っていう極端

に受動的な人間だったんだからさ。」


「そういうものなのか。それならまあ仕方な

いが、納得は行かないな。」


「もしかして、覚えるのが嫌で言ってない?」


「いっ、嫌、そんな訳ないじゃないか。僕は

万物の王なんだし、なんでも知ってるけどい

ちいち細かいことは覚えてないだけなんだっ

て。」


「でも、杉江さんから聞いたけど、知性のほ

とんどは旧神に封じられて『白痴の王』とか

言われてるんじゃなかった?」


「あっ、杉江のやつ、言わなくていいことを

べらべらと。健太、それは聞かなかったこと

にしといてよ。ほとんど、って言うけど結構

知性は残っているんだから。地球人と比べて

も全然勝ってるってば。」


「だったら、今度のテストで勝負する?負け

たら何でも言うこと利く、ってのどう?」


「えっ。いや、まあ、負ける訳ないし、それ

はいいんだけど健太に不利過ぎないかな、そ

れが心配だけど。」


「そんな心配はご無用!僕は元々ちょっと修

太郎よりは成績よかったんだから。」


「そうなのか。なんでよりによってこんな奴

の中に入ってしまったんだろうな。ちょっと

待ってよ、テストまで何日だっけ?」


「来週の月曜日から4日間だよ。今日は金曜

日だから、もうすぐだねぇ。」


 なんだか、向坂健太はこの状況を楽しみだ

したようだ。

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