どこかとだれかたち


薄暗闇の中、静かに、さざめきが広がる。


「もうすぐだよ。」


誰かが笑いながら、

呟いた。


「いえ、まだです。」


別の声が、

小さく響く。


「どうだっていいでしょう!!」


硝子ガラスを引き裂くような声で、

誰かが怒鳴どなった。


つらいんだよう、悲しいよう。」


なまりを飲み込んだ重たい声で、

すすり泣く音がしずんでいく。


「ああ、痛い!ああ痛い!いタいよう!!」


誰かがゲラゲラと笑い叫ぶと、

次々と賛同さんどうの声が上がり、

笑い声が辺りに波のように押しせた。



うふふ、くすくす、ひひひ、げらげら・・。



「うるさい、黙れ。」


笑みをふくんだ声が楽しそうに言うと、

ピタリと笑い叫ぶ声は全て消え、

辺りにはおびえたヒソヒソ声が残される。


「もう、わかっているから、大丈夫。


もうすぐで、


まだまだで、


どうだってよくて、


つらくて悲しくて、

痛いんだ。


なぁ、そうだろう?ボク。」


笑いながらう声に、

楽しそうに小さな呟きが返る。


「はい、そうなんです。私。」


「そうよ!そうなのよ!アタシ!」


金切かなきり声が叫びをあげ、

グスグスと鼻を鳴らす音と共に声がしずむ。


「そう、そうなんだよ!

本当に、そうなんだ、オイラ。」


「そう、そうよ!そうサ!そうだトモ!」


笑い声の大合唱が再びこの場を満たし、



あはははは!



と、一際ひときわ大きく明るい声が響いた瞬間、

全ての音がピタリとんだ。



そして。



何もかもが薄暗闇の中へと、

余韻よいんも残す事無く消える。



・・そう、全てはもうすぐなのだ。

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