第9話
▼
「、ん」
「いつきさん、もうすこし」
「んぁ、ふ」
吸血初体験からほぼ1ヶ月過ぎ、楽に吸える体勢を見つけられるくらいにはお互い(主におれ)が慣れてきた。
ただ、その体勢ってのがまあ所謂、対面座位。
立ったままは論外で座りながらで吸いやすいとなるとそれが一番だと。
そうなると勿論おれが上に乗るわけで、大学生の男膝に乗せるとかなんとか、散々渋って、最後は清さんの笑顔で折れた。
「いつきさん、全然軽いですよ」
「重さなんてどうだっていいんですよ、」
樹を膝に乗せ、腰に手を回す清を 近いですと言って遠ざける。
「この状況の話です」
「男の夢じゃないですか?」
「え?ちょ、やめ…」
なぜか笑いながら腰に回した手をシャツの裾から滑り込ませてくる。背筋をなでる手は血を主食としているはずなのにひんやりと冷たい。
「さやかさ、ん…」
どこでスイッチはいった?!
「いつきさんは背中が好きですか?それとも前?」
「好き、じゃない…くすぐったい、」
脇腹から煽るようにお腹をなで、臍のまわりをすりすりとくすぐる。
「くすぐったいっていうのは気持ちいいってことなんですけどね、慣れてないのはいいことです」
背中にソファ、目の前には綺麗に微笑んだ清さん。いつの間にか押し倒されてシャツも胸あたりまでまくり上がっている。
臍をこりこりと弄る指もゆっくり上がってくる唇も、
「さ やかさん…」
「…いつきさん?」
妙にまどろんで、
「ぉ、れいがいの血は 吸わないでください…」
「こうゆう…の がんばるから…おれ いがいにしないで…」
トロンともれる息と濡れた笑みに自分では気づかない独占欲と色香が滲む。
「ええ、もちろんです」
私にくれますか? 風上イヌ @kazacami
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