第14話 日常の再開

「修太郎、おはよう。」


 恐る恐る、向坂健太が七野修太郎に声を掛

けた。咬みそうな犬に手を差し出すかのよう

な不安気な態度がいつもの健太と違うので、

周囲は変に思っただろう。


「おはよう、健太。杉江先生から聞いただろ

うけど、まあ、しばらくはヨロシク。」


「そう言われても、中身は修太郎じゃないん

だよね?合わせるの大変だと思うけどな。」


 向坂健太らしくなく小声で修太郎に話しか

けた。


「まあ、なんとかなるだろう。気にしていた

らキリがないさ。」


「なんか、確かに日に日に修太郎っぽくなっ

てるのは間違いないんだけど、まだまだ変な

トコばっかだよ。」


「そっか。この口調にも多少は慣れてきたん

だけどなぁ。もっと彼のことを教えてくれな

いか。」


 にしては、神妙な面持ちで頼ん

だ。昨日戻った杉江統一から強く釘を刺され

ていたのだ。健太や斎藤加奈子、君塚理恵を

先生として七野修太郎の振る舞い方を教えて

もらうように、と。その際、頭を下げて教え

を請うように、とも。全くもって

は納得がいかなかったが、渋々従うことにし

たのだ。にもさすがにこの宇宙が

完全消滅してしまうにはまだ早いということ

が理解できる。そう簡単に壊してしまう訳に

は行かないのだ。それは旧神と交わした約束

でもある。別のが勝利する宇宙の

時に逆にすぐに崩壊させられてはたまったも

のではない。


「僕はなんだか面白そうだからいいけど、加

奈子はどうすんの?付き合いだして間がない

のはクラスのみんなも知ってることなのに。」


「それは、もしかしたら大きな問題なのでは

ないか?」


「そうかも知れないね。一旦喧嘩したとかで

距離を置いてることにした方がいいかもな。」


「その加奈子とかがそれでいいなら、僕は問

題ないけどね。」


「いや、問題は大ありだよ。」


「そういう物か。」


「そういう物だね。」


 また、さらに気が重くなった

った。 

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