第20話
末尾「んっ・・」
日の光の眩しさで目が覚める。
隣ではまだ新緑が寝息を立てている。
新緑が作ってくれた簡易的な屋根から出て、久しぶりの外でノビをした。
末尾「ん~、気持ちいい。」
若干風はあるものの、活動するには申し分なかった。
新緑を起こし、他に生きている人間を探す準備をして早いうちに出かけることにした。
新緑「久しぶりに晴れてよかったね。」
末尾「気持ちいいよね。」
今から行おうとしていることは決して気持ちの良いことではないが、もうお互い麻痺していた。
??「すいませんそこの人。」
急な声に2人とも驚き、即座に声のする方を振り向いた。
見覚えのない男がいた。
その瞬間、私の顔に何かが飛んでくるのが見えた。
末尾「え?」
呼吸が出来ない。視界もぼやけて見える。
慌てて剥がそうにも剥がれない。触った感触は液体のようだ。
そんな苦しそうな末尾を見て、新緑は咄嗟に下に落ちていた小石を手に取り、能力を使って飛ばした。
石が小さく、目標物も少し遠めにいたため外れてしまう。
末尾「ハァハァ・・・」
顔に纏っていた水が落ちた。急に呼吸が出来なくなったのに驚き、少しパニックになりかけていた。
新緑「螢、大丈夫?」
すぐさま新緑が声をかけてくれたおかげで気を持ち直すことが出来た。
こんなやりとりをしている間に男は荷物から水を取り出す。
??「突然ですいません。こちらも無理に傷つけたくないので薬を渡してもらえるとありがたいのですが。」
急な降伏勧告を迫ってくる。
何を言っているのか理解ができなかった。
末尾「なn・・」
新緑「何言ってんの!!あんたなんかにやらないわよ!」
私の言葉を遮った新緑がその男に対して、叫ぶ。
末尾「菫・・」
いつになく怒っているように見えた。
??「なら…実力行使で行かせてもらいます。」
男は再度水を操り、こちらに飛んでくるのが見える。
避けようとしたが、足の痛みで急な動きに対応できなかった。
その時、新緑が私を抱えて地面に倒れこんだ。
新緑「大丈夫?螢?」
私と地面との接触を防いでくれた新緑の左腕の方が気になったが、今は触れる状況ではなかった。
??「え?」
男が慌て始める。それもそうだ、さっきまで目で見えた相手が視界から消えたのだから。
持っている水で攻撃を仕掛けてこなかった。
どうやら視認できないとだめらしい。
少し余裕も出てきて、微笑む。
持ち直した大鉈を男に向ける。この前会った室戸とかいう男のように不愉快感は感じなかった。
そして、その男に対し、突進した。
??「1時の方向から来るよ!!」
聞いたことのある声だった。どこでだっただろうか。
渚と呼ばれた男が大鉈を間一髪のところで避けるが、かすった感触はあった。
??「くっ・・」
男がよろけて距離を取り始める。
思い出した。あの声の主に。
以前一緒にいた神湊凛だ。
声の主の顔を思い浮かべると同時に能力がばれているのに気づく。
末尾「菫!さっきの声が聞こえたところに攻撃して!」
不思議そうな顔を浮かべていたが、私の表情で察してか、何も聞いてこなかった。
三輪車ぐらいの大きさの岩を新緑が能力で思い切り飛ばす。
けたたましい音とともに渚と呼ばれた男の顔が引きつる。
そして、見えていない私ではなく新緑に対して、持っている容器から水を出して攻撃しようとしていた。
男「え?」
新緑に向かっていた水が地面に吸い込まれていく。
男が新緑を目で捕捉できなかったからだろう。
私はこの男に対して能力を使い、私同様新緑も見えないようにした。
次は仕留めるつもりで大鉈を握り締め、男目掛けて再度走り出した。
男は手に持つ水を地面と水平に広げ始めた。
避けれず当たってしまったが、特に外傷はない。
このまま刃を当てれば勝てると思っていたが、またかすった感触しかなく避けられてしまった。しかし、先ほどとは違い、血が出ていた。
第2撃を与えようとしたが、既に少し離れたところに移動されてしまっていた。
神湊「渚君!逃げよう!!」
茂みから出てきた神湊ともう1人の女。
渚と呼ばれた男を強く促していた。
新緑「螢、逃がす必要ないよね?」
末尾「うん、頼むよ、菫。」
さっき茂みに投じた岩より大きい岩を3人に対して、ぶつけようとしていた。
神湊が出てきた茂みから更に人影が出てきた。
末尾「・・・」
見た瞬間に人ではないことが分かった。人が暴走した後の化け物だった。
その化け物は私たち2人に対して、襲いかかってきた。
新緑が照準を化け物に変更し、化け物に対して岩をものすごい速度でぶつけた。
化け物を倒してから神湊達が逃げた方向を確認したが、案の定その姿は見れなかった。
神湊凛。
私の能力も2日目に行ったことも知っている人物。
他にも仲間を作っていたし、私にとって一番厄介な相手だと考えていた。
逃げた3人を追う術もなかったが、再度会ったらどう戦うかを新緑と話しながら逃げた方向に歩みを進めた。
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