第4話 ネクロマンサーとは



夜中に突然電話が鳴り彼女が別れを切り出してきた。

スマホを握りしめた手が震える。


唐突に俺は負けたのだと思い知った。

誰に負けたのか、何に負けたのかわからないまま液晶画面を身じろぎもせず見つめた。



----



ランスルは左肩をグールに食べられていた。

俺はグールの頭を射抜いた。

ランスルはグールを抱きしめ、

「ハンナ」

と妻の名をよんだ。


召喚されての急展開には慣れていたがこれはあんまりだった。


「一晩も食人衝動に耐えるとは新記録だよ」

透明なクリスタルのようなゴーレムが拍手をした。


思い出した、門番のこいつにやられたのだ。

冷たい敗北感が這い上がってくる。


「さてランスル、お前はどれだけもつのかな、一晩?二晩か?娘の肉はきっとうまいぞ」

ゴーレムではなくゴーレムを操っている者が喋っているようだった。

「あらためて取り引きだ。娘を助けたければネクロマンサーの秘法を明かせ」

「断る」

ランスルはためらうことなく答えた。

「やれやれ、ここまでしても駄目か。惜しいな、お前の死者の軍団なかなかのものだったぞ」


死人使いネクロマンサー、死者の軍団……俺は混乱をきたしていた。

第一ここはどこだ?元いた街でもゾーデリアでもない森のなかだ。


周囲がざわめいた。

グールの群れだ。ひときわ目立つ赤毛の巨体がいた。

ここはかつて通ったグールの森のようだった。


「タカハシさっきはありがとう。妻が正気なうちはどうしても殺せなくてね」

こんなときでもランスルは礼儀を重んじた。

召喚獣なんだからマスターの望み通りに動くのは当たり前だった。

「ではあれを倒してほしい」

クリスタル製ゴーレムをしめした。

それは高望みというもんだ。

また負けるとは思わないのだろうか。

ふふん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る