第4話
「あああああぁぁぁぁーーーー」
末尾「ん?何?何の音?」
倉敷「え?え?」
品川「何だ。」
神湊「ど、どうしたの?」
どうも神湊は朝が弱いらしい。それも仕方がない。はっきりとは分からないが、まだ空は薄暗い。
品川「ちょっと外見てくるから、みんなはここにいて。」
制止する間もなく、品川が飛び出す。こういった男勝りな性格が助かる。
倉敷「ひなた・・・」
神湊「ひなたが心配だね。ちょっと私たちも様子見ようか。」
ようやく目が覚めた様子だ。
3人で浅い洞窟から恐る恐る顔を出してみる。
品川の姿は少し遠いところで確認できる。その事実に倉敷は少し安堵した表情を浮かべている。
品川「人影が見えるぞー!!」
そんな品川の発言に3人で品川のところに近寄る。
私からも人影が確認できるようになってきた。
品川「あれ?さっきより近づいてるな・・・」
全員でその人影を注視していると、走っているようにも見えず、歩いているようにも見えない。あんな移動の仕方を人はするのだろうかと思わせるぐらいな動きだ。
神湊「何かうなってない?」
段々と近づいてくる姿と聞こえてくる呻き声に恐怖を覚え始める。
倉敷「誰か後ろから走ってくる・・・」
そんな不可思議な動きの人影の後方から新たに2つの人影が見えてくる。この2人は見覚えのある走り方でこちらに来ている。いや、あの不可思議な物体を追っているのか。
向こうもこちらに気づいたみたいだ。
??「ぃg・・・」
遠くてあまりはっきり聞こえない。
その間にも不可思議な物体は近づいてくる。
品川「ちょっとみんな下がってて。」
迎え撃とうと臨戦態勢を取る品川。その背中が頼もしい。
品川が近くにあるボーリング球ぐらいの大きさの岩を手に取り、不可思議な物体目掛けて思いっきり投げる。
顔の端に掠めた。不可思議な物体がよろめき、少しこちらへ来る速度が鈍る。
立て続けに品川が投げた岩のうちのいくつかが不可思議な物体に当たる。
その間に後方から追っていた2人の背が高いほうがものすごいスピードで駆け寄り、蹴りを入れる。不可思議な物体はその場に倒れこむ。
助かったとういう気持ちもあったが、それにしてもあの長身の男、走るスピードが異様に速い。何かの能力なのだろうか。
蹴りを入れてくれたおかげでもう1人の男が追いつく。
息つく間もなく、不可思議な物体に手をかざした。
瞬間だった。不可思議な物体から火が出た。
倉敷「え?」
神湊「どういうこと?」
火を放ち、不可思議な物体が完全に動くなってから品川がゆっくりと2人に近づく。
品川「あんたたちは何者だ。それとこれは・・」
視線の先には先ほどまで不可思議な動きをしていた物体が黒焦げになっていた。
遅れて私たちも話に加わる。
長身の男が話し始める。
霊界堂「私は霊界堂煉。ここでは能力も言ったほうがいいのかな?能力は超回復。で、こっちは・・・」
和倉「自分は和倉。能力は自由発火・・です。」
お互いの軽めの自己紹介が終わる。
品川が自己紹介が終わるや否や質問を行う。
品川「この黒焦げになっている物体は何?」
霊界堂と和倉がお互い視線を合わせる。
そして、少し間が空き、重そうな口で霊界堂が話し始める。
霊界堂「実は・・・・」
昨日目が覚めてからのこと、私たちのように共に動いていた人が和倉以外にいたこと、昨晩薬を打たなかった人が今朝急変して襲ってきたこと、説得しようにも手がつけられずに仲間を失ったこと、先ほど燃やした物体も元は人であったことを話してくれた。
和倉は霊界堂が話している最中にうなずいているだけだった。
話を聞いた私たちはどういった反応もできなかったが、その沈黙を嫌うように品川が話し始めた。
品川「他に仲間は?」
沈黙を破った一言だったが、霊界堂も和倉も悲哀の顔色を浮かべた。
品川「・・分かった。」
さらに暗い雰囲気が漂い始めるとともに、空はすっかり明るくなっていた。
倉敷「2人は昨日どこにいたの?」
そんな倉敷の気配りを察してか、全員が悲壮感を拭った。
霊界堂「昨日はたまたま会った5人と林の中でこの状況について、話してたよ。」
霊界堂は少し馴れ馴れしい感じを受ける。
和倉「最初に会ったのが霊界堂でしたね。そして、大曲と川内、長岡がいましたね。」
和倉の言い回しはわざとなのだろうか。素なのだろうか。
和倉「みんなで10日間生き延びる術を考えようと話していたんですね。そしたら長岡が薬も数が限られているから、投与しないで翌日を迎えたらどうなるか試してみないかって・・」
霊界堂「それで話し合った結果、長岡が自分が言ったことは責任持つって言ってくれて、ね。」
そこからの顛末を霊界堂と和倉が交互に、なるべく私たちに不安感を与えないようにゆっくりと言葉を選んでる姿が印象的だった。その話によると、
今朝寝ていたら、叫び声で目が覚め、音がした方を見ると大曲が襲われているのが見えた。それに対して、驚いて周りを確認すると同じ状況で驚いているのは3人だった。それが霊界堂と和倉、そして川内だった。寝ているはずの長岡の姿が見えないと思ったが、襲われている大曲を3人で助けに行ったが、引き剥がすので精一杯だった。霊界堂が大曲の処置をし、和倉と川内はその襲ってきた物と対峙していた。川内が襲ってきた物の服装と長岡の服装が同じなのに気づき、その場で叫んで霊界堂と和倉に伝えた。その声に驚いた元・長岡が川内を襲い始め、和倉も対抗しようとしたが、手に負えず、大曲の処置をしていた霊界堂も加わったが、あまりの力の差に太刀打ちできなかった。
目の前でやられていく大曲が最後の言葉を発し、こいつ諸共燃やしてくれと頼んだ。しかし、そんなこと言ってもいきなり燃やすことはできず、霊界堂と和倉は何も手出しできずに大曲が死んでいくのを見ているしか出来なかった。大曲から離れた元・長岡であった物体はこちらを見ていた。次は和倉に襲い掛かってきたが、能力で火を出した。その火を見た化け物は逃げていった。ここで逃がしたら次にやられると思った霊界堂と和倉はこの化け物を処分しようと追いかけていった。
大体こんな事実だったと思う。
霊界堂と和倉は話し始めより、ものすごいやつれたような気がする。
普段ならそんなこと信じられないが、能力を与えられ、あんな化け物を見た私たちはすんなり飲み込めた。
急に品川が話し始めた。
品川「昨日一緒にいた3人の荷物はどうしたんだ?」
霊界堂と和倉も今のままこの現状を悩んでいるだけではダメだと心の声が聞こえるぐらいに表情から悲壮感が消えた。
和倉「急だったからまだそのままですね。」
品川「彼らには悪いが、薬と食料を分けてもらわないか?」
なるべく琴線に触れないように気遣っている品川をその場全員が感じた。
霊界堂「そうだね、自分たちの荷物すら置きっぱなしだし取りに戻るか。」
和倉「では2人で行きますかね、霊界堂。」
今朝起こった悲惨な現場に私たちを連れて行きたくなかったのだろう。そんな和倉の思いも遮る。
品川「どんなことが起きたかこの目で見ておきたい。おそらく逃げてばかりじゃいられなくだろ?これから。」
霊界堂と和倉は品川の言葉に反論できずに全員で彼らの荷物が置いてある場所へ向かった。
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