第6話
「で、契約ですが」
おれの手を握っていたはずの右手に用紙が1枚。目の前に差し出される。
「形式上のものですが。まあ、言うなれば婚姻届みたいなものです」
思わず飲んでいたリンゴジュースを吹き出しそうになった。あぶねー
「婚姻届って…」
「近からず遠からずと言った感じでしょうか?契約を結んでいる間、僕とあなたは
「つ、」
「同性同士での契約は可能なので心配はいりませんよ?」
おれは混乱しているというのに(ジュースも吹き出しそうになったし)目の前の吸血鬼は優雅にお茶を飲んでいる。いつの間にか握られた手も解かれて代わりにおれの手には紙が1枚。
「ぇええ…これはありなのか?なんか流されてる気がするけどありなのか…?」
「関係としたら
言うなれば会社間の契約を個人でしているようなものです。」
そう言いながらお茶を口に運ぶ。
「でも一夜限りの延長で吸血するひとたちもいるんですよね?そういう人たちは契約しないんですか?」
「契約をしていれば手を出すことができないんです」
「手?」
おれが自分の手を示すと 面白そうに目を細める。
「そうですね、あなたに恋人がいたとしましょう。その場合、僕があなたにこういうことをするのは 手を出したということになるでしょうね」
そう言って お兄さんはおれの唇の横に自身の唇を触れさせ、ぺろっと舌で舐めてから離れていく。
「は、ははなるほど」
「まあ、契約するということは相手も自分も縛り付けることになりますし、遊びたい盛りには向かないかもしれないですね」
遊びたい盛りってのはとくに問題はないんだけどな…休みの日は献血行ってるか家にいるか、…友達がいないわけじゃないぞ!!けっして!忙しくて遊べないだけだ!!
「ああ、あと正式に手を下すこともできます」
また、手?
「もしあなたが吸血鬼と契約をしていたら周りの吸血鬼はそれがわかるんです。複数の吸血鬼から吸血されれば問題が増えますから、1度だけの相手ならともかく定期的に吸われる契約者には色がつきます」
「色?」
「相手がいることを知らせるためのものです。オーラみたいなものと言いますか、相手がいることを知りながら“手”を出した場合、それなりの罰が下されます」
ああ…そういう意味での“手”を下すね…吸血鬼界の罰というものはなかなか恐ろしそうだ…
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