第12話

しっかりめに昼食を食べ、再び歩き始めた。

林の中を歩いていると拓けている道のような場所に出た。


どちらに進むか迷っていると、誰かが声をかけてきた。

??「あの~。」

気がつかなかった。不意に声をかけられ、驚いた様子で急いで声がした方向を振り返った。


新緑「は、初めまして。私、新緑菫と申します。」

そこには眼鏡をかけた私以上におとなしそうな子が立っていた。


末尾「えっと、私は末尾螢。」

安心し切った様子の新緑が堰を切ったように話し始める。


新緑「目覚めた時からずっと1人で、不安で不安で。なんか変なのにも襲われたし・・・初めて会ったのが末尾さんで。それでそれで。」

勢いに押されはしたが、落ち着かせるためにもこっちでリードを取る・


末尾「新緑さんの能力は何?それと今日までどうしてたの?」

少し落ち着いた様子になった新緑。

新緑「能力は重力を自由に操作できることで・・・今日まで島中を歩いていたんですけど、誰にも、いや人には会わなくて。」

アレには会ったのだろう。しかし、相対しても乗り切れているのか。

これは上手く利用できるかもしれないと、末尾は考えた。


末尾「なら一緒に行かない?」

新緑「いいんですか?」

薬も20本あるし、楽観視していた。


新緑「一緒に付いていけるのは嬉しいんだけど、それは・・・」

右手に視線を向ける。

忘れていた。急に声をかけられたから幻覚をかけていなかった。

私の右手にある大鉈をどう説明しようか。

末尾「こ、これは一緒にいた仲間が護身用にって・・・」

こんな説明で誤魔化せただろうか。

新緑「そうなんだ。その仲間は?」

あれ?意外と誤魔化せたかもしれない。

末尾「何か変なのに襲われて・・・」


新緑も思い出したのだろう。口をつぐんだ。


納得してくれたのかそこからこの件に関しては突っ込まれなかった。

新緑「末尾さんの能力聞いてもいい?」

末尾「私は幻覚を見せられるよ。例えばね・・・」

以前挨拶代わりに見せた分身を新緑にも見せる。


新緑「すごいです。なら私も能力見てもらおうかな。あの石見ててください。」

郵便ポストぐらいの大きさの石、いや岩を指差す。

新緑「っ・・」

ズンという低音が響き、地面に岩が吸い込まれていく。元の大きさの半分ぐらいが地面に埋まったところで岩が止まる。

新緑「どうですか?」

感想を聞かれる。


末尾「すごいね。これであの化け物を倒したの?」

新緑「はい。なりふり構わずでしたが。」

末尾「せっかく行動共にするんだし、螢でいいよ。こっちも菫でいい?」

新緑「分かりました。私も菫でいいですよ、螢さん。」

末尾「これからどうしたいか、何かある?」

新緑「いえ、誰かに会うのが目標でしたので。」

私の計画を話すわけにはいかない。


とりあえず、薬もあるので今日は明日以降のことを相談することで決着がついた。


少し歩いたとこにある小さな崖下で今夜は過ごすことにした。

新緑「これが最後の薬です・・・」

少し儚い感じで囁いた。


末尾「友達が襲われちゃってね、その時の残りというか、それがあるからしばらくは大丈夫。」と、自分の薬を投与してから4本の薬を見せた。

新緑「明後日までは大丈夫そうですね。」

余裕ができたことで安堵の表情が新緑の顔に浮かぶ。


早めの晩御飯を食べたところで、明日以降は薬と食料等の確保を行うことにした。

明確にはしなかったが、新緑は恐らく残っている荷物からとか考えているのだろう。

そこの部分にはきっと差異があるとは感じながらも目を瞑った。


辺りもすっかり暗くなったところで、そろそろ眠ることにした。

さっき会った人物に警戒をしながら・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る