第14話

大きな音で目が覚めた。

近くではないようだ。続いて2発目。

この音で意識がはっきりとした。まだ薄暗い。

新緑も驚いた様子だ。3発目も聞こえる。これは何の音だろうか。爆発音?


2人で音のあるほうに行ってみることにした。音がするなら人がいるに違いない。

それぞれの思惑もありながら。


少し歩いてみる。

人影は見られないし、先ほどの音があったと思われる痕跡も見られない。

もう少し歩いてみることにした。


新緑「あそこに人が・・・」

倒れている人が見える。新緑が一足先に走り出す。その姿を見て私も走り出す。


新緑「大丈夫ですか?」

倒れている男に声をかけたが、気を失っているみたいだ。返事がない。

少し遅れて到着した私は周りに危険がないかどうか確認した。

末尾「周りは大丈夫そう、ね。」

新緑と一緒に男を草陰に移動させた。

この男の持っている荷物の中身をすぐにでも確認したかったが、新緑がいる以上難しかった。

必死な新緑の呼びかけに男の意識が戻った。


??「うっ・・やつらは・・」

新緑「大丈夫ですか?他には誰も居ませんでしたよ。」

??「本当か。なら・・・良かった。」

途端に男の意識が飛んだ。

ここで新緑と話し合って、男が持っている荷物の中身を確認してみることにした。

薬が3本と食料等が入っていた。


末尾「菫、後ろ!」

新緑が振り返ると、倒れていた男が新緑を襲おうとしていた。人の姿ではなく、以前見た化け物の姿だった。

咄嗟のことだったので、能力の加減が分からなかったのだろうか。男が一瞬にして潰れ、周りの地面が窪む。

もう人かどうかも分からなくなるぐらい跡形もない。


新緑「はぁ、はぁ・・・」

末尾「・・」

これで新緑も人を手にかけてしまった後悔を持つことになるだろうと、新緑に幻覚を見せた末尾は心の中で笑う。


末尾「ありがとう、菫。助かったよ、一瞬の出来事だったから・・」

新緑「私もびっくりしちゃって。螢が言ってくれなかったらどうなってたか・・・」

上がってた息が落ち着く。


末尾「この人には申し訳ないけど、薬と食べ物とかもらってこうか。」

新緑は何も言わず、ただ頷くだけだった。

薬の本数も確保したし、ひとまずは新緑を落ち着かせる。


新緑が落ち着いたところで、次に生存している人を探すことにした。

新緑「その前に何か食べません?」

さっきまでの表情と異なり、しっかりとした感を受ける。

末尾「そうしますか。」と、少し微笑んだ。


お腹が満たされたことで新緑の表情もより一層柔らかくなったように感じる。

末尾「さて、また他に元気な人が居るかもしれない。探しに行こう。」

新緑「はい!」と、無邪気な笑顔まで見せていた。



歩き始めようとして、ふと新緑が空を見る。

新緑「こんなに雲が・・・」

同じように上を見上げる。空一杯に濃い灰色の雲が広がっていた。

末尾「雨、降りそうだね。」

新緑「そうですね、雨宿りできそうなところ探しますか。」

音のあった方向に歩き始める。


頬が濡れたのを感じる。

少し降ってきたみたいだ。

何も言わずとも駆け足になる。


新緑「螢さん、ちょっといいですか。」

少し声を荒げた新緑に驚きつつも振り向く。

新緑「ちょっと試したいことが・・」

そう言って近くの大木を能力で抜き始めた。

岩が並んでる場所に大木を橋渡しし始める。1本、また一本と。

大木が屋根のようになった。ものの3分ぐらいだったろうか。


新緑「うまくできて良かったです。」とニッコリ笑ってみせた。

簡易的に雨宿りできる場所を作ってくれたみたいだ。

末尾「なら今日は少し早いけど、ここで休みますか。」

新緑「はい!」


談話しながら寝るまでの時間を楽しんだ。

そして、寝ようとしていた頃には雨足は強くなっていた。

まるで明日何か起きようとしているかのごとくに。

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