第25話


あの日から数日経った今日、俺は出会いを求めて合コンなるものに参加していた。


場所はカラオケボックス。参加者は全員ゲイの男で、俺合わせてタチネコ7人ずつの大人数?だ。バーで知り合った子が連れてきてくれたのだが、みんなとてもチャラチャラしていて俺一人その場から浮いていた。俺のように恋人を探しに来ている人も数人いるにはいるが、全員がネコだと言うのだ。

…ううむ、ここでタチにジョブチェンジも悪くはないか?と一瞬考えてみたものの、後ろを弄らないとイけない体にされた俺にはちと厳しいかな。


「なあ、俺もう帰っていい?この人たちテンション高くて付いてけない…」

「はあ?これからがいいところでしょ!ていうか、君が居なくなったらネコが1人減るんですけど!」

「え?」


ネコが1人減る?どういう事だ。まさか…。


「このあとゲイOKのホテル行って、夜の運動しなきゃいけないのに!」


嫌な予感的中。

こんな大勢でセックスとか冗談じゃないし、そもそも抱かれたい人がいない。みんなチャラチャラしすぎで俺のタイプから大きく外れている。無理。

人は内面だとか言うけれど、やはり最初は外面を見るだろう。


「いや俺、そういうの困るんだけど…!てか、彼氏探しに来てる人もいただろ、その人達は!?」

「だから~、ヤッてみて相性良い人にアタックするんでしょ」


爛れている!数人しか経験のない俺の許容範囲を軽々しく超えてきた。一刻も早く帰らねばならない。


「俺がいなくても、君が2人相手にすればいいんじゃない?そしたら2倍気持ちいいし」


こんな口車には乗ってくれないかと冷や汗を垂らしたが、いとも簡単に「…それもそうかも…」と納得してくれたのでひとまずホッとする。


他の人が何か言ってくるかもしれないと思ったが、みんな俺みたいにノリの悪い奴は居ても居なくてもどちらでもいいらしく、すんなりと帰してくれた。




ネオンが光る大通りを1人歩きながら、今回も駄目だったかと密かに落ち込む。


「あー、みんなどうやって恋人探してんの…」


ノーマルはいいよな。出会いがそこら中にごろごろ転がってる。友情が恋愛に発展するなんてザラだし、ナンパが成功してなんて事もある。

俺らみたいなマイノリティは世間からこそこそ隠れながら相手を探さなくちゃならない。好きになった相手がたまたま男もイケるなんて、そんな奇跡が起きる確率は限りなくゼロに近い。だから最初から同じ嗜好の人を探すのだ。


「出会い系とかに手ぇ出してみるか…?」


…いや、なんか詐欺とかにあいそうで怖いし、未知なものに手を出すのはやめよう。

早くあいつの事を忘れたくてだいぶヤケになってたみたいだ。そもそも恋はしようと思ってするものじゃないよな…。


明日からバーに行きまくるつもりだったが、そんなに焦る必要はないかと思い直し、控える事にした。




*******




今日は大学の友人と映画館に来ていた。

映画なんていう気分ではなかったが、どうしても観たいと言うので渋々付き合ってやったのだ。


「え、これ?今話題になってるやつじゃん。俺じゃなくても観たいって言うやついっぱい居そうだけど」

「えー、俺はお前と観たかったの」

「…な、なんだそれ」


お前、ゲイにそういう事言うと全てそっちの意味で受け取るぞ。こいつは少し前まで普通に彼女がいたどノーマルだし、そんな訳がないとわかっているのにドキドキしてしまう。そんな自分が恨めしい。今愛情に飢えてるんだから、そういうの本当やめろ。


「映画は静かに観たい派なんだよー。他の奴らまじうっせーの!その点お前は普段からあんま喋んねーし、適任だよな!」

「…ああそうですか…」


まあね、わかってましたけどね。


遠い目をしながらポップコーンを買いにいった友人を見つめていると、急に後ろからとんとんと肩を叩かれた。


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