第8話

霊界堂と和倉と神湊は分かれた地点からあまり動いていなかった。

和倉「これからどうしますかね。」

霊界堂「神湊さんには申し訳ないけど、長岡がどうしてあんな風になってしまった原因を調べてみたいんだ。」

和倉「あの現場に戻ると?」

霊界堂は静かに頷き、神湊に視線を向けた。

神湊「分かりました。お2人に付いていくと決めましたし、従います。」

そんな神湊の真摯な眼差しが霊界堂の背中を押す。

そして昨晩の現場へと向かった。


霊界堂と和倉が長岡が寝ていた辺りを調べる。神湊は少し遠くでその様子を見ている。

しばらくして神湊の方へ戻る。特に成果はなさそうな顔を浮かべている。

そして、また分かれた場所の方へと歩き始める。霊界堂と和倉は地図を見ながら、どこに行くかの話し合いをしながら。神湊はその後ろで2人の会話に相槌を打ちながら。


和倉「そろそろ摂取した方がいいですかね?」と思い出したかのように話す。

霊界堂「そうだな。けど、長岡が発症したのは明け方だったよな?ならもしかすると時間を少しずらせたら、薬の量も減らせるかもしれない。」

和倉「賭け、ですね。」

神湊「それと、もう一ついいですか?」

あまり率先的に話さなかった神湊が口を開く。

神湊「薬のタイミングもそうですが、摂取量を減らすのはどうでしょう?」

和倉「具体的には?」

神湊「1本を2人で分けるとか、1日半分しか投与しないとか。」

3人は少し考える。


霊界堂「薬が空気に触れてしまうと、劣化してしまうかもしれない。衛生的にはあまり良くないけど、1本を2人で共有してみるのはいい考えかもしれない。」

和倉「そうですね。では霊界堂と私が共有しますかね。神湊さんは女性ですし。」

霊界堂「そうするか。ただ、発症してしまった際は・・・」と、神湊に視線を向ける。

神湊「それなら大丈夫です。こちら側に付いて来た時からある程度の覚悟はできています。」

そんな神湊の心強い発言に霊界堂と和倉は安堵を覚えた。


張り詰めた空気が少し緩んだ感じがした。

そんな中、遠くから物音が聞こえたような気がした。



品川と倉敷の背中がどんどん小さくなっていく。


品川と倉敷は分かれた場所に向かっていた。

品川はもっと急ぎたかったが、倉敷の速度に合わせる。

そんな道中、品川はどう戦うかを頭の中で巡らせていた。


品川「(相手の能力は・・・超回復と自由発火って言ってたな。見えないところから攻撃するしか・・)」

少し品川は難しい顔をしていたのだろうか。倉敷が心配そうに話しかけてきた。

倉敷「ひなた、どうするの?」

品川「うーん、今考えてて。」

倉敷「ちょっと私も考えたんだけど。私が何か作って、ひなたの力で相手にぶつけたりできないかな・・」

品川「投げるとコントロールが定まらないから・・・ならこうしてみないか。」


倉敷が伸縮性のある大きなゴムを生成し、品川が岩を発射する。パチンコのような理論でいけないだろうか。

この作戦を倉敷に伝えたところ、倉敷は同意した。


神湊達と別れた地点に近づくと、見覚えのある2人が立っていた。

探す手間が省けた安心感と同時に神湊へ凶刃を振るったあの男たちへの怒りが込み上げてきた。


すぐさま準備に取り掛かる。幸いなことに相手は何やら話し合いをしており、動く気配がない。相手側に見られないように細心の注意を払う。

比較的に大きな木の脇に倉敷が同じくらいの直径の金属柱を立てる。倉敷の物質創造が大きな音を伴わないことが助かった。

倉敷が作業している中、品川は投擲に使うものを考えていた。

洞窟の場所とは違いここは林、近くに大きな岩も見当たらない。また、倉敷の力を借りることし、どんな物を生成してもらおうか思案する。

倉敷から声がかかると、そこにはもう巨大なパチンコが出来ていた。

倉敷「ひなた、準備できたよ。」と小声で話しかける。

品川「ちょっと今から書くものを作って欲しいんだけど・・」

地面に品川が円錐上の絵を書き、これを金属か岩で作れないかと相談した。

倉敷「ちょっと試してみる。」

地面に手を当てて、少しすると箪笥程度の大きさの円錐型の物体が出てきた。よく見ると底面の部分に突起物が付いていた。

倉敷「持ちやすいほうがいいかなっと思って。」

投擲しやすいように彼女の優しさで追加してくれていた。


全ての準備が整った。彼らは依然何か話している。

品川が巨大パチンコの弦に弾を引っ掛ける。

品川がゆっくりと弾を持ちながら後ずさりし始める。こちらに気づかず、まだ立ち話をしている2人。

品川「よしっ。いくよ。」

私だけに聞こえる声で。そして、覚悟を決めた声で。


品川が手を離したぐらいだろうか、倉敷の目には驚いたものが見えた。彼らの近くに神湊がいるのが見えた。

倉敷「ひなたっ!」

そんな制止に近い声を発したがもう品川の手からは離れていた。


ものすごい速度で金属の塊が飛んでいくのが見えた。

ドン。

彼らに弾が当たった。

その瞬間に彼らが弾と一緒に飛んでいった。近くの木に金属球が当たり、血しぶきが飛ぶ。

たしか霊界堂は超回復が能力と言っていたが、おそらくこれでは生きていないだろう。


そんなあっという間に起きた出来事から少し間ができた。


倉敷「ひなた、凛がいたの見えなかったの?」

怒った様子で品川を睨む。

品川「え?」

倉敷「とぼけないで、ひなた。今凛がいたの見えてたでしょ?」

品川は倉敷が何を言ってるのか理解できていない。

品川「灯、ちょっと待って。私も手を離すときに見てたけど、あいつら以外いなかったよ。」

倉敷「何言ってんの?」

少し沈黙する。


品川が必死に考える。

見た光景に差異がある。これは幻覚?

青ざめた表情を品川が見せる。対照的に倉敷はボルテージが上がって、高揚している。


倉敷「いくらひなたでもあり得ない!」

誤解を解こうと品川も必死に反論しようとする。

倉敷「何?ひなた?私を・・」

品川「?」

倉敷「友達、いや親友だと思ってたのは私だけだったのね。」

品川「そんなことない・・・」

倉敷「嘘つき!今手に持ってるのは何?」

品川の理解が追いつかない。

品川「ほんと何言ってるの?」

倉敷「ひなたがそのつもりなら・・」

地面に手を着く、倉敷。

大型の刀?斧?

そう品川が思っていると、地面から出てきた刃物を倉敷が握り締め、品川に向かってきた。


品川「ひなた・・・」

胸部に痛みが走る。

倉敷「・・・」


品川が倒れこんだ。親友を殺してしまった、倉敷が膝をつく。

そんな様子を見て、私は倉敷に近づき品川に刺した刃物を抜き、倉敷の首をはねた。

末尾「バイバイ・・」

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