第10話
目の前の2人が一瞬にして視界から消えてしまった。
何が起きたか理解できなかった。神湊は目の前で起こったことの整理がついていなかった。
目の前には下半身部分だけが残っている霊界堂と和倉であった存在があった。
神湊「え?」
ようやく声を発することができた。
周りを一望する。少し離れた場所に見覚えのある人物が見えた。
倉敷の首を落としたあと、霊界堂達がいた場所に目を向ける。
神湊凛の姿が見えた。その後すぐに神湊と目が合う。遠めだったが、お互いの姿は確認できる。神湊が少し近づいてきた。
私がいる場所の全体が見えるところまで来たところで、足が止まる。
それもそうだろう。大きな刃物を持った私のすぐ横には品川と倉敷が真っ赤に染まった姿で横たわっている。
神湊「何してるの?螢・・・」
末尾「見て分からない?」
神湊「・・・」
そんな神湊が厳しい表情になっていく過程に笑いが込み上げてくる。
心で思っていたことが顔に出てしまったようだ、神湊が更に厳しい表情になる。
神湊は反転し、猛スピードで逃げていった。
彼女の足には追いつかないのは明白だったが、末尾は特に危険視していなかった。
自分の能力があれば、いつでも神湊なら相手にできる自信からであった。
末尾「また会いましょう・・・」
不適な笑みを浮かべながら神湊の背中が小さくなっていくのを眺めていた。
神湊が見えなくなったところで、夕刻になろうとしていたのに気づいた。自分で薬を投与し、霊界堂と和倉の荷物から薬と少しの食料等を頂戴した。神湊の荷物も探ったのだが、薬は入っていなかった。ちゃっかりしている。おそらくポケットにでも入れてあるのであろう。
ここで末尾は元いた洞窟に戻っていた。
今後どうするかを考えながら歩いていた。
所持している薬は16本。
あと8日間。薬の量としては十二分にある。
末尾は今後のことについて考えながら、食事を取った。
そして、少し早かったが翌日以降のためにも睡眠を取り始めた。
3日目の朝が来た。
目を開けると、海面に反射する太陽が眩しい。
洞窟から出て、ノビをする。気持ちの良い朝だった。
今日はどう動こうか考えていると物音が聞こえた。
以前見た物体だった。その時はたしか長岡という人物だっただろうか。
それに似たものだ。私に気づいたソレはこちらに向かってくる。
昨日倉敷が作成した大刀、大鉈だろうか。それを持ってきていたので、握り締め、ソレを迎え撃とうとした。
幻覚は人以外にも効果があるのだろうか。心の余裕を持っていた私はソレに能力が効くかどうか試してみた。私の姿の分身が何人も見えるような幻覚を見せた。
ソレは急に現れた私の分身に驚いたような感じで立ち止まった。
どうやらソレにも効き目があるらしい。戸惑っている様子を見ながらソレの首を大鉈で切り落とす。
首を落とせば動きが止まるようだ。
生きている人間以外にも幻覚見せられるという新たな成果を得た。
ここから移動して他の人を見つけよう。
この大鉈を持っていると動きにくい上に、見つかりやすくなってしまう。
荷物の中には護身用ということで倉敷が作成してくれた簡易的なナイフが入っている。しかし、これだけでは物足りないと感じる。
少し考えたところで、非力な私が他の相手と戦えるのはこれしかないとの結論に至った。
他の人に出会ったら幻覚を見せればいいだろう。そう考えていた。
踏み込んだことのない場所を歩き続けて1時間ぐらいだろうか。
林の中に人がいるのが見えた。あいにく、こちらには気づいていない。
持っている大鉈を隠しながら、そして木々に当たって音が出ないように細心の注意を払った。
近づいてみると男女4人。
少し遊んでみるか。視界にいる人物それぞれに違う幻覚見せられることは分かっている。
村山「出水、何やってるの?」
出水「うるせぇな、今日で薬なくなるだろうが。俺は生き残りてぇんだよ。」
出水の変わりっぷりに村山は驚く。
村山の荷物を漁る出水を制止しようとした明石を勢いよく振り払う。見ていた糸魚川も焦る。
糸魚川「やめようよ・・・」
出水は他の2人の荷物も漁り始める。
村山も次は強めに制止をかける。
村山「おい、やめないと次は殴るぞ。」
強い制止にも出水は止まろうとしない。
怒った村山が殴りかかろうとする。
出水と村山が殴り合いの喧嘩を始める。見ていた明石と糸魚川が止めに入ろうとした時だった。
糸魚川「あれ?」
胸に激痛が走る。先ほどまで争っていた出水と村山は血を流して倒れているのが見える。
糸魚川はパニックになる。何が起こったのだろうか。この一瞬で。
もたれかかる明石が目に入った。
明石も制服が血で染まっていた。
視界が霞んできた。
そんなとこに誰かが視界に入ってきた。
末尾「なんだ、衝撃とかは見せられないみたいね。」
そんな不敵な笑みを含んだ末尾の顔が暗転していった。
末尾は4人の荷物から薬と昨日食べた分の食料等を調達した。
4人ぐらいが不意打ちの限界だと感じる。一撃で相手を仕留める能力ではないため、幻覚を見せている合間に倒せるのがこれくらいだと判断した。
末尾「灯が作ってくれた武器があって良かった。これがなかったら厳しかったかもな。」
末尾は次の獲物を狙うかのような目をしながら、歩みを進めた。
5日目になると、個人所有の薬の限界で化け物の数が一気に増えることを末尾は懸念していた。
末尾「まだ人の姿の方が倒しやすい。。」
そんな独り言を呟きながら、他の敵対者になる可能性のある者たちを探し始めた。
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