第6話

6人全員で彼らが昨晩泊まった、悲惨な事件の現場へと到着した。

倉敷「ぅ・・・」

彼女だけじゃない、そこにいた全員が息を飲んだ。

そんな状況でも彼女だけは前を向いていた。

品川「とりあえず手分けして荷物の確保をしよう。」

その言葉は心強い。みんなが言われた通りに5人分の荷物を回収し始めた。


荷物を回収し、少し離れたところで中身を確認する。

薬と食料を含め、なくなっているものはないみたいだ。

一段落したところで、全員に安堵感が芽生え始まる。


倉敷「そろそろ食事にしない?お腹空いちゃって。」

言われてみればその通りだ。早朝からの騒動もあって、昨晩から何も口にしていない。太陽も高く昇っていて、昼に近いことが分かる。

神湊「そうね。そろそろ休憩にしましょ。」


各自の食料をリュックサックから取り出し、食べ始める。

食事中は他愛ない雑談が飛び交う。緊張の糸がほどけ始めている。

食事が終わると、霊界堂と和倉のあくびが頻発している。昨日はそこまで眠れなかったし、色々あったから疲れているのだろう。

それを察してか、品川が提案をし始める。

品川「私も今朝早かったし、少し休憩を兼ねて仮眠を取らないか?」

倉敷「あ、いいかも。」と賛同する。

それに続いて他の人も賛同する。

全員が賛同したことで、再び品川が話し始める。

品川「なら仮眠を取ろう。時間は・・・」

霊界堂が口を挟む。

霊界堂「荷物に入っていたコンパスを使えば少しは時間分かるかも。」と言い出し。簡易的な日時計を作成する。その作業に和倉も加わる。

品川「なら1,2時間ぐらい休憩取ろう。それでいいよね?」

みんな頷く。

それぞれが円になるような形でしばしの休息を取り始めた。

そんな私も睡魔に襲われていった・・・



霊界堂「そろそろ休憩もおしまいにしようか。」と、今起きたような眠たそうな声を出す。

その声に全員が目を覚ます。

少し眠っただけだが、身体がさっきより軽く感じる。よっぽど疲弊していたのだろう。


品川「さて、これからどうしようか。」

起きたばかりで冴えない頭を切り替えさせる。

霊界堂「他にも俺たちみたいなグループがいるかもしれない。探してみないか?」

倉敷「私もそれに賛成!」

品川「・・・」

神湊「・・・」

品川と神湊は沈黙している。彼女たちは思っているのだろう、これ以上生き残りを見つけたとしても薬の数的に全員が助からないことを。

和倉「これ以上人数を増やしても全員助からないですね。」

霊界堂が唇を噛む。倉敷も「あっ・・」という表情に変わる。

霊界堂「いや、そうかもしれないが同じ思いをしている人がいるなら・・・」

言葉がつながらない。説得する手段がみつからないんだろう。


品川「ならここで分かれるか?他に仲間を見つけるか、違う解決策を見出すメンバーとで。」

和倉「まぁ仕方ないですかね。」

霊界堂「・・・」

品川「私は違う解決策を見つけたい。灯と凛、螢はどうする?」

神湊「・・私も他に戦ってる人がいるなら探して一緒に解決していきたい。」

倉敷「私はひなたと一緒に行くよ。」

倉敷ならぬ落ち着いたトーンで話した。

末尾「私もひなたと灯と一緒に行くよ。」

まだ意思を表示してない男が口を開く。

和倉「霊界堂と一緒に行きますよ。一番最初に会ったのも何かの縁ですしね。」


これで半々に分かれることが決まった。

霊界堂「ならあの3人の荷物は半分にして分けるってことでいい?」

横目で和倉を見る。その和倉も頷く。

一つにまとめた荷物を霊界堂が手元に手繰り寄せる。

霊界堂「あれ?」

和倉「どうしたんです?」

霊界堂「いや、薬が見当たらないんだ・・・」

慌てて霊界堂がリュックサックをひっくり返す。

たしかに見当たらない。地面に散らばったのは3人分の食料とコンパスとメモだけだった。

品川「薬は・・?」

その場の雰囲気がガラッと変わった。

霊界堂「たしかにここにまとめたよね?」

和倉「ええ。みなさんの前でやってましたし、見ていたと思いますよ。」

各自頷く。

その通りだ。特に確認しながらやっていたわけではないが、全員の目の前で荷物をまとめていた。

疑心暗鬼が広がる様がみんなの表情を見れば手に取るように分かる。

品川「お互いのためにも一度リュックの中身を順番に見せ合いしない?」

その提案を快諾する。それでこの雰囲気が晴れてくれるというのなら。


まずは霊界堂の荷物を確認する。一切増えていない。

次に和倉。こちらも1人分。

それから品川、倉敷、神湊、そして最後に私。

全員所持品が多くなっているわけでもなく、リュックへの細工も見当たらなかった。


誰かが持っているかもしれないとお互いがお互いに対して疑惑を抱く気持ちが強まっていく。


霊界堂「こんなこと言ったら疑われるのは承知だけど・・」

先ほどよりも重たい雰囲気を纏わせながら話し始める。

霊界堂「なくなったものは仕方がない。お互いの荷物を確認もしたし。この件はなかったことにしてそれぞれで行動しない?本来持っていた薬はあるわけだし・・」

品川「確かにこれ以上話しても埒が明かないし、私は賛成。お互い遺恨は残りかねないけど。」

確かにこれ以上話し合っても無駄なのは誰の目にも明らかだ。

和倉「そうですね、私は霊界堂さんの意見に賛成しますよ。」

私含めた3人もしぶしぶ納得する。

品川「じゃあここからは別行動で。また、10日目に会えることを楽しみにしてる。」

そんな品川の一言が終わると別れ際に特に何も言わず、2つのグループに散会した。



散会したあと、品川を先頭に特に会話もなく元いた洞窟へと戻っていた。

あの場所を拠点にしようと品川の案だ。


洞窟に着いてから今後どうするか話し合いが行われた。

品川が仕切るが、倉敷も私も特になにもなく時間だけが過ぎていた。

そして品川が薬を投与しようかと提案してきた時だった。


??「あっ・・・・」

散会したはずの神湊が血まみれで入り口に倒れていた。

品川「どうした?」

倉敷「螢ちゃん、大丈夫?」

慌てて駆け寄った2人に私も続く。

神湊「さっき分かれた2人に急にやられて・・・」

そう言うと、気を失ってしまった。神湊の様子を見ると、荷物も持っていない状態だった。


品川「やっぱり薬をくすねたのはあの2人か。」

いらだった様子を見せていた。

倉敷「どうする?ひなた。」

品川が少し考える。

品川「どうしてもあの2人が許せない。私1人で凛の仇を取る。2人はここで待ってて。」

こぶしを握り締めながら強い語気で言い放った。

倉敷「ひなた1人で行かせたくない。行くんなら私も行く!」

普段見せない覚悟を決めた表情をしながら、言い放つ。

そんな倉敷の意思表示に対し、品川が少し考える。

品川「分かった。2人であの裏切り者を成敗しに行こう。螢はここで待ってて。」

品川の圧に頷くしかできなかった。

その動作を見るや否や品川と倉敷の2人は洞窟から走り出していった。

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