21.あたたかい朝の光にふたり
不意に新しい気配が現れた。
瞬間、他のすべての存在が消えうせる。
それは、何も語らず、何も訴えず、ただ無言のまま、私に寄り添っていた。
「……」
その、言葉が、ちっとも出てこない。
自然と、涙があふれ出す。
この奇妙で、恐ろしい世界にひとり取り残されて、心細くて、情けなくて。
どうしようもないほど孤独な時に、ソレはやってくる。
思い出す。
かつてひとりぼっちだった私の話に耳を傾けてくれた、あの懐かしい匂いのする体温のかたまりを。
たとえその姿を直接見る事が出来なくとも。
『わたし』には、この世界を共有できるヒトがいた。
朝の陽ざしが病室をミルク色に染める中、世界は静寂に包まれる。
瞼を開く必要なんてない。それをこの瞳で見なきゃならない、なんてきまりはどこにもないのだ。
もう一度、あなたのお気に入りにしてくれますか?
『ちゃんと迎えに行くからね』
それまで一人で髪を梳きつづける。
明日もそうするつもりだ。
きっと明々後日もそうする。
その次の日も。
そのまた次の日も。
わたしと彼女が共に創りだしたこのオカルトな世界で。
……了
この、オカルトな世界で 森の 仲間 @Morino_miya
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