第4話 秘密の扉
次の日曜日、伯父夫婦と亜里沙、勇はショッピングモールに行った。
百合子さんは飛び切りのおしゃれをしていた。二人は腕を組んでいてこっちのほうが恥ずかしくなった。
亜里沙と勇は手をつなぐのがやっとの状態で、勇はカチコチに固まった。
「しっかりしてよ」亜里沙は活を入れた。
セールが開かれていて、百合子と亜里沙は更衣室で何着か着替え、その前に義実と勇が待っている。
作者がちょっとだけここに出る。女性の服選びを待つ時間というのは地獄である。
作者は一度女性ものの下着売り場で彼女に「トイレに行ってくる」といわれ地獄を味わった。周囲の目が怖い「変質者?」と疑われ。「女装癖」と思われ、まあおそらくは被害妄想だろうが、あんなに緊張したことは無い。
話を戻す。
男たちが「地獄」を味わった?後、逃げるように行きつけのイタリアレストランに入った。
もっぱら学校の話が話題に上った。友達の話、学校の怪談の話。取るに足らないものばかりだったが盛り上がった。
伯父が初恋の話をしたとき百合子さんは機嫌が悪くなった
ほほえましい。
「私はこんな家庭を築くことが出来るだろうか?」
少し不安に思ってテーブルの下にある勇の手を握った。勇が優しく握り返す。
伯父たちがワインでほろ酔いになったころ(もちろん亜里沙たちは呑んでいない)を見計らって母の恋人の話をしてみた?
「和可子に恋人??」
「それはない。」
「ないわねぇ」
夫婦口を合わせた。
「和可子は仕事が好きだったからなぁ、それにお前を育てるのも。楽しそうだったよ。」
「そうよね。仕事に育児。笑いながらやってたわよ」
そういえば母の笑顔しか亜里沙は思い浮かばない。
「でも、一度だけ。うちに手紙が届いたことあったな。」
「手紙?」
「男だったな、ありゃあ。」
「名前は?」
「忘れたよ。あれはお前が生まれて家を出た後だ。それ以来なにもない」
「それより、もっと食べろよ。な。婿殿」
「お、おっす」
亜里沙は心の中で決めた。
あの手紙を開けることを。
開けて中を見ることを。
そんな亜里沙の覚悟を知ってか知らずか勇はピザをほおばっている。
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