第3話 呪われた都にて

ランスルはいつもうつむいていた。

ランスルはいつも泣きそうな顔をしていた。


だが俺はここでは召喚獣だ、マスターの素性や事情など知らない。

ひたすら己のつとめを果たすだけだ。

これは異世界での本能といっていい。


召喚されるつど状況は変わっていった。


まず騎士かと思われたマスターランスルは鎧を売り払いローブをまとった貧相な小男と成り果てた。

武器は俺タカハシのみ。

小さな盾は俺が気に入ったと思ったのか残してあった。


ランスルにとって最初の仲間はバーナー、発火能力者だった。

まだ少年の面影を残した若者だ。

俺とバーナーのコンビネーションは抜群で無敵といってよかった。


その後どうやったのかまたたく間にパーティーはふくれあがり軍団規模になっていき、俺のランスルに対する認識を改める必要があった。


「呪われた都ゾーデリアが現れた!」

召喚された俺に珍しく興奮したランスルの声が届く。


泥人形ゴーレムの群れが街を蹂躙しすでに乱戦模様となっていた。


「行くのですね!」

つんのめるようにバーナーが問いかける。

「奥様と娘さんは御無事でしょうか」

ランスルは本当に泣き出しそうな表情になっていた。


ゾーデリアは陽炎のように出現し異形の怪物どもを溢れさせていた。

その怪物どもがを吐き出している門の上に赤ん坊を抱いた女が立ちすくんでいた。


「ハンナ!アリシア!」

ランスルは叫び俺たちを先頭に軍団は門を目指した。

バーナーは炎の壁で怪物どもを遮り俺が無数の光の矢で道を切り開いた。


砕け散ったゴーレムの残骸を飛び越えゾーデリアの門にたどり着いた俺とランスルに声が降ってきた。

「待ちかねたよランスル」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る