透明なG

@yuza

透明なG

 私達は知らないうちにGを食べています。


 これは、寝ている間にGが口の中に入るといったお話ではありません。たとえ、私達が大口を開けて寝ているところに好奇心旺盛なGが入ってきたとしても、そのGを咀嚼をして飲み込むなんて器用な真似は私たちにはできません。


 箸で掴んで、スプーンで掬って、よく噛んで、味わって、私達はGを食べているのです。私達が時々味わうジャリジャリとした食感はGのそれなのです。


 あなた方はこれを聞いて、私が最初に言っていた知らないうちにという部分と矛盾しているとお思いのことでしょう。いいえ。矛盾はしていません。


 なぜなら私達が食べているのは透明なGだからです。


 あなたは透明なGの存在を信じることができますでしょうか。透明な生き物の存在を認めることができますでしょうか。正直に申し上げますと、私にはこの事実を信じることができませんでした。


 透明なものの存在をどうやって証明できましょう。完全に光を透き通す物体があったとして、その物体をどうやって知覚することができるというのでしょう。聡明なあなたは次のように思ったはずです。もし、その透明な物体に触ることができれば、それが存在の証明となるのではないのかと。もしくは、その透明な物体の質量を測ることができれば、と。しかし同時に、あなたは気づいたはずです。透明なGの証明の困難さに。


 Gは小さく、軽い生き物です。カサカサと軽快に動きまわることができるほど、Gは素早いのです。透明なGに触れたとしても、それは一瞬の出来事で、気のせいだったかのような錯覚に陥るのです。彼らの存在を証明するためには、彼らを捕まえる必要があるのです。彼らを捕まえるためにはGHH(ホイホイ)が有効と思われることでしょう。しかしながら、通常のGHHでは彼らを捕まえることができません。なぜなら、彼らの好む餌は通常のGとは異なるからです。彼らを捕まえるためには彼らの好む餌を知る必要があるのですが、しかし、現在のところ、その餌にどんなものがあてはまるのかといったことは残念ながら判明しておりません。透明なGを集める餌の探索は非常に困難であり、現在も日々研究の毎日です。


 以前の研究会では私の研究努力が至らないばかりに、多くの方々には透明なGの存在を信じていただくことが叶いませんでした。しかしながら、もし、このお話を信じていただけたなら、あなたは透明なGの脅威に怯えているはずです。


 そんなあなたに朗報です。今なら透明なGを可視化する薬剤が1万3000円(税抜き)で手に入ります。この商品で得た収入はすべて透明なGの研究費にあてますのでぜひともご注文をお願い致します。


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