どこかのだれか
遠くで何かが、
それは、
ぼんやりとした頭のまま、
その音に黙って耳を澄ませていた。
雨は
静かにこの身に降り注ぐ。
自覚の無い涙が
どこかのヒューズが
突然、
頭と体が感覚を取り戻した。
「・・。」
力無く
ぼやけた意識と視界のままで、
自然に目に映る物を見る。
見えたのは、
たっぷりと
それを
・・少しして、
見ている物がベッドの
やっと気が付いた。
どうやら自分は、
古い
眠っていたらしい。
ゆっくりとした動作で重い体を起こすと、
「ここは・・?」
思わず発した声は
自分自身の
静かに
見回して
3つ。
ここは広い洋室で、
ベッドの他に本
それにドレッサーが置いてあるという事。
この部屋に配置された家具は全て、
とても美しい細工が
貴族の持ち物の
・・それに、
ベッドと同じくどれもが
だった。
「何、ここ・・。」
大きな窓も一応あるにはあるが、
木製の雨戸と
外の空気や光は
部屋の電気も
『この場所は
と言われても、
現在、
外から入ってくる情報は雨の音だけだが、
それが静かに部屋の中に忍び込んでいる事で、
辺りが優しい空気で満たされている気がする。
(ああ、起きる前に聞こえていたのは、
本当に雨だったんだ。)
頭の
両足をゆっくりとした動作で動かし、
そのまま
寝ていたベッドから降りた。
足元の
やはり
そのまま部屋の中央まで歩き、
ぐるりと再び見渡しても、
他に
何も無い。
無い、のだが。
・・ごく自然な動作で、
引き寄せられる
そのまま本の背に書かれている
目と指先で追ってしまった。
「・・?」
自分は、
一体何をしているのかと正気に戻った時。
「・・あれ?」
ふと、
視線の先にあった一冊の本が気になり、
思わずその
「これだけ、
汚れた茶色いその本を、
ぎっしり
手に取って
内容は
「-ーの、友達?」
タイトルは多少
取り
目についた所を読んでみる事にする。
「○月✖日ゆーちゃん。
□月△日いっくん。
△月○日くーちゃん・・。」
友達になったらしい日と、
その友達になった子のあだ名が
茶色い字でたくさん書かれていて、
少し温かい気持ちになった。
この〔リスト〕の持ち主には友達がたくさんいて、
それぞれの子と友達になった記念に、
その日付とあだ名を書いていたのだろう。
一番最後には、
自分の名前と似たあだ名が赤い字で書かれていて、
思わず小さく笑みが
もしかしたら、
親友なのかもしれない。
これを失くしては持ち主が困るだろうと、
元の場所に本を戻そうとした時、
だった。
本のどこかのページの間から、
折りたたまれた紙が静かに舞い落ち、
足元にひらりと着地する。
「あ、いけない。」
落ちた紙を
元通りに本に
「・・?」
紙に印刷されている文字が目に入り、
それが気になって手を止めてしまった。
「何か、書いてある?」
ほんの少し日焼けしたその紙には
『----ーーー死亡者。』
と書かれている。
「え・・?」
そこには、
・・そして、
死亡したと思われる日付が書かれていた。
紙の
所々が
苗字と住所は読めない。
だが、
日付と名前の部分だけ、
なんとか内容を確認する事ができた。
「○月✖日ユウコさん。
□月△日イツキさん。
△月○日クミさん。
・・!」
書かれていたあだ名と日付を、
紙に載っている名前と死亡した日付と
すると。
「全部、同じ・・。
○月✖日ゆーちゃんは、ユウコさん。
□月△日いっくんは、イツキさん。
この、友達って・・!!」
震える指でリストと紙を
本から感じとった。
どの文字も、
女性らしい細い文字だったり、
男性らしい太字だったり。
丸文字もあれば、
寒気が体を走り、
本を
今度は、
自分の周りをねっとりとした、
気が付く。
「この
少々
気になったその
なるべく
発生源を探ってみた。
すると、
それは自分の手元・・この不気味な本から、
「・・もしかして、この、本?」
手元の本のページを
その
体中にそのまま
その事を気にしつつも、
そのままページを
「ここ、だ。」
最後のページに辿り着くと、
その
そう。
自分の名と似た、
赤い文字のあだ名が書かれていた、
あのページ。
頭の
自身の
聞こえる気がする。
・・だが、
それよりも
冷静な本能の
そのまま
「・・?」
よく調べてみた結果。
それは本自体や紙からではなく、
文字のインクから
その正体を
文字本体を人差し指で
すると、
まだインクが
指にべたりとこびり付く。
「この
頭で解答が
書かれていた文字からつぅっと、
赤いインクが涙の
頭に答えが浮かんで理解した瞬間と、
本を投げ捨てたのは、ほぼ同時だった。
「・・。」
指が、震える。
全身が気が遠くなるほど寒いのに、
頭だけは別な物の
その、
気味の悪い温度差に
部屋の中に響く静かな雨の音。
そこに、
自分の早い
大音量の
今、
頭と本能を
ただ一つだった。
「こ、ここから早く、逃げないと・・!」
震える声で目的を確認するように呟き、
落ち着く
そこで、指が固い物に
自身に残されていた一つの光を思い出した。
「・・スマホ!」
スカートのポケットから薄いスマホを取り出し、
急いで開く。
画面の明かりはまるで希望の
ぼんやりと自身の顔と辺りを照らし出した。
その事に、
ホッとしたのは一瞬だけで。
・・その小さな
現実に
「・・圏、外・・。」
そのまま
この部屋の闇と
この身を
(・・負けちゃダメだ!)
気合を入れる
小さく手で自身の
気合を入れ
負の感情から来た物かは
そのまま両目に涙を
ポケットに
静かにこの部屋のドアへと向かった。
「・・入って来れたんだから、
同じ所から出ればいいんだ。
大丈夫、早く行こう。それに」
(この部屋には、もう居たくない。)
口には出さずに心だけで呟いて、
そっとドアから顔を出し、辺りを確認する。
そこには長い廊下が続き、
無数の窓が
・・どの窓も、
部屋と同じく全て
丈夫な木製の雨戸で
それに、
見るだけで
灰色の
所々に掛かっている
「・・。」
部屋と同じ
それでも
(あの、
と自身に言い聞かせ、
廊下へ出ると静かにドアを閉めた。
パタンと閉じる軽い音が廊下に響いた時、
なんとなく
(自分は、日常に戻る事は無いのだろう。)
と、悪夢の中で目覚めた現実を、
自身の冷静な頭が
・・雨の音が、強くなった、気がした。
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